美羽は、普段と変わらぬ様子で社長室に入った。だが、目の前の光景に足を止めてしまった。広々とした社長室が、まるで子供部屋のようになっていた。真っ白だったはずの壁には、子供が描いた絵やシールが所狭しと貼られている。床には積み木が散らばり、ロボットまで置かれていた。……翔平がその奥で仕事をしている。柚葉はソファで、ロボットと外国語で会話を楽しんでいた。ドアが開く音がして、翔平が視線を上げ、入ってきた美羽を見つめた。今日の美羽は白のシャツにパンツスーツ姿で、髪をきれいにまとめ、洗練された都会のキャリアウーマンそのものだった。視線を感じた美羽は表情を引き締め、柚葉のほうを見ないよう必死でこらえた。柚葉が小さな顔を上げ、美羽に気づく。「きれいなお姉さんだ!」目を輝かせた柚葉は、手に持っていた絵本を放り出して駆け寄った。美羽は動けなくなる。何が起きたのか整理する暇もなく、柚葉の小さな腕が、美羽の腰に強く抱きついた。衝撃にふらつきながらも、美羽は反射的に身をかがめて柚葉を支えた。目の前には、黒い宝石のように澄んだ大きな瞳でこちらを見つめる、愛らしい娘の顔があった。体が強張り、鼓動が激しく高鳴る。どう対応すればいいのか、思考が真っ白になった。「私は柚葉って言うの。お姉さんのお名前は?」あふれるほどの愛情に包まれて育ったせいか、底抜けに明るく人懐っこい子だ。美羽はゆっくりとかがみこみ、我が子の目を見て穏やかな声で聞いた。「柚葉ちゃん、私のこと知っているの?」「パパとのビデオ通話で見たし、一緒にテレビを見ている時もお姉さんがいたよ。今日は会えるってパパが言ったから……本当に会えた!」柚葉の顔には、隠しようもない喜びが浮かんでいる。娘の声を聞くたび、胸の奥が熱くなり、たまらなく抱きしめたくなった。自分のことを覚えていてくれた。それだけで救われたような気がした。美羽はにっこりと微笑んだ。「柚葉ちゃん、好きになってくれてありがとう」そう言いながら、自分の手首にしていたパールのブレスレットを外した。「これ、プレゼントしていい?」「ありがとう!」と柚葉が小さな手で受け取る。「私からもプレゼントがあるよ」柚葉はくるりと振り返り、用意していた箱を持って戻ってきた。柚葉を見つめる美羽の視界に、デスクで
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