「アン、取り掛かれ」 ユリウスはアンに命令した。 ピョンピョンと跳ね回っていたアンは二人の前に戻り、ローブの懐から短い杖を出す。(あっ、杖だ! アンの杖は黒色か~) 魔法を見るのが大好きなビアンカは彼女の動きをジ~ッと観察する。 アンは懐から出した杖を掲げ、何かを描き始めた。―――やがて、杖先の軌跡は金色の線となり、複雑な紋様が浮かび上がってくる。「あれは……」(綺麗だ。魔法牢の鍵のところにあったものと似ている)「ビアンカ、あれは召喚の魔法陣です。アンは気に入った相手をよく連れ去っているので、失敗することはないでしょう」「は? 人を連れ去る!?」 ビアンカは眉をひそめた。「はい、老若男女問わず、気に入ったら自分の家へ……」「いや、それ、犯罪……」 ユリウスはニコッと笑って、ビアンカの指摘を聞き流す。(ユリウス、笑っている場合じゃないだろ~。魔法使いって、ヤバい奴が多いのか? 人を連れ去るのは犯罪! それくらい誰でも知っている。アン……、美少女にしか見えないだけになおさら、怖いな……。男なんて、彼女が微笑むだけで簡単に騙されてしまいそうだ。―――本当に見た目で判断出来ないな……) ビアンカは手のひらで額を押さえる。「ビアンカ、大丈夫ですか?」 ユリウスはビアンカの手を取り、優しく握った。「いえ、魔法使いのモラルが想像以上に危な……」 ボソボソと懸念を呟く、ビアンカ。「気が済んだら家に帰しているようなので心配しなくても大丈夫ですよ」 ユリウスはフワッと優しく微笑む。(うわっ、極上笑顔~、破壊力ヤバい!!―――って、違う!!)「いや、そもそも、連れ去っている時点で犯……
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