美雨を見る律の瞳には、微塵の感情も宿っていなかった。あるのはただ、氷のような冷淡さと完全な平静だけだった。美雨の心臓が激しく波打ち、彼女は手に持っていたテレビのリモコンを力任せに律の顔面へ投げつけた。「水瀬律、言ったはずよ!私は絶対に離婚なんてしない!そのふざけた妄想は今すぐ捨てなさい!」律は飛んできたリモコンを軽く身を躱して避け、口角に冷酷な笑みを浮かべて一言一言区切るように言った。「美雨。俺たちが離婚するかどうかは、最初から君が決めることじゃないんだよ」以前は慎のために、彼女のヒステリーにもある程度は耐えてきた。しかし、このところ藤堂グループの危機に直面した彼女は、ますます癇癪持ちで感情的になり、手がつけられないほど暴走し始めた。もはやこれ以上、彼女に合わせて良き夫を演じ続ける気にもなれなかった。「私が決めるんじゃない?じゃあ誰が決めるっていうの?あなた!?水瀬律、あなたみたいに何の力もない人が、私の同意なしに離婚できるなんて、本気で思ってるの?寝言は寝て言いなさいよ」律は眉を上げ、余裕の表情を崩さなかった。「まあ見てなさい。一週間以内に、君は必ず離婚に同意することになる」「慎の親権についてだが、もし君が育てられないというなら、俺が引き取ってもいい」そう言い残し、彼は立ち上がって出口へ向かった。美雨の顔色はどす黒い怒りに染まった。「水瀬律、待ちなさい!もし今日ここから一歩でも出たら、お前に地獄を見せてやるからね!」しかし、彼女のヒステリックな脅しなど彼には痛くも痒くもなかった。律は足すら止めることなく、そのまま私邸を去っていった。怒りで完全に理性を失った美雨は、リビングにある手当たり次第のものを次々と床に叩きつけて破壊し始めた。凄まじい破壊音に驚き、慎が自分の部屋から顔を出した。足の踏み場もないほど荒れ果てたリビングの惨状を見て、彼は怯えて部屋の隅に縮こまり、一歩も前へ進めなくなった。今のお母さん、すごく怖い……あんなお母さん、見たことない……視界の端で震えている慎の姿を捉え、美雨は彼の方を振り向いた。その眼差しは、実の息子に向けるものとは思えないほど凶暴で血走っていた。「慎、こっちへ来なさい」慎は彼女のその恐ろしい形相に怯え、無意識に後ずさりをした。「……やだ」「来なさいっ
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