稲田町からの帰り、瀬奈は神宮司家の本邸の周りをウロついているある人物を発見した。暗くてよく見えなかったが、そのシルエットには見覚えがあった。「…………あら」暗闇の中に佇む一つの影を前に、瀬奈は立ち止まった。「誰だ?」そんな彼女の様子を感じ取ったのだろう。不審人物を前に警戒を強めた湊斗を、瀬奈は慌てて制止した。「何故止める?」「あの人は危険な人じゃないわ……私の知っている人よ」「何だと?」少なくとも、こちらに危害を加えてくるような人間ではない。瀬奈はそのことをよく知っていた。(でも不思議だわ、どうしてこんなところにいるのかしら……)瀬奈は里亜を湊斗に預け、一人”彼女”の元へと向かった。近付いてくる足音に気付いたのか、彼女は驚いたように瀬奈を見つめた。「……!」「お久しぶりですね」瀬奈に会うためにここに来たのだろうに、何故そんなにも驚いているのか。瀬奈は動揺している様子の彼女にゆっくりと近付いた。彼女とは一応家族ではあるものの、交流はほとんどしてこなかった。もちろん、彼女が神宮司邸を訪れるのも初めてのことだった。「今日はどうしてここにいらっしゃるのですか?――お義姉さん」「…………瀬奈さん」夜遅く、神宮司邸を訪問していたのは瀬奈の義姉であり、泰西の妻である千郷だった。千郷は大学時代に瀬奈の兄泰西の寵愛を得て、彼の妻となった。彼らの結婚式には当然、家族として彼女も参加した。もう何十年も前のことだが、あの盛大な式のことは今でもよく覚えている。あの頃と比べると、千郷はだいぶ変わったようだった。結婚式での幸せそうな笑顔が未だに記憶に深く刻まれているせいか、今の彼女はとても幸福そうには見えなかった。――その理由を、瀬奈はよく知っていた。千郷はしばらく視線を彷徨わせて黙り込んだ後、遠慮がちに口を開いた。「……瀬奈さん、お話をお聞きしたくてここに来たんです」「……立ち話もなんですから、よかったら上がってください。中で話しましょう」瀬奈は突然の訪問者を家に招き入れた。千郷を近くでまじまじと見た湊斗は、小声で瀬奈に声をかけた。「どこかで見たことがあると思ったら……お前の兄の妻か?」「ええ、そうよ……千郷さんって言うの。兄さんの奥さんだけど、私たちみたいに政略的な結婚ではないわ。あの人はきちんと兄さんに愛されて……」愛されているのだと
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-07-30 อ่านเพิ่มเติม