Semua Bab 二十年放置された妻、子供隠して離婚届にサイン後、元夫は狂おしく彼女を探す: Bab 31 - Bab 40

209 Bab

第31話

翌日の昼、真由子はいつも通り、近所を歩いていた。(夜になったらまた仕事へ行かないと……)夜の間は実母が子供の面倒を見てくれている。元夫の両親は当然頼れないし。彼女の味方はもはや母親だけだった。真由子は公園の傍を差し掛かった頃、近所の主婦たちが何やらひそひそと話をしていることに気が付いた。「ねぇ、暁さんに関する面白い噂を聞いたんだけど……」「面白い噂?」彼女は普段このような噂にあまり興味がなかった。しかし、相手が瀬奈となれば話は別だ。真由子はバレないようにそっと聞き耳を立てた。「――暁さんが離婚した理由って、前の旦那の不倫が原因らしいわよ」「……!」真由子は思わず足を止めた。衝撃で体が動かなかった。「それ本当なの?あんな美人でも旦那に不倫されるのねぇ……」「まぁ、神宮司家の社長ならいくらでも若くて綺麗な女が寄ってくるだろうし……暁さんって若く見えるけどもう三十代後半でしょう?その歳になるといくら綺麗でも、若い子には敵わないのよ」信じられなかった。瀬奈が旦那に不倫されていただなんて。(あの人が私と同じだなんて……そんなの信じられない)瀬奈は真由子が嫉妬するくらい綺麗な女性だった。みずぼらしい自分が不倫されたならまだしも。「でもさすがに養育費はもらっているんでしょう?神宮司家の社長なわけだし」「それがね……それすらももらってないんですって!」「えー嘘!?」真由子はさらなる衝撃を受けた。「私の知り合いが黒川区に住んでるんだけど……神宮司夫妻の仲の悪さは有名でね。夫は愛人を作って滅多に家に帰ってこなかったらしいわよ」「社長の奥さんってのも大変なのねぇ……」「帰ったらウチの夫に感謝しないとね」神宮司財閥の社長夫人。女性なら誰しもが喉から手が出るほど欲しがる地位だろう。真由子も最初にその話を聞いたときは、瀬奈を羨ましく思った。暁家の令嬢として生まれたというだけで、大財閥の社長の妻になれたのだから。だから気に入らなかった。彼女は元々貧乏家庭の出身で、大学も奨学金で通っていたからだ。瀬奈を見るたびに、瀬奈と自分の境遇を比べてしまうのだ。「それに加えて、愛人との間に子供までいるんですって。しかも五人も!」「何それ!私だったら耐えられないわ」真由子は胸のチクリとした痛みを感じた。彼女もかつて、夫に不倫されたという経験があったから
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-14
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第32話

「困ったわね……」瀬奈は自宅で一人、頭を悩ませていた。真由子が瀬奈が暁家の令嬢であることを広めたおかげで、今彼女は近隣住民たちから避けられていた。彼らが暁家の瀬奈を受け入れようとしないのはきっと、父親のせいだろう。暁グループには黒い噂がいくつかある。もちろん瀬奈はそのすべてに無関係だが、彼女も暁の人間である以上そのような目で見られるのは当然だった。(誠也さんも、私を避けているみたいだし……)これまで優しくしてくれた人たちが離れていくのは何だか寂しかった。以前と変わらずに接してくれているのは誠也の母親くらいだ。そして今、噂好きな主婦たちの話題は瀬奈の過去から里亜の出生へと移りかけている。瀬奈が暁家の令嬢であることがバレたところで別にかまわないが、里亜が湊斗の子供だと知られるのは困る。これからどうするべきか考えていたそのとき、家のインターホンが鳴った。玄関へ向かって扉を開けると、立っていたのは誠也だった。「…………誠也さん?どうしてここに?」「瀬奈さん、話があります」彼は珍しく真剣な顔で、瀬奈を見つめていた。「――俺を、利用してください」***瀬奈と誠也は場所を移し、近くにあった個室のお店で向かい合って座っていた。「誠也さん、さっきのはどういう意味ですか」「そのまんまの意味です、瀬奈さん。俺を利用してほしいんです」誠也はポツリポツリと語り始めた。「実は俺、前に静香さんの家へ行ったとき、たまたま皆川社長と静香さんの話を聞いてしまったんです」誠也は近所に住む静香とは長い付き合いだった。静香は彼の両親が経営する居酒屋をたびたび訪れており、特に明太子の玉子焼きを気に入っていた。『静香、今日あなたの妹さんに会ったわ。それにしてもまったく似てなくて驚いたよ』『よく言われるわ。暁グループの長女と次女は昔から正反対で有名よ』二人は誠也がいることに気付いていないようだった。『それにしても大変だったわね……あの神宮司湊斗がそんなひどい人だとは思いもしなかったわ』『私もよ……アイツのことは幼い頃から知ってるけど、何がきっかけであんな風になったのかしら……』”神宮司湊斗”誠也はその名前に聞き覚えがあった。以前ネットニュースで見た、神宮司財閥の社長と同姓同名だったからだ。そして暁グループの次女は、神宮司財閥社長と結婚したことで知られていた
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-15
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第33話

