All Chapters of 大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました): Chapter 161 - Chapter 170

171 Chapters

色々決着!!結婚7日目・同じ顔をしている者同士 2

 ピサロ侯爵は自分の気持ちを落ち着かせるため、フゥ~と深呼吸をした。 ユリウスは気持ちの整え方が親子で似ている……と、冷静に観察してしまう。「父上、私は大丈夫です。ご心配なく」「お前はいつも……、本当に……」 ピサロ侯爵はあっけらかんとしているビアンカを見て、気が抜けた。「話を戻しましょう。ダイア、五百年前に女神マリアは何を?」 ユリウスに促されて、主神ダイアは女神マリアから聞いた話を語り始める。 女神マリアは主神ダイアが神の力『カリスマ』を子孫に与え続けることを懸念していた。『カリスマ』は時に不幸を呼ぶ。明らかに国を治める能力のない者が後継者に選ばれて、身に余るほどの力を得てしまうのは危険なことだからだ。 それでもずっと見守るだけにし、口を挟まなかったのはイリィ大陸が概ね平和で豊かだったからである。―――しかし、ついにその時がやって来た……。 五百年前に現れた皇帝カヴァールは皇帝となるべき器を持ち合わせていなかった。 彼は即位と同時に多くの妃を高位貴族から娶り『紫の瞳を持つ皇子だけを産め。それ以外は皇族として認めない』と、彼女たちに命令したのである。 幸か不幸か、四人の妃がそれぞれ一人ずつ紫の瞳を持つ皇子を産んだ。 つぎに皇帝カヴァ―ルは、四人の妃たちの目の前に『後継者に選ばれた者の母親を皇后にする』という餌を吊り下げた。―――彼は四人の皇子たちをゲームの駒にして、妃たちを競わせたのである。 その結果、イリィ帝国の貴族は四つの派閥に分裂した。自分の支持する皇子と妃に力をつけるため、裏金を不当に集めて支援者を増やし、敵陣を貶めようとスパイを放って、足を引っ張り合ったのである。 政治は腐敗の一途を辿り、経済は混乱した。民は重い税金を払うだけで精いっぱいになり、食べるものを買う金もなく、やせ細っていく。―――皇家や貴族への不満に対する暴動を民が始めるまで、左程、時間は掛からなかった。 愚かな皇帝カヴァ―ルのせいで、イリィ帝国は急速に衰退していく。 気
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色々決着!!結婚7日目・同じ顔をしている者同士 3

「主神ダイア、何度も言いますが、私は神の力を必要としていません」 ビアンカは改めて、断りを入れる。「しかし、このままではターキッシュ帝国が……、あっ!」 ここで主神ダイアは両手で口を塞いだ。 人の世に関することを神が口にするのはタブーとされているからだ。「ダイア、私達の世界に関与するつもりですか?」 ユリウスは彼の失言を追求した。「すまない。本来、神は人の世に手を出してはならないというのに……。ただ、ビアンカを狙っていると知ってしまったら……」「それは私があなたの娘に似ているからですか?」 ビアンカはつい口を滑らせてしまう。―――今まで、夢の中で見たことは不確かな情報だから……と、口に出すことは無かったのだが、本当に……、つい、ポロッと……、口から出てしまったのである。「そうだ。初めて会った時、あまりにもマイアに似ていて、つい隠れてしまった」(隠れた? ああ、あの時か……) ビアンカは初めて辺境伯城の前に広がる麦畑から、異次元の神殿に行った時のことを思い出す。(ユリウスが半笑いで柱の影に呼びかけて……、主神がここに女性が来るのは久々で~とか言い訳をして出て来た時のことだな) 娘が現れたと思って驚いた主神ダイアの気持ちも分からなくはない。ただ、ビアンカは主神にどうしても言っておきたいことがあった。「確かに私は主神の娘に似ているかも知れません。ですが、私はあなたの娘ではありませんし、マイア嬢の生まれ変わりでもないです。度を越えた特別扱いはしないで下さい」「ああ、ビアンカはビアンカだ……。それでいい」 主神ダイアは両腕を組んで、大きく頷く。「では、これを持って、神の力の件は終わりにしましょう。今後も人間は人間同士で新たな時代を作っていきますから、神様たちはくれぐれも見守るだけにしておいて下さい」 ビアンカは主神ダイアにクギを刺す。「分かった約束する。それから、魔塔主とビアンカだけではなく、私と似ている父上も、いつでも神殿に訪れるがいい。
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????結婚14日目・王妃の贈り物

