ビアンカは慌てた。 今、ユリウスが口に出した者たちを知っているからだ。そして、彼らはここ数年の間に失踪した。 (一時、失踪者が私の顔見知りばかりだったから、マリオから『お前が犯人じゃないのか?』と疑われたりして、本当に迷惑だと思っていたのに……) 「かの者たちはあなたの兄上が再起不能にした者たちの一部です」 「兄上が?」 「はい、美しい兄妹愛です」 「気持ち悪っ」 ビアンカは顔を顰める。 (兄との間に良い思い出などひとつも無い。急に妹を大切にしていましたと聞いても、どうしていいのか分からないぞ) 「妹のことを想って守っているのに『気持ち悪っ』の一言。兄上に同情します」 ビアンカはユリウスから穏やかな口調で注意されてしまう。 「そうですね、言い過ぎました。反省します」 彼女は素直に謝った。 「兄上と次に会った時は少し優しくしてあげることをお勧めします。昨日もご心配されていたようですから」 「殺人鬼のような視線を送られましたけどね」 「兄上は……」 ユリウスは言葉を止めて、少し考えるような素振りをしてから、再び、言葉を紡ぐ。 「昨日のパーティーで、兄上はビアンカに的確な指示を出していましたよね? あれはずっとあなたを目で追っていたからだと思いますよ」 ユリウスの発言にビアンカは目をみはる。 「おおおお! 確かに! ボーッとしていたら怒号をうけましたからね。そうか~、兄上は私の粗探しをしていたのではなく、心配していたのか~」 「そうです」 「次に会った時は少し優しくしてあげようと思います」 「ええ、是非してあげて下さい」 二人はニッコリと微笑み合う。 「ビアンカ」 「はい」 「これを機に自覚して下さい。あなたはかなり魅力的です」 「そ、そうですか。 自覚出来そうな気がしないですけど……。ユリウス、しつこいようですが、無理して私と一緒にいる必要はないのですよ。あなたは私には勿体ない人なので……」 「……」 ユリウスは言葉で説得することを諦めた。 「触れていいですか?」 「へ?」 (触れるって、どこに!? 薔薇の花びらで隠れているけど、今、真っ裸だぞ! これ危険な状況なんじゃ……。男女のアレコレ的に~~~~!) ビアンカは狼狽えて、言葉が出てこない。 ――――ユリウスはビアンカの返事を待たず
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