「本気で言っているんですか……?」「本気です」そう口にした誠也の目は真剣そのもので、瀬奈は冗談を言っているわけではないのだということをすぐに悟った。しかし、瀬奈はいくら娘の危機でも他人を犠牲にするつもりはなかった。「誠也さん、それはできません」「どうしてですか!?」断られると思っていなかったのか、誠也は思わず席から立ち上がった。「あなたにも……あなたのご家族にも迷惑をかけてしまうからです」「瀬奈さん……」瀬奈は誠也がとても優しい人であるということをよく知っていた。だからこそ、彼に迷惑をかけるわけにはいかなかった。これは瀬奈の問題であり、彼女がどうにかしなければならないことだった。他人を巻き込むわけにはいかない。瀬奈はそのような思いから、誠也の提案にキッパリ断りを入れた。しかし、誠也は退かなかった。「瀬奈さん、俺はあなたに初めて出会った瞬間のことを今でもよく覚えているんです」「誠也さん……?」誠也は瀬奈を見つめたまま、照れたように頬をほんのりと赤く染めた。「あなたの美しさ、優しさ、一人で子供を育てている強さに憧れを抱き……あなたのためなら何でもできると思いました」「……」誠也がたびたび彼女に向けるその視線が何を意味しているのか、瀬奈は今になってようやく気が付いた。「瀬奈さん、稲田町は小さな町ですから、噂が広まるのは一瞬です。里亜ちゃんのためにも、俺を利用するのが最も良い方法ではありませんか?」「……」誠也の言う通りだった。里亜のことを考えるなら、それが一番良い選択である。瀬奈は悩みに悩んだ末に、誠也の提案を受け入れた。***誠也との話を終えたあと、瀬奈は一人里亜の待つ家へ戻っていた。里亜を別の人との子供にするという選択肢は、これまでまったく頭になかったことだった。誠也の提案は瀬奈が愛する娘を守るためにはありがたかった。しかし、彼に迷惑をかけてしまうという罪悪感が無くなったわけではなかった。そのことを伝えると、誠也は明るく笑った。『瀬奈さん、俺のことは気にしないでください』『ですが……』『里亜ちゃんは俺に懐いてくれているし……最初出会ったときに言いましたよね?できる限りのことはすると』『誠也さん……』それから誠也は自身の両親に説明してくると言い、先に家に戻った。周囲の人々の目を誤魔化すためには、誠也の力が必要
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-15
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第34話

