忠嗣との話を済ませた後、秘書が大慌てで彼の元へ現れた。「――社長!羽川家を敵に回すだなんて、一体どういうおつもりですか!?」「……………お前、ちょっと黙っていろ」九条邸を出てきた礼音は、口うるさい秘書を煩わしそうに見つめた。彼は礼音のことを心配していたのだ。当然、礼音にもその気持ちは伝わっている。しかし、今では余計なお世話でしかなかった。「既に決めたことにガタガタ言うな」「社長、正気の沙汰とは思えません。羽川家は国内でも有数の資産家で、現トップの羽川亮太は大物たちと繋がっている権力者なんですよ?そんな彼の不興を買ったら私たちがどうなるか……社長が苦労して立ち上げた会社ですら終わりかもしれません」「…………それの何が問題だ?」「社長……?」秘書は驚いて礼音を見上げた。一点の曇りもない、揺るぎない眼差し。秘書は遅ればせながら、彼が本気であることを悟った。「俺は香織をあんな目に遭わせたヤツらを見逃すことなど絶対にできない。何よりアイツらがのうのうと暮らしているというだけで吐き気がするんだ。お前にその気持ちがわかるか?」「……もしや、今回被害に遭われた香織さんというのは……」「……そうだ」礼音は軽く頷き、彼から背を向けて口を開いた。「――香織は俺の初恋の人だ」「……!」その言葉でようやく、秘書は全てを察した。だからこんなにも社長は本気なのか。「俺にとって香織は自分の命よりも大切な存在だ。それはお前もよく知っているだろう?」「……ええ、存じ上げております。社長がずっと初恋の少女を探していらっしゃったということも……」礼音は本気だった。本気で羽川家を相手に立ち向かう気なのだ。秘書は並々ならぬ彼の決意に、それ以上は何も言わなかった。言ったところで、彼の気持ちが変わるはずがないとわかっていたから。男なら、愛する女がこの世の何よりも大切なのは当然のことだ。「……社長のお気持ちはわかりました。ですが、少し無謀ではありませんか?社長だけでは羽川家を倒せるかどうか……」礼音は有名な実業家ではあったが、歴史ある羽川に比べたら足元にも及ばない。「……だから、俺はここを訪問したんだ。お前は目の前にあるこの家が誰の家かわからないのか?」「……もしかして、ここは」秘書は礼音の背後にそびえたつ巨大な邸宅を見上げた。こんなにも大きな家に住める人間は、か
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