数日後。「羽川夫人、お久しぶりです」「羽川夫人だなんて……そんなかしこまらないでください」高級ホテルのレストランの個室にて。香織はある人物と会っていた。テーブルの上には紅茶とお茶菓子が並んでいた。香織の目の前に立っていたのは、五十手前の綺麗な女性だった。「私と叔母さんの仲ではありませんか。もっと楽にしてください」「ですが……」「以前のように呼び捨てにしてもらってかまいません」香織がそこまで言うと、彼女は根負けしたようだった。「そう、あなたが望むならそうするわ。香織、久しぶりね。最後に会ったのはあなたが羽川家に嫁ぐ前だったかしら?」「ええ、そうですね。叔母さん」香織が会っていたのは、父親の妹である滝沢美奈子(たきざわみなこ)だった。血を分けた兄妹ではあるものの、美奈子はあまり兄とは似ていない。社交的でおしゃべりな彼女は忠嗣とは正反対の性格だった。挨拶を済ませた二人は席に着いた。美奈子は紅茶を一口飲むと、口を開いた。「お兄様があなたのことを気にかけていたわ。たまにくらい顔を見せたらどう?」「……そうですね、考えておきます」美奈子のその言葉が香織のためについた嘘だということを彼女はよく知っている。いつも厳しかった父親が彼女を気にかけるはずがないから。「結婚生活はうまくいっているのかしら?」「……羽川家の噂はご存じではありませんか?」美奈子はピクリと眉を上げた。心当たりがあったのだろう。「……あまり順調ではなさそうね」「ええ、その通りです」香織は頷いた。亮太が愛人にかまけて本妻を蔑ろにしているという噂は、市内ではかなり広まっていた。顔の広い美奈子がそのことを知らないはずがない。「……大変な思いをしているようね」美奈子は紅茶の入ったティーカップを机の上に置いた。心配そうに香織を見つめる彼女と、目が合った。香織は今だと思った。「……私が今日、叔母さんをここへ呼んだのには理由があります」「……理由?」香織が今日叔母をわざわざこの場所へ呼んだのにはある狙いがあった。ただ近況を話したいというだけなら近場のカフェでよかった。わざわざ市外の個室レストランに誘う意味は別にあるのだ。「叔母さん、見てほしいものがあるんです」「……何をしているの?」そう言うと、香織は服を脱ぎ始めた。美奈子は驚いた顔で彼女を見つめた。「あなた…
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