その後、三葉は女の子を出産した。女の子だから、大島の生まれ変わりではないだろうと、三葉と倫典は笑いながら過ごしていた。念の為倉田や美守にも見てもらったがそうではないと言われてやはり違うわよね、と。あの時のことを思い出すこともあったが、それはもう過去のものとなり、三葉と倫典は穏やかな生活を送っていた。もちろん忘れたわけではないのは当たり前である。 スケキヨは大島が抜けた後、奇跡的に体調を取り戻しその後10年生きた。他の雌猫との間に子供ができた。 まさか、と思った三葉たちは子猫たちもみてもらうがそうではないと言われ笑った。「流石にもう猫はないんだろうなぁ、大島さん」「かもね……」 また三葉が抱えていた借金は、轢き逃げ犯からの慰謝料や和解金で賄われ、足りない分は倫典が補填した。 倫典は親戚のドラッグストアの社長となり、順調に経営を続けていた。三葉は、家族との時間を大切にしながら、子供、猫と共に心穏やかに過ごしていた。 そして、16年後。 由花は、剣道を始めていた。容姿は三葉に似ていて、おっとりした性格はどこか倫典に似ている。三葉たちは、穏やかに東京での生活を楽しんでいた。「倉田さんと今度ゴルフ行くから……ごめんね、週末」「いいわよ、大事なお友達じゃない。いってらっしゃい」 二人は仲睦まじい夫婦になった。三葉は大島と過ごした時と少し違うがその時とは完全に気持ちを切り替えている。 ある日、由花が家に同じ剣道部の修哉を招くことを決めた。修哉は少し背が高く、礼儀正しく、どこか控えめな印象を与える少年だった。 三葉と倫典は少し驚きながらも、温かく迎え入れた。「初めまして、高橋修哉です」 彼は静かに挨拶をした。「ようこそ、修哉くん」倫典は微笑みながら、修哉をリビングに案内した。「すいません、お手洗いをお借りしても」「うん、あっちですよ。台所の奥」 修哉が三葉のもとにやってきた。台所に立っていた三葉が修哉の気配を感じ、振り向く。手土産を持っていた。 三葉はしっかりした子だと感心する。「ありがとう、わざわざ。あ……お手洗いはあちらよ」 と三葉が指差すと、修哉はしばらく黙って彼女を見つめ、ゆっくりと口を開いた。「……三葉」 彼はそう言うと、彼女に向かって微笑んだ。 その微笑みには、どこか懐かしさが感じられた。三葉はその笑顔に見
最終更新日 : 2026-04-11 続きを読む