照史は咲夜の向かいに腰を下ろした。「花江さん、本当に申し訳な……」「一条さんのおっしゃる謝罪の気持ちは、まったく伝わってきません。そんな上辺だけの挨拶なら結構です」照史が最後まで言い終えるより先に、咲夜は冷ややかな声で遮った。彼女は相変わらず照史に視線すら向けようとせず、淡々と言った。「時間を守るという最低限のマナーすら守れない方なら、この商談はなかったことにしましょう」その言葉を聞いた瞬間、照史の表情がわずかに変わった。確かに、家を出る直前にちょっとしたトラブルがあった。だが、ここまで軽い態度を取っていたのは、相手が女性の咲夜なら、多少遅れたところでそこまで腹を立てることはないだろうと高をくくっていたからだ。しかし、現実は違った。咲夜は明らかに彼の態度に腹を立てている。照史は気まずそうに咳払いすると、ようやく態度を改めた。「ちょっと待ってください。今回は俺が悪かった。本当に申し訳ない。せっかくの商談なんですから、話だけでもしましょう。花江さん、そう怒らないでくださいよ」ここにきて照史も、ようやく自分が苦労して取りつけた商談だということを思い知らされた。しかも、今の彼女は怪我を押して、わざわざここまで来ている。自分の遅刻が原因で商談そのものを断られてしまえば、損をするのは自分のほうだった。だが、態度を改めた照史を前にしても、咲夜は冷笑を浮かべるだけだった。隣に座っていた千雪も、遠慮なく皮肉を口にした。「一条社長に謝る気があるかどうかなんて、もうどうでもいいんです。ビジネスをする人間が、時間を守るという最低限の約束さえ果たせないのなら、話すだけ無駄でしょう?しかも、遅刻しておいて謝罪まであんなに適当だなんて。まさか一条社長、自分には何の非もないとでも思っていたんですか?」千雪はそう言ってゆっくり立ち上がった。「約束の時間はもう過ぎています。社長は病院に戻って処置を受けなければなりませんので、お食事は一条社長お一人でごゆっくりどうぞ」千雪が車椅子を押して咲夜を連れていこうとするのを見て、照史は慌てて立ち上がり、二人の前に回り込んだ。信じられないとでも言いたげな顔で、「いや、本当にわざと遅れたわけじゃないんです。だからって、そこまで厳しくしなくてもいいでしょう?」と言う。おそらくここへ向かう途中の
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