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いきなり挙式!?結婚1日目・辺境伯城 1

 馬車が停止した。外側からドアが開かれ、ユリウスは腰を上げる。「ビアンカ、その武器は私が持ちましょう」「あ、えっ?(重いけど!?)」 戸惑うビアンカをよそに、ユリウスは片手で軽々と大斧を持ち上げて、キャビンから出て行った。(ユリウス? ん?――――もしかして、父上の部下(文官)が非力なだけだったのか!? いや、手伝いに入ったもう一人は護衛だったぞ!!) ビアンカは首を捻ってしまう。どうして彼は平然と片手で大斧を持っていけるのだろうと……。 腰を上げ、キャビンから降りようとしたところで、ビアンカは息を呑んだ。「これは……」 赤褐色の岩で造られた城の正面玄関に、制服を着た人々が綺麗に整列していたのである。(手前は執事か? その隣は侍女頭と侍女、医師? 白い服は料理人だな。その隣はエプロンをしている庭師、警備兵……、こんなに多くの人が出迎えてくれるなんて感動した!! しかも、一糸乱れぬ隊列と、この馴染みのある空気感。ここは領主の城というよりも軍隊じゃないか!) ビアンカの直感は当たっていた。国防最前線のこの城の使用人は全員、それなりに戦える者が集められているのである。「ビアンカ、手を」 出迎えの人々に圧倒されているビアンカへユリウスが手を差し出す。勿論、もう片方の手は大斧を持っていた。(やっぱり軽々と持っている。ユリウス、ただの魔法使いではないのか?) ビアンカはユリウスの手を取り、慎重にステップを踏んで降りていく。彼女が地面にしっかりと降り立つまで、使用人たちはピクリとも動かずに見守る。――――ビアンカは破れた背中に気を付けながら、無事に馬車から降りることが出来た。 二人揃って職員たちの前に出る。「「「お帰りなさいませ」」」 一同は声を揃えて挨拶をした。そして、一呼吸置いて、一斉に礼の姿勢を取る。―――ここで使用人の集団から、一人の男性が一歩前に出た。「閣下、お帰りなさいませ。若奥様、お初にお目にかかります。わたくしは執事のセザンヌと申します。以後お見知りおきを……」(若奥様? あっ、私のことか!?)「初めまして執事どの、ビアンカです。よろしく」「――――ビアンカ、執事に『どの』は必要ありません・・・」 ユリウスは笑いをかみ殺したような声でビアンカに伝えて来る。「あ~、いつもの癖で……。失礼しました。執事、今日から世話に
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いきなり挙式!?結婚1日目・辺境伯城 2

 カッコいい男の笑顔は罪だなとビアンカは心の中でぼやく。 すると、不意にビアンカの視界へ彼の手が入って来る。ユリウスがビアンカの顔の前に人差し指を立てたのである。「?」(ん? これは何か意味があるのか?) ビアンカは首を傾げた。彼の行動が理解出来なかったからだ。軍でもこのようなサインは使っていない。「ビアンカ、見ていてください」 ユリウスは大斧の方へ指先を向け、そして、少し上にピンと振る。「あ、ああ!? ウソ、凄っ!!」 ビアンカは驚いて声を上げた。大斧がふわりと宙に浮いたからである。 続けて、ユリウスは大斧を左右に振ったり、上げたり下げたりして見せた。その度にビアンカは『おお!』とか『ああ!』とか感情を声に出す。 彼はビアンカの反応で興が乗り、最終的に大斧は部屋中を飛び回ることに……。「ビアンカは素直で可愛いですね」 満足したユリウスは大斧を丁寧に床へ下した。(か、か、可愛い!? え、ドコが??? はぁ??) 脈絡もなく褒められて、ビアンカは動揺する。「夜のパーティーには毒蛾が沢山舞っていますから、気を付けて下さい」 ユリウスはビアンカの手をギューッと握った。(くぅ~~~。綺麗な手で握られて、動悸が……。いや、ちょっと待て、毒蛾? 毒蛾っていったよな?)「毒蛾が大量発生するって事ですか!?」「まぁ、そういうことです。くれぐれも触れないように気をつけて……」「分かりました。