コン、コン、コン。 ビアンカはパチッと目を開けた。(音がしたような、しなかったような……) いつも寝室のドアをノックされた時はユリウスが返事をする。 しかし、今はしんとしていて……。(ユリウス、もしかして、まだ寝ているのか?) 寝起きの悪い彼なら十分在り得る。 ビアンカは身を起こし、天蓋のカーテンを少し開いて、部屋の様子をうかがう。 外はまだ日が昇っていないようだ。 室内も就寝時は小さなランプを一つ灯しているだけなので薄暗い。そのまま、窓際に置かれたベッドの方へ視線を動かしてみると……。(えっ、あれれれ!? ユリウスがいない!!! だから、ノックに反応しなかったのか~。ということは……) ビアンカは自分が返事をしなければならない状況にあると気付く。「ドアの前に居るのは、アンナか?」「はい、その通りでございます。ビアンカ様、お部屋へ入っても宜しいでしょうか?」「どうぞ」 ビアンカは天蓋のカーテンを開け放って、ベッドから降りる。 アンナはワゴンを押して、部屋へ入って来た。――――ふわりと香ってくるバターの香り。 ビアンカの素直なお腹はグゥ~と可愛らしい音を立てた。 アンナはニッコリと微笑み、ビアンカは照れ笑いを浮かべる。(空腹といえば、昨夜……、ユリウスは夜食でステーキを二枚も平らげて……。あの時間にステーキ……。いや、本当に若いよなぁ~) ビアンカは『一緒に食べませんか?』と彼に誘われたが、寝る前にステーキを食べるほど、お腹は空いてなかった。(丁重に断ったら、ちょっと寂しそうな顔をして……。少し胸が痛んだというか、何というか……。でも、真夜中にステーキは流石にキツイ!
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