ピサロ侯爵は自分の気持ちを落ち着かせるため、フゥ~と深呼吸をした。 ユリウスは気持ちの整え方が親子で似ている……と、冷静に観察してしまう。「父上、私は大丈夫です。ご心配なく」「お前はいつも……、本当に……」 ピサロ侯爵はあっけらかんとしているビアンカを見て、気が抜けた。「話を戻しましょう。ダイア、五百年前に女神マリアは何を?」 ユリウスに促されて、主神ダイアは女神マリアから聞いた話を語り始める。 女神マリアは主神ダイアが神の力『カリスマ』を子孫に与え続けることを懸念していた。『カリスマ』は時に不幸を呼ぶ。明らかに国を治める能力のない者が後継者に選ばれて、身に余るほどの力を得てしまうのは危険なことだからだ。 それでもずっと見守るだけにし、口を挟まなかったのはイリィ大陸が概ね平和で豊かだったからである。―――しかし、ついにその時がやって来た……。 五百年前に現れた皇帝カヴァールは皇帝となるべき器を持ち合わせていなかった。 彼は即位と同時に多くの妃を高位貴族から娶り『紫の瞳を持つ皇子だけを産め。それ以外は皇族として認めない』と、彼女たちに命令したのである。 幸か不幸か、四人の妃がそれぞれ一人ずつ紫の瞳を持つ皇子を産んだ。 つぎに皇帝カヴァ―ルは、四人の妃たちの目の前に『後継者に選ばれた者の母親を皇后にする』という餌を吊り下げた。―――彼は四人の皇子たちをゲームの駒にして、妃たちを競わせたのである。 その結果、イリィ帝国の貴族は四つの派閥に分裂した。自分の支持する皇子と妃に力をつけるため、裏金を不当に集めて支援者を増やし、敵陣を貶めようとスパイを放って、足を引っ張り合ったのである。 政治は腐敗の一途を辿り、経済は混乱した。民は重い税金を払うだけで精いっぱいになり、食べるものを買う金もなく、やせ細っていく。―――皇家や貴族への不満に対する暴動を民が始めるまで、左程、時間は掛からなかった。 愚かな皇帝カヴァ―ルのせいで、イリィ帝国は急速に衰退していく。 気
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