毒蛾には遠征中も苦労した覚えがあります。あれは毒消し草を塗り付けると更に悪化してしま……、えっ!?」 話している途中で、ビアンカはユリウスにいきなりギューッと抱きしめられてしまう。 ビアンカの頭に疑問符が飛び交う。(また阻止出来なかった。行動が予測不能……。この夫は手強いぞ)「どうしたらいいのでしょうか。あなたが思ったより純粋で……。ああ、困っ…」「ええっと、ユリウス?」「いえ、こちらの話です。失礼しました」 ユリウスは腕を緩めた。――――コンコン。「はい」「お待たせいたしました。お着替えと軽食をお持ちいたしました」 侍女頭アンナと侍女が入って来る。ユリウスは席を立った。「では、後でまた来ます」「はい」 彼はビアンカが着替えている間に用事を片付けて来るらしい。 ビアンカは着替え中も、軽食で出された生ハムとチーズの美味しいサンドイ
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いきなり挙式!?結婚1日目・新しい仲間 1

「――――ん、んんん~。あっ、陽が傾いている。すっかり眠り込んでしまった」 ビアンカはベッドから身を起こして窓の外を見る。レースのカーテン越しだが、夕刻に近づいていることは分かった。 (そういえば昼寝をする前にアンナが『起きたらこれを鳴らしてください』と、ベルを置いて行ったな) ビアンカはサイドテーブルに置かれたベルを手に取り、「リン、リン、リン」と三回振ってみる。―――コンコン。(おわっ!? ビックリした!!―――隣の部屋に待機していたのか? それにしても、ベルの残響が消える前にノックされたような気がするのだが……) ビアンカは素早過ぎる反応に少し引いた。軍の兵士でもこのスピード感は奇襲を受けた時くらいである。「――――はい」「若奥様、失礼いたします」 アンナの声だった。彼女は今回もしっかりと一礼してから部屋へ入ってくる。「よく眠れましたでしょうか?」「ああ、それはもうしっかりと……。アンナ、その若奥様という呼び方は誰の指示ですか?」「執事のセザンヌです」「出来ればビアンカと名前で呼んで貰いたい」「承知いたしました。執事に伝えます」 ビアンカに返事をした後、アンナはすぐに部下へ指示を出す。――――パタパタパタと一人の女性が走って部屋を出ていった。(あ、廊下を走っては……) ビアンカの脳裏に幼少期の出来事が思い浮かんでくる。王宮を好き勝手に走り回って、父であるピサロ侯爵に酷く叱られたのだ。あれ以来、マクシムやデイヴィス(ビアンカの兄)と王宮で遊ぶのは止めた。(辺境伯城は走っても注意されないのだろうか。国境を守る城という特殊な事情もあるのかも知れないが……。まぁ、気を付けなくて良いなら、気楽だな)「いま、部下のアリエルを執事のもとへ向かわせました。戻ってくるまでには少し時間が掛かると思いますので、先にパーティーの準備を始めましょう」「分かりました」「では、これからの流れをご説明いたします。ビアンカ様には先ず、ご入浴をしていただきます。続けて、マッサージで老廃物を流し、むくみを取ります」 アンナはテキパキと説明をしながら、ビアンカの足元へスリッパを置く。「そして、ドレスの着付けをし、最後にお化粧と髪のセットをして終わりです」 ビアンカは無意識のうちにスリッパを履いて、アンナの後ろを歩き始めていた。(うむ、この御方は凄
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いきなり挙式!?結婚1日目・新しい仲間 2

