LOGIN時は明治。一般家庭で生まれ育った娘、うたは人攫いに拐かされるも、隙をついて逃げることに成功するも、すぐに見つかってしまう。 追いつかれそうになったうたを助けたのは、象牙色の長い髪に、眼帯をつけた華族、文彦。 日本人離れした美丈夫は、うたを屋敷に連れ帰り、子作りを強要する。 その理由は……。
View More「はぁ、はぁ……っ!」
街灯もロクにない時代の夜更け、うら若き乙女は、息を切らせながら走っている。真冬の空気が肺や喉に刺さっても、溶けた雪で泥になった道で転びそうになっても、足をとめるわけにはいかなかった。1秒でも止まれば、人生が終わってしまう。
「待て、このアマ!」
しゃがれた怒鳴り声と足音が、松明の炎と共に迫ってくる。
(まずい、このままじゃ……!)
うたは少しでも前へ行こうと、歩幅を広くした。それがいけなかった。
「きゃっ!?」
派手に転び、お気に入りの臙脂色の袴も、矢絣柄の着物も、泥まみれになってしまった。だが、そんなことを気にしている場合ではない。
(逃げなきゃ!)
「やっと捕まえた! 手間かけさせやがって!」
立ち上がるのとほぼ同時に、半上げにした黒髪を男に掴まれる。絶望のあまり、痛みも感じず、声も出ない。顔や服についた泥を気にする余裕すらない。
(終わった……)
「おい」
これから訪れるであろう暗い未来に絶望していると、凛とした声が降ってきた。顔を上げると、立派な馬車が停まっており、開いたドアからは、暗闇でも分かる美しい象牙色の長い髪が見えた。
「あ、あんたは……。いえ、あなたは……!」
うたを追いかけ回していた人拐いの男は、目を見開き、馬車の中を見る。うたももう一度馬車の中にいる人物をよく見ようとしたが、男に髪を引っ張られ、見ることができなかった。
「その小娘は、これから商売道具にするご予定で?」
「へ、へぇ。そのとおりで。逃げ出したんで、捕まえに来たところでさぁ」
「その小娘、小生が買いましょう」
「へ?」
間抜けな声を出す男に、馬車の男は袋を差し出した。男が訝しげな顔をしながら袋を受け取り、中を見ると、彼のような身分ではお目にかかることのない大金が入っている。
「こ、こんなにですかい!?」
「それだけあれば足りるでしょう。その小娘を置いて失せなさい」
「へへ、これだけありゃ、遊んで暮らせるぜ」
人拐いの男は、下卑た笑みを浮かべながら、大事そうに袋を抱えて闇夜に消えた。
(助かった……?)
状況を飲みきれていないうたは、呆然と立ち尽くすしかできない。
「小娘」
凛とした声に我に返り、顔を上げて息を呑む。満月に照らされた美丈夫がそこにいた。風に揺れる象牙色の長い髪も、吸い込まれそうな大きな瞳も、日本人離れした顔立ちも、すべてが美しい。美丈夫は左目に眼帯をしており、右目でうたを見下ろしている。
「乗りなさい」
「え?」
「ほら、手を貸そう」
訳の分からぬまま、差し出された手を取ると、馬車に乗せられた。ドアが閉まると、彼の隣に座らされる。泥が染みた袴は、座るとべっちょりしていて気持ちが悪い。
(そうだ、さっき転んで……)
座ってから、自分が泥まみれになってしまったことを思い出し、思わず立ち上がる。
「座りなさい。危ないでしょう」
「で、でも私、泥まみれで……」
「あとで掃除させますよ。それに、一度座ったんだ。今更気にしてもしょうがないでしょう」
「う、確かに……」
先ほど座っていた場所に座り直すと、息を整える。安心感で肺や脇腹の痛みに気づいて呻いていると、美丈夫は背中を擦ってくれた。
