辺境伯城の上に月が昇った頃。 ビアンカはお湯に浸かって、一日の疲れを取っていた。 (朝はリシュナ領軍の兵士たちと対戦試合をして、午後は領都バリードでユリウスとデートを楽しんだ。そして、陽が落ちる頃に辺境伯城へ帰って来ると予想外の来客が待ち構えていて……) 「今日も濃い一日だった……」 ため息交じりのボヤキ。 ユリウスはまだ仕事が残っているらしく、浴室にはビアンカしか居ない。 ―――両手で乳白色の湯をすくい上げ、指を開いてトポ、トポ、トポと水面へ溢していく。 「程良いとろみ……、いいお湯だ」 ビアンカは毎日お風呂に浸かれることに幸せを感じている。 リラックス効果もさることながら、肌の調子がとてもいいのだ。 (宿舎には男性用の大浴場しかないからなぁ~。やはり、女性用の大浴場も欲しいよなぁ~) 彼女がボヤくのも無理はない。 実際、国軍の宿舎には男性用の大浴場しかないので、女性兵士は個室タイプのシャワールームを交代で使っている。 これは男女差別をしているわけではなく、女性兵士の人数が少ないというのが一番の理由だ。予算が付かないのである。 「よし、王太子妃になったら、女性兵士の大浴場を作ろう! 待遇改善だ!」 (しかし、王太子妃の最初の目標が女性兵士専用の風呂を作るというのはどうなのだろう? 民から税金の無駄遣いと思われたら地味に嫌だな。各方面から不満が出ないようにするなら……) 「そうだ! 私財を投じよう! 別に使う予定も無いし……」 (あとで、ユリウスに話して、彼の意見も聞いてみよう) ビアンカは腕を組んで、うんうんと満足げに頷く。 ―――先ほど、ネーゼ王国の王女コルネリアは伯母のカメリアの命で母国へ強制送還された。 (コルネリア王女はあの状態で帰国させて大丈夫だったのだろうか。意識を取り戻した後も、塞ぎ込んでいるように見えたが……。ただ、コルネリア王女はマリウス兄上を嫌っているようには見えなかったからなぁ~) マリウスが現れた時、コルネリアは少し恥じらうような仕草を見せていたのである。 (サッと顔を扇で隠していたし、頬を赤らめていたような気もしたのだが……。マリウス兄上がああいう事務的なプロポーズをしなければ、もっと違う状況になっていたかも知れないのに……) 一方、カメリア夫人は『姪が蜜月のお邪魔をして
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