 入浴の途中で、執事のところへお使いに行っていたアリエルが戻って来た。 執事の返事は『今後はビアンカ様とお呼びするよう、職員に周知徹底いたします』とのこと。ビアンカは執事の柔軟且つ、迅速な行動に驚いた。『閣下にご相談の上、お返事します』というような回答を予想していたからである。 アンナはアリエルと交代して、ドレスの準備を部屋の隅で始めていく。 アリエルとセシルがビアンカのマッサージを始めると、アンナはタイミング良く話題を振って、場の雰囲気を和やかにしてくれた。 ビアンカは事前に昼寝をしていたので寝落ちすることもなく、彼女たちとの雑談を楽しんだ。――――極上の施術を終え、いよいよドレスの着付けが始まる。「アンナ、コルセットは筋肉のせいで締め上げるのが大変かもしれない」 ビアンカは着付けを始める前に懸念を口にする。(今朝、着付けをしてくれた王宮の侍女たちは、マクシムに命じられた職務を追行することに必死だった。だから、雑談どころか、話し掛けるのも躊躇してしまって……) 結果、ビアンカはあの地獄のような締め付けに何時間も耐えなければならない羽目になってしまった。(コミュニケーションは大切だ。それは良く分かっている。だが、王宮の侍女たちのピリピリ感は半端なかった。それに今思えば、何となく私に怯えていたような気もする)「思い切って、コルセットの着用を止めましょうか? その方が動きも制限されませんので……。ビアンカ様は姿勢も良いですし、腰も細くて、持ち上げなくても適度に丸みがあって、デコルテからの曲線が美しい胸をしてらっしゃいますから。一つだけ気を付けた方が良いのはバストトップを目立たせないようにすることくらいです。これも私の方で対応出来ますので、ご安心ください」「そうして貰えると助かる。苦しいのは我慢出来るが、動けなかったら有事の時に困る」 ビアンカの脳裏にドレスが破れた時のビリッという音が蘇る。(背中を破くのはもう嫌だ! アンナの提案は有難い。本当に助かる……)「承知いたしました。では、武器のご準備はいかがいたしましょうか?」 アンナは部屋の片隅に置いてある大斧に視線を向けた。(大勢の客が来るパーティー会場に大斧を持ち込むのは、流石に許されないだろうな)「短剣を二、三本仕込む。太ももに固定する」「承知いたしました。では大斧と短剣を三本ご用
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いきなり挙式!?結婚1日目・素敵な贈り物 1

「ビアンカ、何故……」 ドアから入って来た途端、ユリウスは両手で顔を覆って立ち尽くす。(何故って……。この格好はそんなに似合ってないのか!?―――いや、違う。それなら顔を隠す必要はない。では、何なんだ?)「ユリウス、どうかしましたか?」「――――」 何も答えないユリウスとの間に微妙な空気が流れる。その横でアリエルとセシルはメイク道具をドレッサーに並べていた。何も聞いていないふりをして……。「ビアンカ様、こちらへお掛けください。これからお化粧を始めます。閣下、椅子をご用意いたしましょうか?」 アンナはビアンカの肩にケープを掛けながら、ユリウスに声を掛ける。ここで漸く、彼は顔を覆っていた手を下ろした。「頼む」「承知いたしました。アリエル、急いで椅子を持って来て」「はい、行ってまいります!」 アリエルは返事をして直ぐ、ドアのところにいるユリウスの横を駆け抜けようとしたのだが……。「待て!」 ユリウスに呼び止められ、アリエルはピタッと静止する。ビアンカは彼女の反応の良さに感心した。「何処から椅子を持って来るつもりだ?」「準備室です」 アリエルの返事にユリウスは黙って頷く。 パチン。 指を鳴らしたのはユリウスである。―――ドン。「うわぁ!!」 ビアンカは大声を上げた。突然、自分の隣に椅子が落ちてきたからである。(もう、ビックリした!――――これは魔法で準備室の椅子を移動させたということか? こんなに大きなものをどうやって……。まぁ、いくら考えても、魔法の原理なんて、さっぱり分からないけども)「閣下、ありがとうございます!」「いや、礼を言われるほどのことはしていない」 ユリウスはアリエルに気にしなくて良いと手を上げた。そして、部屋の真ん中を突っ切って、ドレッサーの前にいるビアンカのところへ歩いて行く。「ただいま、ビアンカ」「お帰りなさい、ユリウス」 彼は優美な所作でビアンカの隣にある椅子へ腰かけた。 アンナたちは何事も無かったかのように自分たちの仕事へ戻る。(ユリウス、忙しい部下の仕事を増やすのは申し訳ないと思ったのだろう。優しいところがあるのだな) アンナはビアンカの髪をとかし始めた。アリエルとセシルは並べた化粧品を指差して、何かの相談をしている。 また、ユリウスはビアンカのことをずっと隣から見ているのだが、何も