引越し作業を始めて半年が過ぎた頃、文彦は全員に荷物をまとめるように指示をした。「いよいよ引っ越しね」「あぁ、ようやくこの忌々しい屋敷とさよならだ」 この頃になるとふたりとも敬語が抜け、以前より夫婦らしくなってきた。「うた、あなたの荷物は小生がやるから、あなたはゆっくりしてて」「そんな、悪いよ。皆頑張ってるのに」「あなたひとりの躯じゃないんだから、無理をしないでほしいんだ。もう少ししたら、ちえがお菓子を持って来るから、一緒にお茶をしてるといい」 文彦の柔らかな視線は、うたの膨らんだおなかに向いた。うたのお腹には、新しい命が宿っている。妊娠が発覚してから、文彦はうた以上に彼女を身長に扱い、はる達からは「過保護すぎる」と笑われるほどだ。「ふふ、お言葉に甘えようかな」「あぁ、そうしてくれると助かる」 文彦はうたを応接室にエスコートすると、温かい飲み物を持っていくよう、はるに頼んだ。「姉様、お待たせ」 しばらくしてちえが、うたの大好物であるすあまを持って遊びに来てくれた。彼女は少し早めの花嫁修業として、時々屋敷に来ては、うたやはる、はるの母親に家事を教わっている。引っ越したら、毎日のように来る予定だ。「ありがとう、ちえ」「どういたしまして。お腹の子、順調?」「うん。お医者様も、今のところ問題ないって」「そっか、よかった」「そういえば、ちえは新築見たの?」「近いから、外観だけは嫌でも見えるよ。素敵なお屋敷、とだけ言っておくね」 ちえはいたずらっぽく笑うと、大きな口を開けてすあまにかぶりつく。「もう、大きな口開けて……。はしたないじゃない」「普段はちゃんとしてるんだから、姉様の前でくらい、許してよ」「そういう気の緩みが、大事な場所でのミスを招くの。嫁ぎたいなら、今から練習しておきなさい。私よりもいい家に嫁ぐんでしょ?」「はーい……」 不満そうにちびちびすあまを食べる妹を微笑ましく見守ってる間、引っ越しは着々と進んでいく。 引っ越しが終わったのは6日後のこと。文彦のエスコートで馬車に乗り、他愛のない話をしながら新居へ向かう。「ここだよ。さぁ、手を掴んで」「ありがとう」 文彦の手を借りて馬車から降り、顔を上げる。「わぁ、素敵……!」 眼の前には程よい広さの庭園と、小さな洋館。以前住んでいた屋敷の半分ほどだろう。それでもと
書物庫での出来事があってからの文彦の行動ははやく、使用人達を全員解雇した。「誰がこの屋敷を管理するというのですか。後悔しますよ」 負け惜しみのように言うふさの背中を押し、扉を閉める文彦を見て、彼の成長を感じる。(こんなことで言うのも変だけど、文彦さん、変わったな。いい方向に)「うた、これから忙しくなりますよ。まずは、あなたの実家がある町に向かいましょう」「はい」 外に出ると、馬車が待機していた。よく見ると、御者が違う人になっている。「職を失くして困っていた方です。真面目だけが取り柄だとおっしゃっていたので、雇ってみました」「山本です、よろしくお願いしますよ、お嬢さん」 山本と名乗る中年男性はにかっと歯を見せて笑った。今までの御者よりも好感が持てる。「ささ、どうぞ」 山本は恭しくも粗野な仕草でドアを開け、ふたりが座ったことを確認してから閉める。うたが生まれ育った町に着くと、馬車はある場所に停まった。「ここって……!」 風が吹けば倒れそうな小屋。そこは親友であるはるの家だった。「彼女達を雇うことにしました。呼んでください」「はい!」 馬車を降りて戸を叩くと、大きな風呂敷を抱えたはると母親が出てきた。「うたちゃん! 本当にありがとう。私達を雇ってくれるなんて、本当に、なんと言えばいいのか……」「娘から聞きました。あなた達が色々支援してくださったおかげで、あとは体力を戻すだけになりましたよ」 はるの母親は、にこやかにうたを見る。