「飢えて死にそうだった時、街を彷徨っていたらうまそうな飯のにおいがしたんだ。捕まる覚悟で無銭飲食を試みた。その時の俺はどう見ても怪しいヤツなのに、惜しみなく料理をふるまってくれた。会計の時に正直に金がないことを打ち明けたら、皿洗いのバイトしてくれたら代金はいいよ、って言ってくれたのが北都だ。俺の身なりから、金がないのをわかっていたのに飯を提供してくれたんだ。こんなヤツが世の中にいるんだって、俺はその時感銘を受けた。あいつには大恩がある。だから俺は北都のためにこの店を開いている」「えっ、このお店は北都さんのためにやっているんですか?」「格安家賃1万円で、店をやってみないか、と言ってくれたんだ。もともと転売は得意だったから、あらゆるコネを使っていろんなものを集めた。底辺の人間はその道のルーツがあるんだ。だから面白い商品を安く仕入れられる。俺は善人でもなんでもないが、北都が悪を討ち取ることを生きがいにしているなら、俺はそれを手伝おうと思った。だからこの店に来たら、どんな困った客でも便利グッズで解決できる”なんでも屋”になろうと思ったんだ」 彼はただがめつい男じゃなかったんだ。金さんはお金がとても大切なことを、身に染みてわかっているんだね…。「芽衣さんも、しなくていい苦労はするもんじゃない。俺の両親もお人よしで、嫌なことをきっぱり断れなくて、事業に失敗したんだ。取引先の理不尽な要求に応え続けて自殺まで追い込まれたのさ。だから芽衣さんも、もっと早くに旦那に強く言わなきゃだめだ。もっと自分を大事にしてくれ。これ以上傷つく必要はない」 金さんの言葉が胸に響いた。経験者だからこそ、私に言ってくれた言葉のひとつひとつが重く胸を打つんだとわかった。 「ありがとうございます。自分のことは大事にしますね」「そうしてくれ。俺もなんだかんだ言って、北都の手伝いをするのは楽しいんだ。世の中から、悪が消えたらいいと願っているが、そんなものは理想論で現実は悪がはびこっている。それを失くすことはできない。だからこそ、北都が選んだ人間をバックアップするのが、俺の役目だ」 金さんはかっこいいデジタル置時計をカ
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