 絹のような触り心地の銀髪を優しく撫でて、その後は車窓を流れる景色を見つめていた……。 ビアンカは今、ユリウスと馬車に乗っている。(峡谷からだいぶん下って来たな。海沿いの街道に入るには、もう少し掛かるだろうけど……) 視線を車内へ戻してみると、向かい側の席に散乱している書類が目に入る。―――ちなみに、その書類の持ち主は彼女の膝の上で爆睡中だ。(ユリウス、当分、起きないだろうな~~~) あの日、宰相が預かって来た王妃の手紙には『あなた達にハネムーンを用意したから楽しんで来て~』という旨が記されていた。 内容が内容なだけに、ビアンカはその場でユリウスに王妃の手紙を見せたのだが……。『―――出発は一週間後よ! 楽しみにしておいてね!!』と、軽い口調で締め括られた手紙を見て、ユリウスは愕然としてしまう。 なぜなら、彼はリシュナ領の業務、魔塔の業務、ターキッシュ帝国の面倒事を抱えていて手一杯だったからだ。 彼はすぐに日付を先延ばしにして欲しいと王妃へ打診した。 ところが『ハネムーンは今、行かないとダメよ!! それにポリナン公国の大公一族があなたたちの訪問を心待ちにしているの!!』と、あっさり却下されてしまう。 スケジュールの変更で頭を悩ませるユリウスの隣で、ビアンカは『どうしてハネムーン先がポリナン公国なのだろう』と考えた。 真っ先に思い浮かんだのは公子夫妻や魔法使いアントンの姿だ。 ビアンカのファンを公言する夫人と妻に優し過ぎる公子、そして、人を連れ去るのが好きな可愛い魔法使い……。―――ん~、彼らはハネムーンとは関係なさそうだ。 他にポリナン公国の知り合いは居なかったかな~と考えていると……、突然、閃いた!! 王妃がポリナン公国の前大公の弟の娘だったということを。 間違いなくこれが理由だろう。 また、王妃の実家があるということは、彼女の親族もそこに住んでいるということだ。ここで、あることを思いついたビアンカは、ユリウスにお願いごとをした。『ポリナン公国へ行ったら、ユリウスの御爺様と御婆様に会いたいです!』 期待に満ちた目で彼を見つめるビアンカに対して、ユリウスはクールな表情でこう答えたのである。『―――ビアンカ、私はポリナン公国の祖父母と会ったことがありません。それに相手は私のことを知らないと思います』『えっ、どうして?』『
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????結婚14日目・エピローグ(最終話)

 先日、ユリウスは言った。『タタラ工房で作ってもらった新しい武器にお好きな効果を付与しますよ』と。 ビアンカは何を付与すべきか、じっくりと考えたかった。だから、返事を少し待ってもらっていたのである。「はい、決めました」「では、聞かせて下さい」「『眠り』の効果を付けて下さい」「『眠り』ですか?」 首を傾げる、ユリウス これまで、武器に付与した効果といえば、攻撃力の上昇や体力の回復など、武器使用者のためになるものばかりだったからだ。「はい、大斧でわずかに触れて相手を眠らせられるのなら、命も奪わず、ケガも最小限で済みます」 ビアンカから『眠り』の効果を選んだ理由を聞き、ユリウスは目を見張る。―――最強の女戦士は誰よりも命を尊ぶのか……と。「眠らせて、命を守る……。素晴らしいアイデアだと思います。では、早速、大斧に『眠り』の効果を付与しましょう」 ユリウスは大斧の柄を握り、ブツブツブツと小声で呪文を詠唱する。(こうして欲しいと言ったことを、すぐに実現してしまう……、やはり、ユリウスは凄い) 宙に小さな魔法陣が浮かび上がった。そして、その小さな魔法陣は大斧の中へ、スゥ~と吸い込まれていく。 魔法使いが大好きなビアンカは彼の手際の良さと計り知れない能力に惚れ惚れしてしまう。「完了しました。どうします?  試し斬りをするなら、Xを呼びますが……」「X、まさかの試し斬り要員!?」「ええ、それくらい喜んでするでしょう」 ニヤリと悪そうな微笑みを浮かべるユリウス。「喜んで……?」(そういえば、ユリウスはXにどんな罰を与えたんだ? ん~、聞きたいような……、聞きたくないような……) 王国軍魔法師団の諜報員Xは先日、領都バリードで目立つ行動をしてユリウスを怒らせた。 その結果、彼には厳しい罰が与えられたらしい。ただ、ビアンカは罰の内容までは知らない。「では、次の休憩の時に呼びましょう」「ソウデスネ(X、ガンバレ……)」 ユリウスは向かい側の席に散らばっている書類に手を伸ばす。「ユリウス、仕事は大丈夫だったのですか?  ここのところ、かなり無理をしていたでしょう」 ハネムーンの出発ギリギリまで、ユリウスは連日徹夜で仕事を片付けていた。 そして、今朝、ようやくサジェやモルテに留守を任せられる状態になったのだという。「一応、区切りの
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番外編 立役者・アデリーナ 1

