柚葉は大人しく翔平に寄り添い、読み聞かせを待つ。一冊読み終える。すると、柚葉がふと言った。「パパ」翔平は柚葉を見つめ、優しい眼差しで、「どうしたんだ?」と声をかける。柚葉は翔平を見上げて、「どうして柚葉はママがいないの?」と聞いた。翔平は柚葉の頬を優しく撫でたが、その瞳の奥には複雑な色が宿っていた。「友達のみんな、ママがいるよ?今日も病院で、他の子がママに付き添ってもらってるのを見たよ。どうして柚葉にはいないの?」そう言って、柚葉の目がみるみる赤くなった。幼い頃の柚葉にとって「ママ」という言葉はどこか遠い存在で、大好きなパパと祖父母に囲まれていれば、自分にママがいるかどうかは気にならなかった。しかし幼稚園に通い、毎日を過ごすうちに「ママ」という存在はどんどん大きな意味を持つようになっていた。友達が彼らのママに甘える姿を見て、自分の中にもある寂しさが膨らんでいったのだ。どうして自分にはママがいないのか?そう思うと、やりきれない気持ちで胸がいっぱいになる。今日だって病院で、ママに手を握られている子を見かけたばかりだ。それなのに自分にはパパしかいない。これまでずっとそうだった。弱っている時というのは、誰だって心細いものだ。それは幼い子供にとっても同じことだ。柚葉の赤くなった目元を見て、翔平の胸もまた沈み込んだ。柚葉が大きくなれば、いつかこういう日が来ると分かってはいたのだ。翔平はその小さな頭を撫でて言った。「柚葉にも、ちゃんとママはいるんだよ」柚葉は目を丸くして聞いた。「じゃあ、ママはどこにいるの?どうしてそばにいないの?」「すごく遠いところにいるんだ。だから柚葉がいい子にしていれば、いつか必ず戻ってくるよ」「じゃあ、柚葉が前はいい子じゃなかったから、ママはいなくなっちゃったの?」「そんなことはないよ」「……」翔平はなだめるように、美羽が遺したお守りを柚葉に手渡した。柚葉はそれを大事そうに握りしめ、ようやく落ち着いた。自分にもママがいるんだ、そう思いたかったのだ。翔平はそのまま柚葉を慰め、彼女が眠りに就くまで背中を優しくトントンと叩き続けた。幼い娘の寝顔を見つめながら、翔平は静かに物思いにふけった。翌日。柚葉は熱もすっかり下がったが、まだ以前のような元気はなく、もう少し安静が必
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