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いきなり挙式!?結婚1日目・素敵な贈り物 2

「王宮から来た侍女たちは声を掛けるだけで顔を強張らせてしまうから……。―――言いづらくて我慢しました……」「なっ!!」 アンナは手に持っていたブラシの手を止める。「何と言うことだ……」 ユリウスは手のひらで額を抑えた。(二人して、そんなに驚かなくても……)「ビアンカ様、この城の侍女にそのような気遣いは一切しないで下さい」 アンナは真剣な顔で鏡の中のビアンカに言う。ビアンカは素直に頷いた。「ビアンカ、直接言い辛い時は私に行って下さい。解決します」 ユリウスも真面目なトーンの声でビアンカへ語り掛ける。(なっ、何なの!? 二人とも滅茶苦茶、甘くないか? 別に腹を切られたわけじゃないのだから、そんな深刻そうにしなくてもいいのに……)「ユリウス、分かりました。困ったときは相談します。お気遣いありがとうございます。それと、大斧をパーティーに持って行っていいと聞きましたが……」「はい、構いません。お好きなようにして下さい。大斧はビアンカの相棒でしょう?」(うわ~、本当にいいんだ!?)「はい、相棒です。ありがとうございます!」 ビアンカの表情がパッと明るくなる。鏡越しに目が合ったユリウスも目元を緩めて優しく笑ってくれた。――――場の雰囲気が和んだところで、ユリウスは二つの箱をアンナへ手渡した。(あれっ? その箱は何処から出した!?)「ビアンカ、これは私からあなたへのプレゼントです」「プレゼント?」 アンナは箱を開けて、中身を確認する。「ビアンカ様、閣下からの贈り物は素敵なネックレスとイヤリングとお靴でございます。今からアクセサリーをお着けいたします。靴は後程……」 二つの箱を準備台に置き、アンナは薄い箱からネックレスを丁寧に取り出した。「では、こちらを……」 ヒヤッと冷たい感触の後、ずっしりとした重みを感じる。ビアンカは鏡を見てヒュッと息を呑んだ。「これはまた……凄いですね。ユリウス、豪華過ぎませんか?」 ビアンカはネックレスにぶら下がっている大きな宝石たちの値段が気になったが、口に出すのは止めた。相手は王位継承権を持つ辺境伯なのである。――――聞くだけ野暮だろう。「いいえ、似合っています。想像通りでした」「そ、それはありがとうございます」 ビアンカの胸元でダイヤモンドの豪華なネックレスが輝きを放つ。 洋なし形のダイヤモ
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いきなり挙式!?結婚1日目・先入観を持たないで 1

 コンストラーナ辺境伯の結婚を祝うパーティーが大広間で始まった。 辺境伯はこの国の王族(しかも王位継承権を持つ)なので、周辺諸国の王族たちは結婚式に引き続き、このパーティーにも参加している。 彼らの相手は王太子マクシムと王太子妃リリアージュが受け持ち、国王陛下がお祝いの挨拶をするとのこと。ビアンカはパーティーの流れをユリウスに聞いて卒倒しそうだった。(ヴィロラーナ公爵(ユリウスの父)を差し置いて、王家が出張って来るなんて、誰が想像する?ユリウスの両親は何処にいるのだろう。あ、あれは……) ビアンカは会場内でひと際、目立っている集団へ視線を向ける。そして、その中心にいるのが王太子妃リリアージュだった。 彼女はツィアベール公国の大公の一人娘だ。細かな経緯は知らないが、マクシムとは幼少期に婚約したらしい。二人が結婚したのはマクシムが王立学園を卒業した年だった。――――僅か三年前のことである。 ビアンカが目を凝らしてみると、彼女を取り囲んでいるのは大公の右腕として知られているケビン・アマンド伯爵をはじめとしたツィアベール公国の貴族や、大陸一の貿易商と言われているソレイユ商会のベイジン会長とその部下たちだった。