―――これは半年ほど前の出来事である。「母上……、いったい、どうしたのですか!?」 ノックの音で目覚めたビアンカが、急いで私室のドアを開くと、おんぼろの国軍官舎の廊下にド派手な出で立ちの貴婦人がひとり立っていた。(いやいやいや、場違い感が半端ない!! 早朝だというのに、バッチリメイクの上、羽飾り付きの帽子まで被っている……)―――貴婦人の正体はビアンカの母、アデリーナである。「ビ~ちゃん、もう、細かなことは気にしなくていいの!! とりあえず、部屋の中に入れて頂戴!!」 オホホホ~と笑顔で押して、彼女の部屋へ侵入しようとするアデリーナ。 そして、若干引き気味のビアンカ……。(いや、気にするだろ。面と向かって会うのは二年ぶりだぞ!? それにどうやってここまで侵入したんだ? もしかして、父上の力を借りたのか? それ、職権乱用だぞ!) 意味不明な状況だったが、廊下で騒ぐわけにもいかず、ビアンカはアデリーナを部屋へ入れた。 国軍の官舎は階級によって広さや調度品が違う。 ビアンカの私室は指揮官を務めているということもあって、一般の兵士よりも広く、少しだけ質の良いベッドと小さめのソファーセット、そして、上等とは言えない机と本棚がある。 ただ専用の洗面所はあるものの、洗面台とトイレのみで風呂はついていない。 入浴する時はひとつ下の階にある女性兵士専用シャワールームへ行かなければならないのだ。「ビ~ちゃんのお部屋は……、まさか、これだけなの?」 アデリーナは信じられないという表情で室内をウロウロしている。(母上、遠慮も何もないな……) ピサロ侯爵夫人こと、アデリーナ・セーラ・ピサロの生家はローマリア王国を支える四代公爵家の一つであるフォルトナ―ゼ公爵家だ。 四代公爵家というのは、ジョバンヌ公爵家、カナック公爵家、ポーリア公爵家、そして、フォルトナ―ゼ公爵家の
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番外編 立役者・アデリーナ 2

(突然、現れておいて『狭い!』と文句を言われても、私にはどうにも出来ないぞ!? しかし、まぁ、部屋は片付けておいて良かった。元々、荷物は少ない方だが、アポなしというのは、流石に焦るぞ!)「―――で、ビ~ちゃん、その恰好はどういうことなの?」 ビアンカは今、真っ裸に薄手のガウンを羽織って、腰ひもを軽く結んでいるだけの状態だ。屈んだりしたら、胸がポロリとこぼれてしまいそうである。「あ~、寝る時はいつも何も着ていないので……」(これでも慌ててガウンを羽織ったんだ。褒めてくれ)「あり得ないわ……」 ビアンカの回答を聞いて、アデリーナは絶句した。「急な呼び出しも多いので、いつ如何なる時も最短で軍服に着替えられるようにしておきたいんです」「―――それなら、最初から軍服を着て寝たらいいじゃないの」「おお~!!」(それだ!! 母上、ナイスアイディア!!)「感心するところじゃないわよ! 冗談で言ったの!! 本気にしないで頂戴!!」 アデリーナはビシッと音を立てて扇を畳み、先端をビアンカの方へ向けた。(あ~、これは反論したら面倒になるやつだな……)「あ、はい」「ところで、ビーちゃん、今日はお休みなのでしょう? 一緒に買い物に行くわよ」「え、なぜ?」(母上と買い物に行ったことなど、過去に一度も無い気がするのだが……、というか、いつもは家に商人を呼んでいるじゃないか! どうして、突然、一緒に出かけるなんて言い出すんだ!?) ビアンカはアデリーナをジト目でしげしげとみつめる。 何か裏があるのではないかという疑いを込めて……。「買い物に行くのに理由なんて無いわ!! 早く用意しなさい!!」 アデリーナは勢いで押し切った。口で勝負しても勝てる気がしないビアンカはやむなく了承する。「―――分かりました」
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番外編・立役者・ルイーズ 1