その日の夜。本邸で眠りについた湊斗はずいぶん昔の夢を見ていた。まだ彼と瀬奈の仲が良かった頃だ。三十年近く前だろうか。あのときの彼女の顔を、未だに覚えていたことに湊斗は驚いた。『湊斗!』振り返った瀬奈は、眩ゆいほどの笑顔を浮かべていた。そのような瀬奈を見るのは久しぶりだった。そういえばいつからか、瀬奈は笑わなくなった。いつから二人の仲がそういう風になったのかは思い出せない。――いや、違う。思い出せないのではなく、思い出したくなかっただけだ。二人の仲が壊れたきっかけは、今でもよく覚えている。――たしかにあの日、彼が瀬奈から距離を取ったことがきっかけだった。それから湊斗と瀬奈はただすれ違っていくだけの日々を送ることとなった。許嫁であったため結婚こそしたが、二人の仲は良くなるどころか、むしろ悪化していった。(夢の中でなら、お前は俺に笑いかけてくれるんだな……)湊斗の目の前には、大人になった瀬奈が立っていた。彼女は彼を見て、笑っていた。湊斗は成長した瀬奈の笑ったところを初めて見た。できることなら、ずっと寝ていたいくらいだった。とても幸せで、目を覚ましたくない。そう思うものの、終わりはすぐにやってきた。目の前が真っ暗になり、瀬奈の姿は見えなくなった。「……」湊斗はそこで目を覚ました。時刻は夜の三時だった。眠りについたのがたしか一時だから、二時間しか眠れなかったのか。瀬奈がいなくなってから、彼はずっとこのような日々を送っていた。(最近、ずっとまともに寝れていない……)これ以上はどうせ寝れないだろうと悟った彼は、本邸の庭に出た。空を見上げると、真っ黒な夜空に無数の星が輝いていた。「……まだアイツは見つからないのか」瀬奈が彼の手の届くところにいないせいか、彼は近頃気が気じゃなかった。しかし、この広い空の下のどこかに瀬奈はいるのだと思うと、急速に湊斗の気持ちは落ち着いていった。しかしそれでも、心に余裕が無いことに変わりはなかった。しばらく気の向くままに庭を歩いていると、突然背後から声をかけられた。「――湊斗!」彼は後ろを振り返った。「…………何故お前がここにいるんだ」いるはずのない人物の登場に、湊斗は思わず眉をひそめた。「湊斗に会いたくて、来ちゃったのよ。ここ最近ずっと私のところへ来ないんだから、寂しかったんだもん」それは湊斗の
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-16
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第35話

「み、湊斗……!大丈夫か……!?」「……問題ない」翌朝、目の下に大きなクマを作って出社した湊斗に、一馬が心配そうに声をかけた。「最近よく眠れてないようだな」「誰かさんのおかげでな、お前ももっとまともにアイツを探せ」「な、何のことを言っているのか……」一馬は気まずそうに目を逸らした。もうバレているような気もするが、最後まで貫き通さなければならない。「それと昨日、俺の家に不法侵入したやつがいるんだ。警備の者を変えておけ」「不法侵入だと!?それは大問題だ!すぐに対応しなければ!」一馬は大慌てで社長室を出て行った。残された湊斗は、仕事の手を止めて考え込んだ。しばらく瀬奈のことを考えていると、脳裏にある記憶がよぎった。「そういえば、あのときの子供……」五年ほど前だろうか。瀬奈が湊斗の前に生まれたばかりの赤子を連れてきたことがあった。瀬奈は湊斗の子だと言い放ったが、当然そんなこと信じられるはずがない。湊斗と瀬奈はこれまで一度も関係を持ったことが無かったから。だとしたら、瀬奈は湊斗のほかに男がいて、その男との間に子を作ったということになる。彼は思わず笑みをこぼした。「アイツが他の男との間に子供を作るとはな……俺への当てつけか?」そしてそのときちょうど湊斗は海外出張で日本にいなかった。おそらく瀬奈はその間に出産したのだろう。ふと、あのときの赤子のことが気にかかった。当時は顔を見ることさえ拒んでいたというのに、何とも皮肉なものだ。「あの子供はこの五年間、一体どこで暮らしていたんだろうか……」湊斗はほとんど家に帰らなかったため、特にその子のことを気にすることはなかった。「もし、アイツが今、その子供の父親と一緒にいるとしたら……」想像するだけで腸が煮えくり返る思いだった。机の上に置かれた彼の手に力が入る。どんな手を使ってでも瀬奈を見つけ出さなければならない。このまま彼女だけが完璧な幸せを手にするのだけは、絶対に許せなかった。「一馬!!!」「社長!」一馬が慌てて社長室へ入ってきた。彼がこのように大声を上げるのは、緊急の用があるときだけだった。湊斗の前に立った一馬は、一体どんな緊急事態なのかと身構えた。「瀬奈に子供がいる」「そうか、瀬奈ちゃんに子供がいるのかそれはいいことだな……って、ええ!?」一馬は驚きで、思わず声を上げた。「そ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-17
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第36話