以前は今にも死にそうな顔をしていたというのに、今は活力がみなぎっている感じがする。彼女の劇的な回復が嬉しくて、目頭が熱くなる。「いえ、そんな……。ほとんど、文彦さんのおかげです」「そんなことないよ。うたちゃんが言い出してくれたから、私達はこうして生きられるの」「どういたしまして。さぁ、行こう」 これ以上謙遜するのは失礼だと思い、彼女達の言葉を受け取ると、夫婦でふたりに手を貸して馬車に乗せた。 屋敷に戻ると、自動車や台車が何台も停まっていた。「これは、いったい……」「まだ言ってませんでしたね。引っ越します」「え?」「この屋敷は、あまりにも広すぎる。それに、少々不便な場所にあるでしょう? うたの実家の近くに、新しい屋敷を建てている最中でして」「でしたら、引っ越しはまだ先じゃ……」「えぇ、そう
「うた、どこですか!?」 聞こえてきたのは、文彦の焦った声と、乱雑にドアを開ける音。そして、何かが倒れる音。「文彦さん? ここ、奥の方です」 答えるや否や、文彦はうたの元へ駆け寄り、彼女を見つけると目の前に座り込んだ。薄暗いせいか、顔色が悪く見える。「あなたには、こんなところ、来てほしくなかった……」 消え入りそうな文彦の声に、胸が苦しくなる。だが、それ以上の希望が今、うたの手元にある。「私は、来てよかったと思います」「何故……?」「これを、見てください」 文彦は怪訝そうな顔をするも、ノートを受け取り、壊れないように優しくめくった。「これは……」「文彦さんのお母様の日記です」 うたの言葉に息を呑み、文彦は再び頁をめくる。書物庫には、ふたりの息遣いと頁をめくる音だけがする。 しばらくして、文彦はノートを閉じ、床に置く。「あ、あぁ……!」 悲しみとも、喜びとも取れる声。うたはじっと、文彦を見つめ、彼の言葉を待つ。「ねぇ、小生は、愛されたかったんです……」 ぽつりとこぼれる言葉。愛おしそうな目でノートを見下ろし、指先でなぞる。「最初から、叶ってたんだ……」「今も、叶ってます。私が、ずっと叶え続けます」「うた……」「文彦さん、あなたが、好きです。愛しています。この先も、ずっと」「うた、小生も、あなたを……」 どちらからともなく、唇を重ね、熱い雫を流す。忌々しかったはずの書物庫に、静かな愛の時が流れる――。
「まだ1時間以上あります。しっかり掃除してくださいね。他の使用人達も、別の場所を掃除しているんですから」 ふさはそう言うが、食堂からは楽しそうな笑い声がする。(見え透いた嘘を……) 食堂に乗り込んで、彼らを叱ってもよかったが、人間とは不思議なもので、1度掃除を始めると、綺麗になるまで掃除し続けたくなる。 そのふたつは天秤にかけるまでもなく、うたは掃除を選び、水を取り替えに行く。ついでに塵芥箱(今で言うゴミ箱)も書物庫に持っていくと、ボロボロの布切れを押し込んだ。「やっぱり、少しでも埃を取り除いたほうがいいよね……」 二度手間になるのを承知で、掃き掃除をしていると、壁際に紐が上からぶら下がっているのを見つけた。紐は上の小窓に繋がっており、紐を引くと木製の小窓が開いた。壁のフックに紐を固定すると、夜風が淀んだ空気を追い出し、新鮮な空気を少しずつ送り込んでくれる。「これで掃除しやすいかな」 掃除をしていた地点に戻り、椅子に登って見渡すと、奥の本棚の上に何か乗っているを見つけた。遠くてここからはよく分からない。「なんだろ、あれ」 好奇心のままに何かが乗っていた本棚の前に椅子を運ぶ。そこは机に1番近い本棚だった。 本棚の上を見ると、2冊のノートだ。手で埃を払い、椅子に座って開いてみる。 2月4日。 あの人はいつも冷たい。 愛のない結婚なのは覚悟していたけど、こんな扱い、もう耐えられない。 