瀬奈が湊斗に連れ去られて一週間が経った。稲田町では、静香が誠也と話をしていた。「アイツが瀬奈を連れて行くだなんて……」静香は額を手で押さえた。予想外の事態だった。里亜が言っていた親切なおじさんが湊斗だったということを、彼女は今初めて知った。「瀬奈さんを守れなくてすみません、静香さん」「気にしないでちょうだい、誠也君。湊斗相手に歯向かったら、あなたも危なかったわ」おそらく瀬奈は誠也を守るために、湊斗について行ったのだろう。「でも不思議ね……アイツが子供に優しくするなんて」「里亜ちゃんは懐いていたようですが……お世辞にも親切な人には見えませんでした」「まぁ、親切ではないわね」静香はキッパリと言い放った。湊斗のことは幼い頃から知っているが、里亜に優しくしたのも瀬奈を誘拐したのも彼らしくない行動だった。普段あまり人前で感情を表すことのない男だ。唯一あったとすれば、両親を事故で亡くしたときくらいか。いや、それ以外にも一度だけあった気がする。今ではもうあまり記憶にもないが……(そういえば昔……暁家に湊斗が乗り込んできたことがあったわね)あのとき、アイツは父さんと泰西に対して何て言ってたんだっけ。たしか瀬奈がきっかけで……昔のことを思い出していた静香に、誠也が声をかけた。「静香さん、瀬奈さんが心配です」彼の声で、静香は我に返って顔を上げた。「えぇ、私もよ。だけどね……あなたは湊斗の元へ行かないほうがいいと思うの」誠也が湊斗の元へ行けば、彼に何をされるかわからない。静香は今にも飛び出しそうな誠也を何とか制止した。「瀬奈のことは心配いらないわ。湊斗と瀬奈は幼馴染だし、あの子ならきっとうまくやっているはずよ」静香は妹を信じていた。以前のように湊斗を追いかけ続けるだけの瀬奈ではない。そんな妹のために、何か自分にできることはないか。静香は必死になって考えた。(神宮司家が何だと言うのよ!こうなったら、言いたいこと言わせてもらうわ!)静香は何かを決意した様子で座っていた椅子から立ち上がった。彼女は座ったままの誠也を見下ろして口を開いた。「――湊斗のところへは、私が行くわ」「し、静香さん……!」誠也は不安げに静香を見つめた。女一人であの男に立ち向かうということが心配なようだ。しかし、静香の意思は揺らがなかった。「湊斗と話をつけてくるわ、あなたは
Last Updated : 2026-04-21 Read more