「本当にありがとうございます……誠也さん」「いえいえ、里亜ちゃんの幸せのためなら俺は何だってしますよ」一週間後、瀬奈は里亜、そして誠也と三人で近所を歩いていた。「あら、こんにちは。今日はご家族揃っているんですね」「……はい」通りすがりの近隣住民が、親しげに瀬奈に声をかけた。「仲がいいんですね、微笑ましいです」「ありがとうございます」誠也がニッコリと笑って応えた。仲睦まじく三人で歩いているその姿は、さぞ完璧な家族のように見えることだろう。里亜の父親は元夫ではなく、誠也である。そのような噂が既に近所では広まっていた。瀬奈はそのおかげで、里亜の湊斗が父親だということを隠すことができた。彼には感謝してもしきれない。「このあと、どこかへ行こうか」「ええ、そうね」二人は親しい仲を演じるために、人前では敬語を外すことを事前に決めていた。そのほうが夫婦らしさも出るだろうし。さすがに同居まではしなかったが、これくらいすれば十分だろう。「どこに行きましょうか」「そうだな……この町は何もないからな……隣の羽根市にでも行ってみようか」「それは良いわね、里亜は初めてだし」「行きたい!」行き先を決めた瀬奈たちは、誠也の車に乗り込んだ。誠也が運転席、瀬奈が助手席に座り、後部座席には興奮気味の里亜が座った。「乗せてもらっちゃってよかったんですか?全然、私が車出しますよ」「気にしないでください。運転するの好きなので」「まぁ……何から何までありがとうございます」誠也が車を発進させた。ここから羽根市まで、二十分ほどで到着する。瀬奈は運転中の誠也を横目でチラチラと見ていた。運転中の横顔は美しく、見惚れてしまいそうになった。(私……やっぱりカッコイイ人に弱いんだなぁ……)瀬奈の初恋の相手である湊斗は、周囲から奇跡の美貌と言われるほどに美しい人だった。瀬奈は幼い頃、そんな彼の美しさに一目惚れしてしまったのだ。そして誠也もまた、三十代後半には見えないほど若々しかった。湊斗ほどではないが、顔立ちも整っている。稲田町では、誠也は主婦たちのいわゆる”推しで、アイドルのような存在なのだという。瀬奈はこれまで、湊斗以外の男性にはあまり関心が無かった。ここまで近しい間柄になった異性は誠也が初めてかもしれない。あまりにも見つめすぎていたのか、信号待ちで彼が振り向い
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-18
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第37話

誠也は近くのショッピングモールの駐車場に車をとめ、三人で車からおりた。羽根市は、湾に面する観光都市だ。観光の代表的な例としてリゾート施設やテーマパーク、温泉街などがある。太陽の光を受けて輝く海を見た里亜がキャッキャッとはしゃいだ。「里亜、海がとっても綺麗ね!」「キラキラしてる!」「こらこら、走ったら危ないわよ」瀬奈が走る里亜を慌てて追いかけた。木の柵の傍まで来ると、心地よい暖かい風が吹き抜けた。もう五月だった。「もう夏が近付いてるのね……」気付けば神宮司家を出てから一ヵ月が経過していた。瀬奈にとっては長いようで短く、あっという間だった。(みんな、元気にしているかな……)瀬奈の脳裏に一馬や、パート先の従業員さんたちの顔が浮かんだ。たった一か月前のことだというのに、何だかとても懐かしい気持ちになった。一馬たちは元気にやっているだろうか。そして――(湊斗は……何をしているのかしら……)瀬奈は未だに神宮司社長の再婚のニュースが報じられていないことに疑問を抱いていた。瀬奈がいなくなったのだから、とっくに沙織と再婚していてもおかしくないはずなのに。(離婚してすぐ再婚するのは外聞が悪いから……?湊斗はそういうこと気にするタイプだったのね)その気遣いをほんの僅かでも自分に向けてくれていたとしたら。彼女はあんな風に惨めな思いをすることもなかったはずだ。「瀬奈さん、とっても良い景色ですね」「誠也さん……!」気付かぬうちに誠也がすぐ隣まで来ていた。「里亜ちゃん、すっごくはしゃいでて可愛いですね」誠也の視線の先には、いつの間にか下へ降りた里亜が浜辺で遊んでいた。砂に絵を描いている里亜を見た瀬奈がクスリと笑った。「ええ、そうですね。これまであまりお出かけをしなかったものですから……」「そうだったんですね」瀬奈と誠也は、しばらく楽しそうな里亜を眺めていた。そんな中、瀬奈が消え入りそうな声で呟いた。「私は……母親失格でしょうか……」「瀬奈さん……?」突然何を言い出すのか。誠也は驚いて瀬奈のほうを見た。「時々不安になるんです……自分が母親としてうまくやれているのか……」「……」誠也は瀬奈の話をただじっと聞いていた。瀬奈は周囲には明るく振舞っていたが、心の中では悩みは尽きなかった。周囲にいる子たちには当たり前に父親がいるわけで。一方で、
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
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第38話

