その言葉が落ちた瞬間、室内は不自然な静けさに包まれた。 鷹宮の表情もまた、わずかに強張っている。 何度か口を開きかけては閉じ、陽菜へと向けた視線には、はっきりとした後ろめたさが滲んでいた。 けれど、結局。 陽菜が自分の恋人であることを、母の前で口にすることはできなかった。 綾乃の紹介を終えると、鷹宮の母は当然のように二人の席を隣同士に指定した。 陽菜の席は一条の隣へと移される。 すべてを決め終えてから、ようやく母は陽菜へと視線を向けた。「それで……そちらの方は?」「叔母さん、こちら藤野です。俺たちの……高校の同級生で」 一条はいつもの調子で口元に笑みを浮かべながら、あえて軽く言葉を濁した。その声音にはわずかな軽さがあり、場の空気を和らげるようでいて―― 同時に、これ以上踏み込ませないという、さりげない牽制も滲んでいる。 鷹宮の母は、遠慮もなく眉をひそめる。陽菜を見るその目には、露骨な不満が浮かんでいた。「凌の誕生日に呼ばれる同級生? ずいぶん親しいのね」「もしかしたら、俺のほうと仲がいいのかもしれませんよ、叔母さん」 一条が軽く笑ってそう言う。 その一言で、母の表情はわずかに緩んだ。「あら、修司のほうなの。ごめんなさいね、てっきり凌かと。最近あの子、ほんとうに言うことを聞かなくて……変な女にでも引っかかってるんじゃないかと思っていたのよ」 わざとらしく含みを持たせた言い方だった。 陽菜の顔から血の気が引く。 身体は強張り、言葉を発することもできないまま、ただ視線を落とすしかなかった。 その間にも、鷹宮の母は綾乃との会話を進め、二人を並べては楽しげに話を振っていく。 そのときだった。 ぎゅっと握りしめていた手に、ふいに温もりが重なる。はっとして顔を上げると、一条がそっと自分の手に触れていた。 わずかに寄せられた眉と、言葉にしないままの心配。 その表情が、すべてを物語っている。 陽菜は小さく笑って首を振った。 大丈夫だと、伝えるように。 顔を上げたその先で、今度は鷹宮の視線とぶつかる。彼もまた、どこか不安げな表情を浮かべていた。 陽菜はそれにも気づかれないように、そっと微笑み返した。 食事が終わると、鷹宮の母は当然のようにそのまま部屋に泊まると言い出した。 綾乃も一緒に。 陽菜には、もうここに残る理由は
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