(ん、大公は居ないようだな。ということは、ケビン・アマンド伯爵が大公の代役か) マクシムは取り巻きと盛り上がっているリリアージュへ一声を掛けてから、他国の王族へ挨拶をするため、その場から離れていく。「ふーん、マクシムも色々と苦労しているのだな。あんなに王太子妃の周りをツィアベール公国の者どもに固められたら、やり辛いだろう」――――ビアンカは今、裏方の隠し部屋からパーティー会場の様子を覗いている。彼女とユリウスの出番はもう少し後のため、ここで暇を潰しているのだ。 彼女は隣にいるユリウスへ会場内の出来事を実況中継していた。ユリウスは自分とは違う視点で語られる話を黙って聞いていたのだが……。 あまりにも多くの情報を持っているので感心してしまう。「ビアンカ、他国の王族のことまで良く知っているのですね」「はい、戦争になったら首を取らないといけないので!」
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いきなり挙式!?結婚1日目・先入観は持たないで 2

 ユリウスは至って冷静。 一方、ビアンカは今すぐにでも王太子妃を問い詰めたい気分だった。 教会の刺客はビアンカ、警備兵、サジェ(王国軍魔法師団・リシュナ領支部所属の魔法使い)の連携で上手く収めたが、けが人が出てもおかしくはない状況だったからだ。「やっぱり、大斧は担いでいきます。何が起こってもいいように……」「ビアンカ、会場で戦うつもりですか? 大斧を担いでいくのは余興として面白いので許可しました。しかし、戦闘はして欲しくありません」「余興なら良くて、戦闘は禁止!?」 頓珍漢なことを言われて、ビアンカはポカーンと口を開けてしまう。(大斧で余興って何? 大斧は武器だから、戦うための道具だと思うのだけど……)「ビアンカ、今夜は私たちのお祝いですから、戦わないといけない時は城の者が出ます。大斧はまた別の機会に活躍してもらいましょう」「もしかして、既に対処済み?」「はい」(うお~! 抜け目がないというか、何というか……。最初から、このパーティーは荒れる予定だったということじゃないか!!)「ビアンカ、あなたの美しい足を晒さなくていい様にしますから、ご心配なく!」 ユリウスはビアンカのドレスの深いスリットが隠されている部分をジーッと見つめる。(そんなに凝視されたら、ムズムズする)「ユリウス、見過ぎですよ」「正直なところ、(スリットを)縫い付けておきたいです」「は?」 ニコッと笑みを作るユリウス。ビアンカは少し怖くなった。(笑ってるけど、目は全然笑ってない……。これ、約束を破って暴れたら、お仕置きが待っているとか、そういう類の……)「閣下、ビアンカ様、ご準備を! そろそろ入場でございます」 アンナに呼ばれ、二人は大広間の入場口(大階段の上)に移動した。♢♢♢♢♢♢♢ 司会者が「辺境伯夫妻の入場です」と、いった瞬間、会場からは大きな拍手が沸き起こる。 ユリウスとビアンカは大階段の上にある扉を開けて、大広間に登場した。拍手の中に生ずる一瞬の騒めき、これは想定内である。(皆は私が大斧を担いでくるなんて思ってなかったのだろう。顔を引きつらせている者も結構いるようだ。くれぐれも父上と目を合わせないように気を付けよう。絶対に怒っているだろうからな) ビアンカは左肩に大斧を担ぎ、右手をユリウスにエスコートされて、一歩ずつ階段を降りて行く。(ユ
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いきなり挙式!?結婚1日目・痛い人たち 1

