髪の間に雅也の温かい指先が入り込むのを感じて、楓は机の上に置いた手を無意識にきつく握りしめ、体も思わず強張った。「やっぱり、自分でやるわ」彼女が振り返ろうとしたその時、雅也の手が彼女の肩に置かれた。「俺がやる」彼の声は低かったが、抗いがたい力強さが込められていた。楓は唇を引き結び、それ以上は意地を張らなかった。たちまち、寝室にはドライヤーの音だけが響くようになった。十数分後、背後で響いていたドライヤーの音がついに止んだ。「終わったぞ。触ってみろ」楓は手を伸ばして自分の髪に触れた。とても滑らかで、しっかりと乾いている。彼女は振り返って雅也を見た。「ありがとう」雅也は彼女を見下ろした。ふとVネックのパジャマからのぞく胸元に目が留まり、すぐに視線を逸らした。「一階へ行って夕食にしよう」「もうこんな時間だし、今夜は食べないわ」スタイルを維持するためには、夜の八時以降は何も食べないのが鉄則だ。「金元が、君が最近ひどく疲れているからと言って、君の好物ばかり作ってくれていたんだが。それでも彼女の好意を無駄にするつもりか?」雅也の咎めるような視線を受け、楓は眉をひそめた。「……分かったわ。あなたが先に下へ行ってて。着替えてから降りるから」「分かった。待っている」雅也が部屋を出た後、楓はクローゼットを開け、黒のロングワンピースを取り出した。着替えている最中、彼女の脳裏には先ほど雅也にバスルームのドアに押し付けられてキスされた光景が再びフラッシュバックし、心臓の鼓動が無意識に跳ね上がった。ダメだ、これ以上考えちゃダメ。楓は熱を帯びた自分の頬を両手で軽く叩き、胸に渦巻く動揺を無理やり押さえつけて寝室を出た。ダイニングに入り、楓が雅也の向かいに座ると、真綾がずっと保温していた料理を運んできた。楓と目が合うと、真綾はわずかに笑みを浮かべた。先ほど雅也と楓は二階で随分と長い間一緒にいたのだ。間違いなく何かあったに違いない。でなければ、一階へ降りてきた雅也があんなに機嫌が良いはずがないし、楓の顔がこれほど赤くなっているはずもない。この調子でもう少し頑張ってくれれば、来年あたり湊に弟か妹ができるかもしれない。楓は真綾のそんな妄想など知る由もなく、ただ目の前の食器を見つめるばかりで、雅也と視線を合
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