日菜乃の元交際相手の男は一命を取り留めたものの、全治二カ月という大怪我を負った。当然彼は事件後警察署へ赴き、被害届を出したが、どれだけ経っても犯人が逮捕されたという知らせはなかった。まるで何者かが警察に圧力をかけているかのように、捜査は進展しなかったのだ。彼は日菜乃に呼び出されてあのビルの裏へ訪れた。しかし、待っていたのは日菜乃ではなく知らない男だった。その時点で彼女が事件に深く関与していることは明白であり、事件解決も早いと思われた。しかし、当の日菜乃は警察に軽く事情聴取をされただけで釈放され、事件は未だ未解決となっている。あまりにも異常だった。何か大きな権力が動いていることを感じた彼は、悔しさを滲ませながらもこれ以上の追及を諦めた。「社長、私のためにありがとうございます」「日菜乃……君があの男から解放されてよかった」二人は当然、罪悪感など微塵も持っていなかった。彼は自分のやったことが正しいと信じて疑わず、彼女はそんな彼を利用していた。亮太は事件後、警察に圧をかけ、自分たちが逮捕されないように手を回していた。彼は警察の上層部と知り合いだったのだ。日菜乃は亮太の腕の中でニヤリと笑った。全て彼女の思い描いていた通りに物事が動いた。亮太はもはや日菜乃の操り人形と化していた。***日菜乃との出会いを思い浮かべていた彼は、ポツリと呟いた。「……やっぱり、このままじゃいけないよな」「そうですよ、社長!やっと正気になってくださったんですね!」芹沢は感動のあまり、目に涙を浮かべた。二人の仲が悪いと、会社全体の空気まで悪くなるのだ。「そうだな、今から日菜乃のところへ行こう」「それがいいですよ、社長」彼は椅子から立ち上がり、一度日菜乃の待つ家へ戻ることにした。社内を歩き、その後ろを芹沢がついて歩く。まだ正午だというのに、愛人のためにわざわざ家に帰るだなんて。通りすがりの社員たちは、ヒソヒソしながら亮太に冷たい視線を向けていた。日菜乃と付き合ってからというもの、社員たちは彼に呆れるような目を向けるようになっていた。もちろん、浮かれている亮太はそんなこと気付いてもいないが。会社から出た亮太は車に乗り込み、羽川家の本邸へと戻った。「日菜乃!」「社長……!?」家に帰ってきた亮太を、日菜乃は驚いた顔で見た。彼はそんな彼女をギュッと抱きしめた。「悪か
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