――――国王の挨拶が終わると大きな拍手が沸き起こる。 ビアンカは王太子妃とその取り巻きを眺めていた。(そういえば、ユリウスから『夜のパーティーには毒蛾が沢山舞っていますから、気を付けて下さい』と言われたなぁ……) ビアンカはつい苦笑いを浮かべてしまう。(王太子妃の周りにいる奴らが毒蛾なのか? それとも、あちらの……) 会場の中央には美しく着飾った上位貴族のご令嬢たちが集まっていた。彼女たちの名くらいはビアンカも知っている。だが、お茶会や夜会には参加しない主義だったので、直接的な交流はない。(あのご令嬢たち、派手に着飾っているなぁ~。既に婚約者もいるのだろうに……。えっ!? あのご令嬢……、あれはマズいだろう!! 誰も止めなかったのか? 流石の私も結婚を祝うパーティーに白いドレスは着て行かないぞ!) ビアンカを驚かせたのは、堂々と真っ白なドレスを身に纏って会場に現れたご令嬢だった。(突然、令嬢たちの後ろから姿を現したこのご令嬢は誰だ?) ビアンカは非常識なご令嬢の名を思い出そうと脳内の貴族名鑑を捲っていく。(え~っと、う~ん、あっ! あの特徴的なオレンジ色の髪はベリータ! 名門ジョバンヌ公爵家のご令嬢だ!!) ベリータの祖父といえば、先代国王の御代に宰相を務めていた人物だ。――――彼女は由緒正しき家門のご令嬢だったのである。(何故、名門のご令嬢がおかしな格好で現れるんだ!? あの家門の使用人なら絶対に止めるだろ) ビアンカは王太子妃のことはそっちのけで、ベリータのことが気になってしまう。(今は父上(ピサロ侯爵)が宰相の職についているから、現ジョバンヌ公爵閣下が我が家のことを気に入らないのは間違いない。――――しかし、愛娘を使ってまで、嫌がらせをする必要があるのだろうか? というか、これは本当に嫌がらせになるのか? 寧ろ、ご令嬢の株が下がるだけだと思うのだが!?) ビアンカはベリータの父、ジョバンヌ公爵は何処にいるのだ
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いきなり結婚!?結婚1日目・痛い人たち 2

(消えたということは、王太子妃がこの爆破にも関与していると考えていいのだろうか)「ビアンカ!!左だ!」 デイヴィス(ビアンカの兄)の怒号が飛ぶ。 ――――ビアンカの身体は自然に低い構えを取り、左斜め上から斬り掛かって来た敵に全力で大斧を振う。敵の身体は宙を舞い、壁に打ち付けられた後、床へ落ちた。 大斧の鋭い刃は人間の身体を簡単に引き裂く。 例に漏れず、敵の右腕は刀を手にしたままの状態で切り落とされ、横腹からも夥しい量の血が流れ出していた。「「「キャー!!」」」 この光景を間近で見てしまった人々が悲鳴を上げる。中には吐き気を催して、その場にうずくまる者もいた。 ユリウスはビアンカを腕の中に囲い込む。―――こんなに近くにいたのに彼女を守れなかったのが悔しかった。「ビアンカ、大丈夫ですか?」「はい、問題ありません。ただ、王太子妃たちが消えました」「そちらはサジェ達が追跡しているので心配はいりません」 ビアンカはユリウスの返事を聞いてほっとする。 数分後には、ユリウスの指示を受けた執事を先頭に城の使用人たちが会場へ駆けつけ、他国の王族を安全な場所(客室)へと誘導し始めた。(これで一応の安全は確保された。大広間は破壊されてボロボロになったが、怪我人が出なかったのは幸いだった。それにしても、―――やはり狙われているのは私なのか? 首謀者は王太子妃の父だとユリウスは言った。だとしたら、私を狙う理由とは何なんだ?―――あと、王太子妃はなぜ消えた? 彼女はマクシムと離婚するつもりなのだろうか。もう、いい加減、この特別任務の内容を教えて欲しいのだが……)「ビアンカ、まだ油断するな!」 デイヴィスは考え事に気を取られているビアンカに注意を促す。ユリウスはビアンカから数歩離れたところで、指示を仰ぎに来た部下に今後の流れを説明している。(兄上、たまには役に立つ。そうだ、まだここは戦場。気を抜いてはいけない) ビアンカは深呼吸を一つして大斧を真っ直ぐ床に立て、仁王立ちで周辺に注意を払い始める。  ピサロ侯爵家の三人(父、兄、母)は国王夫妻と共に王家の護衛に囲まれていた。一方、王太子の傍にはまだおかしな言動をしているベリータが張り付いていたのだが、皆は爆発騒動からの刺客登場で、そのことをすっかり忘れてしまっている。――――ここでビアンカの耳に女性の呟く声
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