週末、仕事が休みだった瀬奈は里亜を連れて近くにあるショッピングモールへと出かけていた。瀬奈たちの暮らす稲田町は、黒川区に比べたらかなり田舎で、遊び場所も少なかった。しかし、瀬奈と里亜はこの町をすぐに好きになった。(ここは良い人たちばっかりだわ……よそ者の私にこんなにも優しくしてくれるんだもの)やはり黒川区から離れて正解だった、と瀬奈は心から思った。湊斗の愛人たちから里亜を隠すにはちょうどいい場所だった。「ママ、アイス食べたい!」「あら、とっても美味しそうね。私も食べたいし、行きましょうか」瀬奈は里亜を連れて、施設内にあるチェーンのアイス屋へと向かった。二人で一つ、コーンでダブルのアイスクリームを注文した。店員からアイスを受け取った瀬奈は、さっそくスプーンでストロベリーのアイスを口に運んだ。(あら、美味しい)瀬奈はチェーン店のアイスを食べたことがなかった。それどころか、こうやって食べ歩きすらほとんどしたことがない。彼女の父親はとても厳しい人だったからだ。瀬奈と静香は幼い頃に母親を亡くし、父親に育てられた。二人の父は、彼女たちのあらゆる行動に口を挟んだ。例えば学校帰りの寄り道は禁止だとか、挙げたらキリがない。それらは娘たちを思って言っているわけではない。父は何よりも、暁家の名誉を重んじる人だった。『暁家の人間が、そんな低俗な人間と付き合うな』静香が暁家と縁を切ることを決意した父親の言葉だった。ちょうどその場には、瀬奈も居合わせていた。そして、もう十年以上連絡を取っていない二つ上の兄もその場にいた。(兄さん、元気にしてるかな……)暁家の長男は静香の弟であり、瀬奈の兄だ。もうずっと会っていないが、今は父の会社で役員として働いていると聞いた。兄は静香や瀬奈と違い、父親からかなり可愛がられていた。理由は明白だ。彼は明らかに二人より優秀だったし、考え方も父親とそっくりだった。そのせいか気の強い姉の静香とはいつも衝突しており、瀬奈はそんな二人の間でいつも板挟みとなっていた。(懐かしいなぁ……)スポーツ万能なうえに、社交的で友人も多い長女。何事においても常に一位を取る、完璧な後継者の長男。気が弱く、特に目立ったところのない次女。そんな瀬奈に、何か暁家の役に立てと父が取り付けたのが湊斗との婚約だった。今思えば父親には、最初から最後まで振り
Terakhir Diperbarui : 2026-03-07 Baca selengkapnya