その頃、湊斗は沙織の家のベッドで目を覚ました。「……」横では沙織がすやすやと吐息を立てて眠っていた。湊斗は彼女を起こさないようにそっと布団から出た。ベッド脇に置いてあったスマートフォンを開くと、関係を持った女からのメッセージが届いていた。『湊斗くん先日はありがとうございました。湊斗くんと一夜を共にできてすごく幸せでした。機会があればまた会いたいです』「……」この黒川区で、彼の愛人の座を狙う者は多い。湊斗は”また会いたい”という一文に、思わず笑いそうになった。彼は知っていた。彼女たちが自分を愛しているわけではないということを。今いる愛人たちも財産や地位が目当てであり、彼のことを心から愛している者などいない。湊斗はメッセージに返事をすることなく、着替えを始めた。神宮司財閥の社長である彼は多忙を極めている。今日もこのあとすぐに出社しなければならなかった。瀬奈は湊斗がほとんどの時間を愛人たちと過ごしていると思っていたが、実際はそうではなかった。同棲している沙織ですら、湊斗の仕事人間っぷりに不満をこぼしていたほどだ。今だって、新しく若い愛人に夢中になっているという噂が広がっていたが、ただ相手がそうやって周囲に言いふらしていただけだった。「……湊斗?」「……起こしたか」音で目が覚めたのか、沙織がベッドから起き上がった。「……もう行くのね」「ああ」沙織はスーツに着替えた湊斗に抱き着いた。「……どうしたんだ?急に」「何でもないの……ただちょっとこうしていたいだけ」湊斗は沙織を抱きしめ返すこともなければ、拒絶することもなくただじっとしていた。相手が瀬奈であれば突き飛ばしていただろう。「ねぇ、湊斗……」「何だ?」沙織は顔を上げて湊斗を見つめた。「――私を、あなたの妻にしてほしいの……」「……」湊斗は何も言わなかった。ただ表情を変えずに沙織を見つめているだけ。「……俺はもう行くよ」「……湊斗」湊斗は沙織を引きはがすと、そのまま部屋を出て行った。残された沙織は、悔しさで唇を噛んだ。湊斗は瀬奈との夫婦関係がとっくに破綻しているにもかかわらず、沙織を始めとした愛人たちから妻にしてほしいと言われるのを何故か嫌っていた。沙織はずっとそのことが理解できなかった。瀬奈ととっとと離婚すればいいものを、何故そこまで彼女を妻の座に置いている
Terakhir Diperbarui : 2026-03-01 Baca selengkapnya