「しゃ、社長……」忠嗣に腕をガッシリと掴まれた亮太の顔は真っ青だった。香織は父親が自分を守ってくれたということに驚きを隠せなかった。(……お父さんが、私を庇った?)驚くのも当然だ。香織の記憶の中にいる父親はいつだって冷たくて、血を分けた子供に関心がなかったからだ。そんな父が、自分を守るようにして前に立つだなんて。「羽川社長、私の娘に何をしているのかと聞いているんだが」「社長……誤解です……」亮太は青い顔のまま答えた。彼がこのように追い詰められている姿を香織は初めて見た。(自分より上の立場の人間に媚びへつらおうとするところは相変わらずね)亮太は臆病な人間で、か弱い女性には当たり散らし、自分より上の者には何もできなかった。それが亮太という男だった。「誤解だと?ならこの手は一体何をするつもりだったんだ?」「そ、それは……」忠嗣の鋭い視線に、亮太は何も言えなくなっていた。彼は握った手に力を込めた。「ウッ……」亮太が苦しそうにうめき声を上げた。いくら年を取っているとはいえ、忠嗣はまだまだ見た目が若く、体力もある。亮太は抵抗することができなかった。「社長さん、やめてください!」二人の間に日菜乃が割り込んだ。亮太を庇うように忠嗣の腕に触れた日菜乃に、彼が眉をひそめた。「……君は黙っていてくれと言わなかったか?」「黙っていることなんてできません!」「……」日菜乃に触られるのが不快だったのか、忠嗣は亮太の腕から手を離した。「亮太さん、大丈夫ですか?」「……あぁ」握られていた亮太の腕には、忠嗣の手の痕がくっきりと残っていた。「社長さん、あんまりですよ!むしろ社長さんが亮太に暴力を振るっているようなものではありませんか!」「……とんでもないことを言いだすのだな、君は」この状況で亮太の肩を持つとは。どうやら日菜乃の彼に対する愛は本物だったようだ。(ホンット、メンタルの強い女ね……)こんな暴力男を心から愛することができるだなんて、香織は日菜乃に感心した。「……どうやら羽川社長が妻にDVをしているというのは本当だったようだな」「……!」忠嗣は先ほどの亮太の行動を見て、確信したようだった。(お父さん……!)彼はチラリと香織を見た。「このような場所に娘を置いておくわけにはいかない。離婚が成立するまで、香織は九条家に連れて帰ることと
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