雅也は悔しさに奥歯を噛み締め、ふんと鼻を鳴らした。しかし、絃葉の方へ向き直るや否や、まるで別人のようにすっと表情を和らげた。「絃葉、それじゃあ俺は行くね」絃葉はこっくりと頷いた。ドアが閉まると、陽咲と絃葉は買ってきた陶器の小さな置物を片付け始めた。……雅也は車で会社へ戻る道中、何度も助手席のギフトボックスに視線を走らせていた。ようやく会社に着き、エレベーターでオフィスへ上がると、椅子に腰を下ろし、まるでお宝でも扱うかのように慎重に包みを解いた。中から現れたのは、本物そっくりに作られた陶器の薔薇だった。雅也は驚き、そして顔を輝かせた。――俺が花好きなこと、それなのに花粉症であることを、絃葉はどうやって知ったのだろうか?雅也は瞳に甘い笑みを浮かべ、スマートフォンを手に取って写真を一枚撮り、絃葉へ送信した。【絃葉、プレゼントすごく気に入ったよ。薔薇も君も、どっちも大好きだ】メッセージを受け取った絃葉は、パッと花が咲いたように顔をほころばせた。……時間はあっという間に過ぎ去り、気づけば月曜日――記者会見の当日となっていた。陽咲はナチュラルメイクを施し、いっそう優雅で柔和な雰囲気を纏っていた。背筋をぴんと伸ばして壇上に座るその姿に、物怖じする様子は微塵もない。隣には栞奈が座っていた。「はい。私が先日騒動になった『望月家令嬢事件』の当事者です」陽咲は穏やかな声で答えた。ある記者が質問を投げかけた。「あなたが望月家の本当のお嬢様だという噂ですが、なぜ偽のお嬢様があなたに対してあそこまで横暴に振る舞うのを許していたのですか?」陽咲はふっと微笑み、カメラを真っ直ぐに見据えた。記者の質問には直接答えず、こう告げた。「私が望月家の実の娘であることは事実ですが、少し前に望月家とはすでに縁を切っています。今はもう何の関係もありません。ですので、ネットの皆さんも私を巻き込まないでくださいね」彼女はちゃめっ気たっぷりにウインクしてみせた。記者はその美しさに一瞬目を奪われたが、我に返るとすぐさま追及した。「その理由をお聞かせ願えますか?」それを聞いた栞奈は眉をひそめ、心配そうに陽咲をちらりと見た。このデリケートな話題から助け船を出して話を逸らそうとした、その時だった。陽咲が彼女へ「安心して」と視線で合図
Read more