一馬が帰ったあと、瀬奈は今の状況を打開するべく、部屋に湊斗が監視として付けていたメイドを呼んだ。「奥様、何か御用でしょうか」「奥様っていうのちょっとやめてくれない?私たちもう離婚するんだから」「……社長より、奥様と呼ぶように命じられておりますから」彼女たちにとって湊斗の命令は絶対であり、瀬奈は二の次だ。そのため、ここで瀬奈がどれだけ言おうが何も変わらないだろう。「私のスマホはどこにあるの?ポケットからなくなってたんだけど」「奥様のスマートフォンは私たちが預かっております」「渡してほしいって言ったらくれる?」「……それは出来かねます。どうしても必要なら社長に直接申し上げください」湊斗は彼女がスマホを使い、外に助けを求めることを危惧しているのだろう。自分が逃げないようにそこまでするとは。その執着心は一体どこから来ているのだろうか。(困ったわね……湊斗に言ったところでくれるわけがないし……)瀬奈はどうにかして外部と連絡を取ろうとしていた。静香や誠也たちが心配しているだろうし、近況くらいは伝えておきたかったのだ。そんな彼女の心境を察したのか、メイドが口を開いた。「……どうしても連絡を取りたいのであれば、手紙なら送ってもいいと社長から仰せつかっております」「あら、本当!?」瀬奈は嬉しさのあまり、椅子から立ち上がった。さっそく便箋と封筒、そしてペンを用意させた瀬奈は稲田町にいる人々に手紙を書き始めた。(姉さんと、誠也さん……職場にいる人たちも心配しているだろうなぁ……)瀬奈は今休職ということになっている。湊斗が彼女が勤める会社の社長に圧力をかけ、そのようにしたと聞いた。そのせいでみんなに迷惑をかけているだろう。(元気だから……心配しないでくださいっと……)瀬奈は静香と誠也、そして皆川社長宛てに手紙を書いた。本当はもっと書きたい人がいたが、あまりにも多すぎると湊斗から不審がられるかもしれない。いずれはここから脱走するのだから……「この三つを、お願いできるかしら?」「……かしこまりました」メイドは瀬奈が書いた三つの手紙を受け取り、そのまま部屋から出て行った。一人になった彼女は、特に深い意味は無いが、湊斗の部屋を歩き回った。(せっかくなら、私の部屋にしてくれたらよかったのに)瀬奈はここへ来てからというもの、妙に落ち着かなかった。いく
Last Updated : 2026-04-19 Read more