美羽は澪との電話を終えると、スタジオへ入る準備を始めた。月見ヶ丘にて。翠が柚葉の支度を手伝い、着心地のいいクマ柄のパジャマを着せた。「パパ!」「おっと、柚葉様、ゆっくり歩いてくださいね」翠は慌てて背後から守るように付き添った。翔平はソファに座り、ニュースを眺めていた。柚葉はウサギのぬいぐるみを抱えて翔平の膝に飛び乗った。翔平は柚葉を抱き上げ、テーブルの上のミルクを手に取ると柚葉に手渡して言った。「自分で飲めるかな?」柚葉はミルクを両手で抱え、翔平に甘えながらストローで飲んだ。翔平はその体温を感じながら、柚葉を優しく抱き締めた。午後8時のニュースが始まった。柚葉はテレビに映る女性を見て、翔平に向かって目を輝かせて言った。「あ、あのきれいな人!」翔平は番組を仕切るその女性の姿と、腕の中の柚葉を見比べた。柚葉の記憶力は昔から抜群によかった。あの日、モニター越しにちらっと見ただけだったはずなのに、柚葉はイヴリンのことを覚えていたのだ。柚葉が身内以外の人に対してこれほど反応することなど、滅多になかった。翔平は柚葉の頭をなでた。「どうしたんだい?そんなに嬉しそうに」柚葉はテレビに映る美羽をじっと見つめている。その瞳は真っすぐだった。普段のアニメなら好きなキャラクターが出たときしか見せないような真剣な表情で、ミルクを飲むことさえ忘れていた。翔平は尋ねた。「柚葉、この人が好きなのか?」柚葉は翔平の方を振り向き、言った。「この人、すごく優しそうだもん。梨花さんと似てるよ。パパはこの人を知ってるの?」柚葉が言う「梨花さん」とは、暁の妻、北条梨花(ほうじょう りか)のことである。「柚葉は、この人に会ってみたいのかな?」柚葉はくりくりとした目を翔平に向けた。「うん、会ってみたい!」柚葉の望みを、翔平が断ったことは一度もない。お気に入りのアニメに続編がなければ、次の日には会社ごと買い取って制作を急がせるほど溺愛していた。イルカやクジラが好きだと言えば、柚葉専用の海洋公園までも造ってしまう。山ひとつを買って好きな花を植え、好きな蝶を放つことだってあった。……誰かに会いたいという程度の願いなど、些細なことだった。「分かった、パパが会わせてあげよう」柚葉は喜び、翔平の首に抱きついて顔
Baca selengkapnya