忠嗣の書斎から自室へ戻ったあと、香織はスマートフォンにメッセージが届いていることに気が付いた。『香織、記事見たわ。大変だったわね。一度会って話さない?』「……」突然の美佐子からの連絡に、香織はスマホを窓の外に向かって放り投げたくなった。前の連絡をスルーしたっきり、母親からのメッセージは来ていなかった。だが、つい先日週刊誌に掲載された記事により香織の名誉は地に落ち始めている。美佐子は何も香織を心配してそのような内容の文を送ってきたわけではないということを、香織はよく知っていた。娘である香織を利用し、九条家に戻る機会をうかがっているのだろう。彼女は母親のそのような計画に付き合うのは御免だった。(でも、お母さんがこのまま私たちを諦めないのは面倒ね……)香織は美佐子のアドレス宛てに素早くメッセージを送信した。『お母さん、あなたは私を捨てました。あなたは既に九条家とは何の関係もない人間です。これ以上は私に関わらないでください』それだけ書いて送信ボタンを押すと、彼女はスマホをベッドサイドに置いて布団に入った。疲れが溜まっていたせいか、今日は早く眠れそうだった。(九条家へ戻ってきてからは、前世の夢をほとんど見ることはなくなったし……)父親とのわだかまりも解け、継母である有真ともうまくやれている。自分の居場所は羽川家ではなく、ここだったのだと、香織は改めて実感した。このまま何事もなく、スムーズに離婚できたらいいな。彼女はそう思いながら目を閉じた。***その日、彼女はとても懐かしい夢を見た。雲一つない、澄みきった青空。辺り一面に花が咲き誇る場所で、幼い少年と少女が向かい合っている。少年はどこか暗い顔をしていて、対照的に少女は明るい笑みを浮かべている。『あなた、名前は何て言うの?私は九条香織よ!』『……お前なんかに言うわけないだろ』『どうしてそんな意地悪をするのよ!』年の割には可愛げがなく、ツンケンした少年だった。でも、何故か嫌いになれそうにない。どうして彼を見ていると、こんなにも懐かしい気持ちになるのだろう。香織は不思議だった。「ところで、どうしてこんなところに一人でいるの?お父さんやお母さんは?」少女が両親について尋ねると、少年は俯いた。『母親はいない。父親も……俺が可愛くないみたいだ』『……』少女はそんな彼を何も言わずにじっと見つめ
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