「えーてぃーえむ、かえってきたぁ~」 僕に向かってひどい言葉を投げつけてくるのは、まだ3歳になったばかりの娘、萌絵(もえ)だった。「お帰りなさい」ではなく「えーてぃーえむ、かえってきたぁ~」はないだろ……。「萌絵。なんてことを言うんだ。そんなことを言ったらパパは…」「うっ、いたいのしないでぇっ。うわーん! パパこわーい!!」 萌絵が逃げ出した。もう……なんでこうなるんだ……。「ちょっと、萌絵になにをしたの?」 騒ぎを聞きつけた麗華(れいか)が寝室から現れた。まだ午後9時にもなっていないが、既に就寝準備が完了している。僕を迎えてくれる気配もない。もちろん食卓に僕の食事が用意されているわけでもない。「いや、萌絵が僕のことをATMとか言うから……」「ほんとうのことでしょ。父親なんだからそんなことで目くじら立てて怒らないでよ」 ぷい、とそっぽを向いて麗華は行ってしまった。お帰りも言ってくれないのか。今日は変なクレームをつけられて仕事で結構大変だったから、家族の顔を見て癒されたいと思っていたんだけど……。 肩を落としてリビングへ向かった。綺麗に片付けられたテーブルに、僕の食べるものは乗っていない。(自分で作るか……) 冷蔵庫を開けたがめぼしいものも無い。冷凍庫にはぎっしり冷凍食品が詰まっているが、どれも萌絵の食べそうなものばかりで、僕が食べてもよさそうなものはひとつもなかった。 炊飯器を見てもジャーは空っぽ。本気で僕に食べさせる気はないのだろう。ただ、気になるのはジャーが空のことが多いことだ。麗華は普段、萌絵なにを食べさせているんだろう。聞いても答えてくれないし、休日は僕を自宅に置き去りにして麗華の実家へ行ってしまうから、知りようがない。 妻の麗華とは何年もこんな状態で夫婦間は正直冷え切っている。しかし娘は可愛いし、僕としては妻のことも愛しているので普通に暮らしていきたいと願っているんだけれど…。 萌絵と麗華は寝室に引っ込んでしまったので、僕はひとり淋しくカップラーメンを静かに食べ
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