「初めまして。わたくし、こういう者です」 アッシュグレーのかつらを装着し、深いグリーンのコンタクトを着けた金さんがふたりに名刺を差し出した。見るからに別人である。声色も若干変えている。変装の名人だなぁ。 ”なんでも売買屋” 営業 千時 銀也(せんじぎんや) という偽名の名刺だ。場所はGPSで既に知られているため、店の名前だけは同じにしておいた。「この度はせっかくのプレゼントにご購入いただいた品に不備があり、大変申し訳ございません。至急取り替えさせていただきます」 金さんは新しい時計を持ってきて、前のものと交換してくれた。 義父はしきりに礼を言い、麻雀サークルへ出かけて行った。ふふ、これはしっかりリサーチ済。義母がひとりになるこの時を狙っていた!!「あの…失礼ですが、水谷佐千恵(みずたにさちえ)さんではありませんか?」 外商マンに扮した金さんが言った。どこからどうみても小売りの人だ。黒いスーツに眼鏡、爽やかに見えるが時折鋭い行商人の顔をする。 水谷佐千恵とは、単なる偽名。彼の親戚の叔母に似ているという設定を利用し、義母の懐に入り込む作戦だ。「いえ、違います」 さすがの義母も他人がいるから私をいびってこない。「そうですか…奥様があまりにお綺麗で、叔母に似ていたのでつい声をかけてしまいました。不愉快でしたよね、すみません」 綺麗というワードにしっかり反応する義母。実の息子を溺愛するキモイおばさんは、恐らく他の人から褒められることはないのだろう。しっかり過剰に反応している。 「不愉快なんてとんでもない。その…叔母さんに私が似ているというのですか?」「はい。美しいお顔立ちなどがそっくりです。子供のころから可愛がってもらっていました。僕の母は忙しく、彼女が母親代わりだったのです。実は彼女はもう亡くなっていて…まさかとは思ったのですが」「そうだったのですね」「これもなにかの縁です。商品にまた不具合が出てはい
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