「すごい人ですね……」「休日だから混んでいるようです……家族連ればかりですね」その後、海を一通り散歩した三人は、近くにある屋内テーマパークへ来ていた。「ママ、里亜あれ乗りたい!」「あれって……」里亜が指さしたのは、屋内型のコースターだった。(ジェットコースターみたいなやつよね?酔わないかな……)瀬奈は昔からスリルを伴う乗り物にはめっぽう弱い。子供の頃に一度乗って動けなくなってからは、そのような乗り物を避けて生きてきた。しかし、今回ばかりは里亜の望みだった。断るというのも何だか気が引ける。だが、乗ったあと自分がどうなるかわからなかった。そんな瀬奈の様子に気付いたのか、誠也が機転を利かせた。「里亜ちゃん、お兄さんと一緒に行こう」「本当?やったぁ!」喜ぶ里亜の頭を、誠也は優しく撫でた。瀬奈は誠也に近寄り、小声で囁いた。「誠也さん……ありがとうございます……」「いえいえ、瀬奈さんは近くで待っていてください」「はい、里亜をよろしくお願いします」去って行く二人の後ろ姿を眺めながら、瀬奈はほっと一息ついた。(誠也さんは本当に優しい人ね……)――もし、彼が里亜の本当の父親だったら。そんなことを考えていた瀬奈の脳裏に、湊斗の顔がよぎった。「……」瀬奈は一ヵ月経った今でも、たびたび湊斗のことを思い出していた。そんな自分に嫌気が差しながらも、彼を完全に忘れることができない。時間がすべてを忘れさせてくれると信じていたが、二十年間の想いはそう簡単には断ち切れないようだ。(……こんなときにアイツのこと考えるのやめよ。今日の夢に出てきそうだわ)瀬奈が頭から湊斗をかき消そうとしていたそのとき、突然声をかけられた。「――あれ、もしかして、瀬奈ちゃんですか?」「……?」驚いて振り返ると、そこには見知った顔の人物がいた。「あなたは……………中田さんの奥さんの千佳子さん……!」「わぁ、私のことを覚えてくれていたんですね。嬉しい」瀬奈が偶然出会ったのは、湊斗の秘書・中田一馬の妻――中田千佳子(なかたちかこ)だった。「覚えているだなんて……当然ではありませんか」瀬奈は神宮司家にいた頃、何かと中田夫妻にはよくしてもらっていた。彼の両親が亡くなったあと、一人になった瀬奈を最も気にかけていたのがまさに一馬の妻・千佳子だったのだ。千佳子は神宮司家での
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-20
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第39話

