「な、何するのよ!放しなさい!」「それはできないわ、あなたが何をするかわからないからね」香織はしばらく女と掴み合いになった。香織は何とかして女を押さえ込もうとするが、女も抵抗を続けた。彼女一人の力では、女を完全に押さえ込むのは難しかった。「大体どうしてあなたがここにいるのよ!九条香織は二人いたとでもいうわけ!?」「そんなわけないでしょう?あなたが勝手に勘違いしているだけよ」「何ですって……?」その瞬間、美由紀が背後から女を押さえつけた。「なッ……アンタ……!」「美由紀、ナイスよ!」実は香織だと思われていたのは、変装した美由紀だった。香織と美由紀は二人がかりで女を床に押さえつけると、人通りの少ない路地裏へと連れて行った。香織は座り込んで不貞腐れている女を見下ろした。「あなたね?最近私をやたらと付きまとっているのは」「……」女は黙り込んだまま何も言わなかった。香織は近頃、謎の視線に悩まされていた。外を歩くたびに、似たような執念深い視線を感じることが何度もあった。そのせいで安心して出歩くこともできなかった。(犯人がこんな可愛らしいお嬢さんだとは驚いたけどね……)女は香織よりも年下の十代後半くらいに見えた。黒髪を高いところで二つに結んでおり、香織とは初対面だった。香織をストーカーする理由なんてないはずなのに、一体どうして。彼女の詰問に、女は開き直った。「あなたが悪いのよ!私の彼を誑かすから!」「彼?一体だれのことよ?」「隼人君よ!」「隼人……」その名を聞いた香織は、ライブに行ったあの日のことを思い出した。『実は最近……何だか誰かにつけられてるような気がしてさ……どこにいても視線を感じるというか……』隼人は困り果てたように視線を逸らしながら、そう打ち明けた。そして近頃、香織はまさに隼人と同じような目に遭っていた。そこで彼女はようやく気が付いた。(如月さんに付きまとってたストーカー女って、コイツか!)たしかにアイドルオタクっぽい見た目をしている。その証拠に、彼女が持っていたカバンには隼人のキーホルダーがいくつもぶら下がっていた。「あなたねぇ、いくら好きとはいえ相手の気持ちを考えないでそんなことをするのは間違っていると思わないの?」「ふん、あなたも隼人君に愛される私に嫉妬してるのね?何て醜い女なの!」「な、あなた……」
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