繊細な文字でそう綴られていた。「日記……。誰の?」 読み進めていくと気になる文章を見つけた。 5月23日。 社交パーティ。あの人はご友人に私がどれほど愚かか言い聞かせるだけ。 西洋の紳士が、私をダンスに誘ってくださった。なんて素敵な人なのかしら。「もしかして、文彦さんの、お母様の……?」 6月1日 またあの方にお会いできた。エドワード様、素敵な方。 私をひとりの人間として扱ってくださる。 6月13日 あの人も子供も、私をぞんざいに扱う。けど、構わない。この家族には何も期待しない。 明日、エドワード様にお会いできる。 6月14日 ついに禁忌を犯してしまった。愛がないとはいえ、主人がいるのに、エドワード様と……。 けれど、後悔はありません。あの方といる時だけ、私は人間になれる。女になれる。 その後も、日記にはエドワードという西洋の紳
「あぁ、そんなに締め付けて、期待してるんですか?」「わ、わかんにゃ、ひああぁっ♡」 徐々に高まっていく速度と快楽に、目の前がチカチカしてくる。更に先に何かがあるをの感じ取り、期待と恐怖で胸が震える。(私、どうなっちゃうの……? 怖い……。でも……!)「あ、あぁっ♡ これ以上は、だめぇ♡」「拒絶は許しませんよ」 腰をがっちり掴まれ、激しく腰を打ち付けられる。今までとは比べ物にならない暴力的な快楽に、呼吸さえままならない。「あ、あ、ああっ♡なんか、来ちゃ、ひああああっ♡」 うたは絶頂を迎え、仰け反りながら甘い悲鳴をあげる。少し遅れて文彦が悩ましいうめき声を上げ、うたのナカに白い欲
「ひぎぃ!? い、いだっ……!」 想像以上の痛みに怯えていると、大きな手がうたの髪を優しく撫でる。「大丈夫、大丈夫ですから。ゆっくり、息をして」 普段の文彦から想像さえつかないあたたかい声で、安心させるように声をかけてくれる。おかげで落ち着きを取り戻し、痛みも耐えられないものではないと気づいた。「ご、ごめんなさい……。私、気が動転してしまって……」「初めてですからね。気にする必要はありません。ゆっくり、動きますからね」 文彦はもう一度髪を撫でると、ゆっくり律動を始めた。それはとてもゆるやかなものだが、処女膜があったであろう箇所が、じんじん痛む。「んぐ、ひっ……! くぅ……」「
「痛いですか?」 「い、いえ……。違和感が……あ……」 くいっと指を曲げられ、奥が疼いてくる。ざらりとした場所を撫でられ、快楽の波がじわりじわりと押し寄せてくる。 「あ、あぁっ♡ ん、はぁ♡」 「気持ちいいですか?」 「は、はい……んうぅ♡」 文彦の指は時間をかけて奥へ侵入していく。おかげで違和感もほとんどなくなり、快楽だけを追える。 「そろそろ増やしますよ」 指が増やされ、圧迫感が生じる。 「あうぅ……!」 「痛いですか?」 「大丈夫、です……」 「もう少し、辛抱してくださいね」 2本の指がバラバラに動き、狭い蜜壺を広げていく。ナカで感じることを覚えた躯は
「わ、私……。なんてはしたない、声を……」「気持ちよくなれている証拠です。怖がらないで、恥ずかしがらないで。あなたは上手くお務めを果たせていますよ」「そう、なのですか……? 私、何も知らなくて……」 目にいっぱい涙を溜めて見上げると、文彦は安心したように笑いかけ、うたの横に身を横たえ、優しく抱きしめる。「こうすれば、少しは安心できるでしょう? 大丈夫ですから」 片手で肩を抱き、もう片方の手で、うたの太ももを撫でる。その手つきにいやらしさはなく、自分より高い体温に、少しずつ緊張が溶けていく。「足を開いてください。大丈夫、ここからなら、小生にも見えませんから」「は、はい……」 恥