運転手が帰ったあと、二人は登山を開始した。咲夜はこの日、「千野千鶴」を探す手がかりを得るため、瞳の紹介で「千野千鶴」のアシスタントの連絡先を手に入れていた。アシスタントのSNSを遡って見てみると、咲夜はあることを知る。そのアシスタント自身もオンライン上でしか「千野千鶴」とやり取りしておらず、本人の素顔を見たことがないのだ。今回の登山にもアシスタントは同行していなかった。過去の投稿を眺めていた咲夜は、一つの発見をする。そこには、どこか独特なウサギのマスコットチャームの写真が投稿されていた。そのチャームには見覚えがあった。以前、「千野千鶴」のアカウントで見かけたものだった。アシスタントの投稿にはこう書かれている。【やっとボスが欲しがってたウサギチャームを見つけた!マジで助かった……生産終了したチャームひとつのために、ボスが工場ごと買い取っちゃったんだけど。カッコよすぎるだろ。】ウサギのチャーム――咲夜は画像を拡大した。それは景浦市にある倒産寸前だったぬいぐるみ工場の商品だった。かつてこの工場は、そのウサギチャームや関連グッズを生み出し、一大ブームを巻き起こしたことがある。だが流行が過ぎると工場は急速に衰退し、そのチャームも生産終了となっていた。まさか「千野千鶴」があのチャームをそこまで気に入っていて、そのために工場まで立て直したとは。咲夜はスマートフォンを千雪に差し出した。「この工場を調べてもらえる?何か手がかりが見つかるかもしれない」「分かりました」千雪はすぐにスマートフォンを取り出し、知り合いに連絡を入れる。だが、その頃にはもう息が上がっていた。やはり日頃の運動不足がたたっているらしい。咲夜は千雪の手を引いて道端に立ち止まり、ペットボトルの水を一本渡した。千雪の肩を軽く叩きながら、咲夜は笑って言った。「やっぱり、もっと体を動かさないとね」それに比べて咲夜の呼吸はまだ安定している。千雪は苦笑しながら水をひと口飲み、膝に両手をついて大きく息を吐いた。咲夜は千雪のリュックを開け、中に入っていた水やお菓子を取り出して自分で持つ。少しでも負担を減らしてやろうという気遣いだった。十分に休憩を取ったあと、二人は再び山頂を目指して歩き始めた。登山道の三分の一ほどまで来た頃
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