二日が過ぎた。光奈子からの連絡は、依然として途絶えたままだ。夏希が何度かオフィスを訪ねてきたが、適当な理由をつけて追い返した。千隼は以前にも増して寡黙になり、その身に纏う空気が重すぎて、他の所員さえ近寄れないほどだった。膨大なデータ解析と実験に没頭し、思考を麻痺させようと試みた。だが、ふとした意識の隙間に、制御不能な焦燥感が入り込んでくる。限界に達しようとした時、視線がデスクの隅にある卓上カレンダーを掠めた。明日。赤い丸で囲まれたその日付が、網膜に焼き付く。結婚式の日。そうだ。明日は本来、光奈子との結婚式だ。この日を決めた時、特別な感慨など皆無だった。ただ事務的な手順に従い、空いている日を選んだに過ぎない。時間を空け、招待客の相手をしなければならないことが、億劫でさえあった。結婚式を挙げれば、あの拉致事件の負い目をいくらか償えるかもしれない。その程度の認識しかなかった。法的な関係が増えるだけで、生活は何ら変わらないはずだったのだ。だが今……その赤い丸が視界に入った瞬間、千隼の思考が不自然に凍りついた。明日。明日になれば、光奈子に会えるかもしれない。彼女はウェディングドレスを纏い、バージンロードを彼の方へ歩いてくる。その姿は、手に取るように思い浮かんだ。きっと緊張と期待で目を潤ませ、彼だけを見つめているはずだ。脳裏に浮かんだその光景に、胸の奥が妙にざわついた。そこには……自分でも気づいていなかった、縋るような期待さえ混じっていた。かつては「荷物」であり「罪滅ぼし」でしかなかった儀式が、今では光奈子を取り戻すための唯一にして確実な「命綱」になっていた。千隼は突き動かされるようにスマホを掴み、発信履歴の一番上にある名前をタップした。「おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか……」素っ気ないアナウンス。彼は通話を切り、スマホを握りしめる指が白くなるほど力を込めた。明日だ。明日まで待てば、式場に光奈子は必ず現れる。あれほど必死に、十年もかけてようやく自分の隣まで辿り着いたんだ。ゴールインを目の前にして、全てを投げ出すはずがない。光奈子は絶対に来る。その時、何と言えばいい?詫びるか?言い訳をするか?それとも……以前のように、少し態度を和らげてやれば、彼
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