「今回、ルイーズとビアンカはこの部屋を使ってくれ」 国軍第二部隊の副隊長ルパートは二人に向かって言った。「「はい!」」 ふたりの声は、掛け声など無くとも、しっかり揃っている。「では、十五時から食堂でミーティングを行う。遅れるなよ!」「「はい!!」」 ルパートは踵を返して、爽やかに階段を降りて行く。 国軍一、イケメンな上司は去り際までスマートだった。 ここはツィアベール公国との国境にあるチミテロという名の村だ。 昨日、この村を襲撃するという犯行予告が王宮に入ったため、急遽、国軍の第二部隊が派遣されることになったのである。「ビアンカ、あんた先月の戦闘で、いい働きをしたらしいね」 適度なコミュニケーションを図るのは年上の仕事と思っているルイーズ。 彼女は荷解きをしながら、ビアンカに話題を振ってくる。 これまで数々の任務を一緒にこなしてきたが、ふたりが同室になるのはこれが初めてだった。「いい働き……、一体、何のことだ?」 真顔でルイーズを見据えるビアンカ。 宝石のような紫色の瞳に吸い込まれてしまいそうで、ルイーズはドキッとする。―――年下の猛者(ビアンカ)はかなり目立つ見た目をしているくせに無自覚なので、タチが悪い……。「いや、私があんたに聞いているんだよ!!」「別に特別なことは何もしてない……」 ビアンカはぶっきらぼうに言い放つ。「いや、普通に仕事をしているだけのやつが、陛下から表彰されたりするか? というか、あんたはまだ見習いなのに……」「見習い……、まぁ、確かに……」 ビアンカはカバンから本を取り出して棚に並べて行く。 今回の任務で、ここには十日ほど滞在する予定なので、その間に読もうと思っている歴史書を持って来たのだ。
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番外編・立役者・ルイーズ 2

「お~い! ルイーズ!! 少しの間、抜ける! 迷子を親へ届けて来る」 突然、聞き覚えのある声がして、ルイーズは声の主の方へ視線を動かす。 少し離れた場所から、ビアンカが大きく手を振っていた。 「分かった!!」 ルイーズは即答したものの、ビアンカの初歩的なミスにガックリと肩を落とす。 ―――なぜ、あの子は軍服を着ている相手に『少し抜ける』なんて、大声で言ってしまったのだろう。 その余計なひと言でビアンカが軍の関係者だと周囲に知られてしまった。 厄介なことになったな~と思いながら、迷子らしき子供の方を確認すると……。 「はぁ~?(なぜ、ジャスミン(隠された王子ユリウスを表す隠語)が、ここにいるんだ!?)」 イヤな汗が背中をつたっていく。 どうして、ここに……と、頭の中は大混乱していた。 しかし、しっかりとルーズの目に彼(ユリウス)が映っている。 ―――あれこれ考えるのは後だ! 至急、対応しなければ……。 ビアンカたちがルイーズに背を向けた瞬間、彼女は影の潜んでいる路地裏へ走った。 異変に気付いた影たちがルイーズの元へ集まってくる。 「サム、ジャスミンが現れた。詳細は不明だ。王宮に連絡を入れて指示を仰いでくれ! 残りの者はビアンカとジャスミンの後を追って!―――あたしは国軍の兵士たちをかき集めてくる!!」 「「「「「了解!」」」」」 指示を一気に捲し立てたあと、ルイーズは国軍の兵士たちが立っているポイントに向かって、再び、駆け出した。 ♢♢♢♢♢♢♢ ――――致命傷を負ったビアンカが地面に倒れ込んだ。 ルイーズも潜んでいる影たちも、『これはどう対処したらいいんだ?』と、途方に暮れてしまう。 最悪なことに彼女を治療出来る者がその場に居なかったのだ。 だが、兵士たちがビアンカの死を覚悟したその時、彼女の腕に縋りついていたジャスミンが突然、呪文を唱え始め……。 ――――あの日から七年の月日が過ぎた。 ルイーズはジャスミン(ユリウス)の放った美しい魔法を思い出しながら、目の前にいる二人へ話しかける。 「閣下~、新婚旅行楽しんで来て下さいね~。お土産はお菓子がいいです!」 「―――分かった」 「ルイーズ、甘いのと辛いのはどっちがいい?」 「そりゃ~、辛いのが好きだけどさ~
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番外編・ビアンカ流・影との付き合い方 1

