陽咲はそう言った。雅也は頷いた。「ちょうど今日の午後は暇だったんだ。俺も一緒に行くよ。また悠里がお前に濡れ衣を着せないようにな」陽咲は微笑み、断らなかった。午後2時半、雅也は時間通りにマンションの前に到着した。3人は車に乗り込む。白檀荘に着くと、悠里はすでにそこへ引っ越してきており、なんと陽咲が使っていたゲストルームのすぐ隣の部屋に滞在していた。3人が中へ入ると、悠里はソファでテレビを見ながら、時折愛おしそうにお腹を撫でていた。怜央は書斎で執務中だった。雅也は悠里のその様子を見て、冷たく鼻で笑った。雅也は2階へ上がると、部屋の外に立ち、陽咲から貴重品の入った荷物を受け取るために待機していた。陽咲は幸子と麻衣を部屋に呼んだ。陽咲は自分の身分証や衣類を少し整理しただけで、残りの化粧品類には一切手を付けなかった。「山田さん、熊谷さん。この未使用の化粧品は2人に譲るわ。フリマアプリで売ってもいいし、少しはお金になるはずよ。私が使ったものは全部捨ててちょうだい。クローゼットにある服も、一度でも着たものは処分して、まだ新品のままのものは2人が持って帰っていいわ」陽咲はそう指示した。幸子は目に涙を浮かべて陽咲を見つめた。名残惜しさは尽きなかったが、それを引き止める言葉として口にすることはなかった。陽咲がずっと離婚したがっていたのを知っていたからだ。彼女は心から陽咲の門出を喜んでいた。傍らにいた麻衣も、寂しさを滲ませた眼差しで陽咲を見つめていた。何しろ、陽咲は彼女の母親の命の恩人でもあるのだ。陽咲はスマートフォンを取り出し、2人にそれぞれ400万円を振り込んだ。「この間、私の世話をしてくれて本当にありがとう。私が出て行った後は、悠里の世話をしっかりしてあげてね。今は仕事を見つけるのも、お金を稼ぐのも大変なご時世だから」彼女はさらに浩二にも200万円を振り込み、【この間はお疲れ様】とメッセージを添えた。その後、スマホの画面を消し、3ヶ月近く暮らした部屋をもう一度見渡してから、絃葉と共に階下へ降りた。雅也もその後に続く。外へ出る時、陽咲は志保も一緒に呼び寄せた。志保は蒼空の部下であり、陽咲を護衛するために彼がわざわざ派遣してくれた人物だ。今や怜央と離婚する以上、志保がこのまま白檀荘に
Read more