「瀬奈さん、お待たせしました」「ママー!」「里亜、誠也さん。おかえりなさい」千佳子と別れてから十数分後、里亜と誠也が瀬奈の元へ戻ってきた。はしゃぐ里亜に対し、誠也は少しだけ顔が青くなっている。(誠也さん……本当は絶叫苦手だったかしら……)どうやら無理をさせてしまったようだ。瀬奈は何だか申し訳ない気持ちになった。「誠也さん、ちょっと休憩しましょうか」「そ、そうですね……ぜひそうしたいです……」誠也は頷き、瀬奈たちは近くにあった休憩用の椅子に座ることにした。「何か飲み物でも買ってきますよ」「いえ、気にしないでください。そういうことは男の俺が……」今にも立ち上がろうとする誠也を、瀬奈が制した。「誠也さん!あなたはそこで休んでいてください!」「わ、わかりました……」瀬奈の圧に負けたのか、誠也は渋々応じた。大人しくなった彼に、瀬奈がクスリと微笑んだ。「それでいいんです、ちょっとくらい私にやらせてください」「ありがとうございます、瀬奈さん」「ママ!クレープ買ってきて!」「はいはい、買ってくるからいい子にして待ってなさい」瀬奈は誠也と里亜を残し、食べ物を買うため近くの売店へと向かった。***「一体どこで落としたのかな……」ちょうどその頃、千佳子は施設内に落とし物をしたことに気付き、ゲートを出る前に慌てて来た道を戻っていた。「何とかセーフね……出る前に気付けてよかったわ……」しばらく歩くと、千佳子はついさっき瀬奈と話していた場所までやってきた。足元に視線を彷徨わせると、キラリと光る小さな物体が彼女の目に入った。「あった!あったわ!」千佳子はその物体を拾い上げて歓声を上げた。彼女が落としたのは、誕生日に夫・一馬から貰った指輪だった。(大事なものだったから、無くさないでよかったわ)千佳子は指輪を大事そうにカバンに閉まった。これからは二度と落とさないようにしないといけない。「それにしても、こんなところで瀬奈ちゃんに会うなんて」再び帰路についた千佳子は、さっき出会った瀬奈のことを思い浮かべた。久しぶりに見た瀬奈は、前とどこか違う雰囲気をまとっていた。(私が前に会ったときはとても暗い顔をしていたのに……)今日の瀬奈は何だか人が変わったかのように明るくなっていた。千佳子はそんな彼女を見て安心した。ここ数年は子育てが大変でな
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-21
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第40話

「すっごく楽しかった!」「誠也お兄さんに感謝しないとね」「僕は特にこれといったことはしてませんよ」夕方になり、ひとしきり遊んだ瀬奈たち三人は屋内型テーマパークを出た。(里亜が喜んでくれたようでよかったわ)瀬奈と誠也は、間に里亜を挟んで夕日に照らされた一本道を歩いていた。ふと、夕焼けを眺めていた誠也が呟いた。「もう夜が近付いているんですね、今日は何だか一日が過ぎるのがとても早く感じます」「それくらい楽しかったってことですよ。楽しい時間はあっという間ですから」「それもそうですね」瀬奈は歩きながら、今日一日の出来事を振り返った。里亜と誠也と三人で綺麗な海を見たり、テーマパークのアトラクションに乗ったり。本当に、とても楽しい一日だった。瀬奈の口元に、自然と笑みが浮かんだ。「……」隣を歩いていた誠也は、夕焼けに照らされる瀬奈に見惚れていた。彼女はいつ見ても美しかったが、やっぱり笑っているときが一番綺麗だった。実際に今日も、瀬奈は通りすがりの男たちの視線を集めていた。自分はとんでもない人に恋をしてしまったのだなと、誠也は改めて実感した。そのとき、二人の間を歩いていた里亜が目をこすりながら呟いた。「ママ……里亜、何だか眠たい……」「あらあら……」どうやら遊び疲れて眠くなってしまったようだ。普段これほど長い時間外で遊ぶことはなかったから、当然かもしれない。瀬奈は立ち止まった里亜を抱き上げようとすると、誠也が前に出た。「瀬奈さん、里亜ちゃんは俺がおぶっていきますよ」「ありがとうございます」誠也は瀬奈に抱き上げられた里亜を背中に乗せた。「辛くなったらいつでも言ってくださいね。すぐに代わりますから」「アハハ、そうなったら伝えますね」誠也の背に抱えられた里亜は深い眠りにつき、ここからは二人だけの時間となった。先に口を開いたのは瀬奈だった。「それにしても、今日は本当に楽しかったですね」「ええ、最近はずっと仕事ばかりしていたので……良い気分転換になりました」「それはよかったです」瀬奈が誠也に向かって微笑むと、彼も笑い返した。傍から見ると、二人は仲の良い夫婦のように見えた。「明日からの仕事も頑張れそうです」「料理のお勉強頑張ってくださいね、近いうちに私も行かせていただきます」「ぜひぜひ!」誠也は今、居酒屋を経営している両親の跡を
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-22
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