  辺境伯城の温室は常に世界各国から集められた植物が花を咲かせている。 恐らく、開花のタイミングを見計らって入れ替えているのだろう。 ビアンカは国軍で野営をする時、必ず周辺に毒のある植物が生えてないかどうかを確認していた。 なので、植物に関して、多少の知識は持ち合わせている。「ユリウス、この温室の中の植物って、何気に毒のあるものが多いですよね?」「それは辺境の地なので、様々な用途を考えて育てているのではないかと……思います」「―――思います?」「ええ、私が赴任してくる前から、この状態だったので……」 ユリウスは花壇の一角を見つめる。 その視線の先にはジギタリスやスズランが植えられていた。 一見、可愛らしい花だが、しっかりと毒がある。「まぁ、備えあれば憂いなしですね」「そうですね」 ユリウスと微笑みあってから、ビアンカはアンナが用意してくれたミントライムソーダ―を一口飲んだ。 シュワッと口の中で炭酸が弾けて、ミントの爽やかな香りが鼻に抜けていく。 ライムの酸味もいい塩梅だ。(おっ! 旨いな~、コレ!! グラスの底に沈んでいるのは、もしかして、粗目の砂糖!? 実に罪深い飲み物だな……) ビアンカはチラリとユリウスを見る。 彼はグラスを片手に持ったまま、目を見開いていた。(ユリウスはいい顔をするなぁ~)「ユリウス、美味しかったですか?」「ええ、驚きました」 普段、ユリウスは感情をあまり表に出さない。 だが、なぜか食事に関しては美味しい、まあまあ、微妙、不味いなどの気持ちをしっかりと顔に出す。 ビアンカはそれを確認するのが楽しくて、ついつい彼の顔を眺めてしまうのだ。「飲み干した後の爽快感が絶妙ですよね。―――朝訓練の後にコレを出したら、兵士たちが喜ぶかも&hellip
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番外編・ビアンカ流・影との付き合い方 2

 「―――王都の義母の元です……」 小柄な影の声はお世辞にも明るいものではなかった。「やはりここに連れてきたらどうだ?―――ユリウス、彼女は夫が若い女と逃げたのに、子供を夫の実家に預けるしかない状況で困っているのです」 ユリウスはビアンカが影のプライベートを聞き出しただけではなく、心配までしていたことに驚いてしまう。 ただ、身分や状況に囚われないやさしい心を持っているビアンカだからこそ、ユリウスは彼女のことを好きになったのだ。 ユリウスは新妻のために一肌脱ぐ事にした。「南館の離れに影専用の詰め所と人数分の部屋を用意する。この城に家族を連れて来たい者は私に申請書を提出しろ」「ユリウス、ありがとうございます! メイ、良かったな! みんな、これからもよろしく!!」「「「「「御意!!」」」」」 五人の影は声を揃えて返事をする。 流石に小声だったが……。「では、持ち場へ戻れ!」 ユリウスの一言で、彼らは消え去った。「ビアンカ、もしかして全員の名前を知っているのですか?」「はい、家族構成も知っています。何かあった時はご家族に連絡しないといけないですから」 ユリウスはブッと吹き出す。 影にそこまで心を砕くのはビアンカだけだろう……と。 だいたい、影というのは影同志でも、素性を明かしたりしない秘密主義の世界だ。 なのに、ビアンカの影たちをひとつのチームのように扱っている。「どこに笑う要素があったのですか?」「いえ、あなたの優しさはどこまで広がるのかと……」「優しさ……? 私はそんなに優しくないですよ?」「無自覚が酷い……」 クックックッ……とユリウスは笑う。(この感じ&hellip
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