「うた、どこですか!?」 聞こえてきたのは、文彦の焦った声と、乱雑にドアを開ける音。そして、何かが倒れる音。「文彦さん? ここ、奥の方です」 答えるや否や、文彦はうたの元へ駆け寄り、彼女を見つけると目の前に座り込んだ。薄暗いせいか、顔色が悪く見える。「あなたには、こんなところ、来てほしくなかった……」 消え入りそうな文彦の声に、胸が苦しくなる。だが、それ以上の希望が今、うたの手元にある。「私は、来てよかったと思います」「何故……?」「これを、見てください」 文彦は怪訝そうな顔をするも、ノートを受け取り、壊れないように優しくめくった。「これは……」「文彦さんのお母様の日記です」 うたの言葉に息を呑み、文彦は再び頁をめくる。書物庫には、ふたりの息遣いと頁をめくる音だけがする。 しばらくして、文彦はノートを閉じ、床に置く。「あ、あぁ……!」 悲しみとも、喜びとも取れる声。うたはじっと、文彦を見つめ、彼の言葉を待つ。「ねぇ、小生は、愛されたかったんです……」 ぽつりとこぼれる言葉。愛おしそうな目でノートを見下ろし、指先でなぞる。「最初から、叶ってたんだ……」「今も、叶ってます。私が、ずっと叶え続けます」「うた……」「文彦さん、あなたが、好きです。愛しています。この先も、ずっと」「うた、小生も、あなたを……」 どちらからともなく、唇を重ね、熱い雫を流す。忌々しかったはずの書物庫に、静かな愛の時が流れる――。
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