「それと、マンションはもう売ったわ。売却金の半分は、すでにあなたの口座に振り込んである。両社間の取引についても、こちらから時期を見て整理させるつもりよ」咲夜は、この件でもう晴南と揉めたくなかった。だからこそ、すべてを一度に言い切った。咲夜の言葉を聞き終えた晴南の顔には、より一層濃い怒気が滲む。彼はこれまで、一度たりとも咲夜とここまで決裂する未来など想像したことがなかった。最初から晴南は、自分なら咲夜という女を完全に掌握できると思い込んでいたのだ。だが目を覚ました咲夜は、驚くほど冷静で、そして決断が早かった。その潔さに、晴南でさえ思わず息を呑む。本気で自分を切り捨てようとしている。咲夜は瞬きひとつせず、未練を滲ませる晴南を真っ直ぐ見据えた。「晴南。これからは、あなたはあなたの道を行って、私は私の道を行く。もう私たちに何の関係もないわ。これで終わり。お互い、別々の人生を幸せに生きればいい――それだけよ」そう言い終えると、咲夜は静かに視線を外し、瞳に声をかけた。「瞳、行きましょう」その瞬間、脳裏に浮かんだのは、先ほど怒りを滲ませながら立ち去っていった千暁の背中だった。咲夜の胸に、不安がじわりと広がっていく。瞳は頷き、咲夜の手を引きながらマネージャーに言い放った。「悪いけど、さっさとこの人たち追い出して。せっかくの気分が台無しなんだけど」本当なら、今日は咲夜のためにイケメンでも呼んで楽しむつもりだった。それなのに全部、晴南という最低男にぶち壊された。思い出すだけで腹が立つ。今すぐ戻って、もう一発殴ってやりたいくらいだ。とはいえ、さすがにそこまではせず、瞳は咲夜を連れてそのまま個室を後にした。一方、晴南はその場に立ち尽くしたまま、遠ざかっていく咲夜の背中を見つめていた。追いかけようとした瞬間、バーのマネージャーが前に立ちはだかる。「申し訳ありませんが、お連れ様とご一緒に、速やかにお引き取りください。これ以上居座られるようでしたら、こちらも強制的な手段を取らせていただきます」自分の足で出ていくか、それとも大勢に囲まれて叩き出されるか。晴南ほどの男なら、どちらを選ぶべきか分からないはずもない。マネージャーの言葉に、その場の空気が一変する。周囲の視線が、一斉に晴南に注がれた。洸は
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