香織が背を向けて立ち去るその姿を、亮太は複雑な目で後ろから眺めていた。その手には、彼女からプレゼントされた入浴剤がしっかりと握られていた。いや、プレゼントと言うべきなのかもわからない。贈り物として包装もされていない、買ったときのまま店のテープが貼られていた。亮太はそんな入浴剤を眺め、笑みを溢した。(香織からプレゼントを貰ったのなんていつぶりだろうか……)香織との結婚生活はたった数年で終わってしまったものの、それでも彼らの夫婦関係を思えばかなり続いた方だった。元々、そこに愛なんて存在しない。亮太は権力を使って自身の妻の座に収まった香織を毛嫌いしており、絶対に妻としては認めなかった。どれだけ彼女が努力しようとも、彼はまともに香織を見ようともせず、指一本触れずに放置し続けた。『亮太、誕生日おめでとう。私からのプレゼントよ』結婚してからすぐに迎えた亮太の誕生日。彼は当然、その日も家には帰らず、別の女の元で一日を過ごしていた。亮太が家に帰ったのはその翌日で、およそ一週間ぶりの帰宅だった。香織は丁寧に包装されたネクタイを亮太にプレゼントした。もちろん受け取りもしなかったが、彼女は着けなくてもいいからと彼の部屋に強引に置いて行った。結局、捨てることもできずにそのネクタイは部屋に置いたままだった。今も探せば、出てくるだろう。――あれが、香織に貰った最初で最後のプレゼントだった。あのときの自分を心から愛していた彼女はもういないのだと、亮太は今になって悟った。嬉しいような悲しいような。いや、嫌悪を通り超して憎悪していた女からの好意が無くなったのだから喜ぶべきなのだろう。しかし、亮太は何故かいつまでも気分が浮かないままだった。前のパーティーで香織の隣にいた男。まるで彼女の恋人のように振舞っていた。そのことが彼の癪に障った。「それより……最近誰かにつけられているような気がする……」亮太は謎の視線を感じ、周囲を見渡した。しかし、誰もいない。最近疲れているせいか、そのような勘違いをしてしまうようだ。「――社長、こんなところにいらしたんですね」「……芹沢」会場の外で立ち尽くしていた亮太の元へやって来たのは芹沢だった。ずっと彼を探していたのか、額には汗が滲んでいる。「式を抜け出してくるだなんて……一体何をしていらっしゃったのですか?」「……ちょっと用があってな
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