その日の夜、瀬奈は静香と電話をしていた。黒川区へ戻ってからというもの、瀬奈は時折姉の静香と電話でお互いの近況を話していた。「……アイツに会ったですって?」耳に近づけたスマートフォンから静香の低い声が聞こえる。顔は見えないものの、内心イラついているのだということが伝わってくる。「姉さんったら、兄さんの話になるといつもそうなんだから」「当たり前でしょう。私が家を出る前、アイツが私に何をしてきたか……」静香は瀬奈以上に泰西と折り合いが悪く、家を出てからは一切連絡を取っていなかった。あのときのことは瀬奈もよく覚えている。二人はお互いに我が強く、顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた。(今二人が出会ったら……私も止められる自信がないわ)泰西の真意を探るため、姉の静香を頼ろうとしたが、彼女は彼とできるだけ関わりたくないようだ。ならば、一人で解決するほかないと瀬奈は悟った。しかし、アドバイスくらいは貰ってもいいだろう。「ねぇ、姉さん……いきなりおかしなことを聞くようだけど、兄さんは不倫しているのかしら?」「……アイツが不倫?そんなことしなさそうだけど」「やっぱそうだよね……」静香の意見は瀬奈と同じだった。「アイツのことだから……そうね、するとしたらかなり徹底しているはずよ。一緒に外を歩かないとか、別々でホテルに入るとかね」「兄さんがそんなことしてる姿なんて想像したくないけれど……」兄が隠れてコソコソ妻以外の女と会ってるところなんて、絶対に見たくない。静香も同じ気持ちだったのか、アハハッと笑った。「まぁ、父さんも母さんが亡くなってからはちょくちょく女の人と付き合ってたみたいだしね。年を取ったからとはいえ、ありえないことではないのかも」「あら、そうだったの?知らなかったわ」「でも結局、全員長続きしなかったそうよ。父さんのあの性格に嫌気が差してみんな逃げ出したんだと。そうなるのも当然よね」暁グループの社長として、地位も富も名声も全てを持ち合わせている父を振るとは。それら全てに価値を感じさせなくなるほど、父の性格がとんでもないということだろう。「ところで、湊斗とは上手くいっているの?」「ええ、何の問題もないわ……ただ、ちょっと愛が重すぎて困惑しちゃって」「何よ、贅沢な悩みね」そんなのは自分でもわかっていた。彼に相手にされなくて悩んでいた前と比べ
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-06 อ่านเพิ่มเติม