「今日は忙しいから、柚葉ちゃんと一緒にいられないの」「……」その後、子供たちは先生と一緒に幼稚園の中へ入っていった。美羽は横にいる翔平を無視し、隆に向かって言った。「先生、行きましょう」隆は静かに頷いた。二人は背を向け、車に乗り込んだ。隆が切り出した。「大輔から聞いたよ。昨夜、中山社長に会ったそうだな。話はどうだった?」その話題になると、美羽は言いようのない重苦しさと怒りを感じた。彼女は深く息を吐き出し、事の経緯を隆に説明した。隆が言った。「本当に婚姻関係を世間に公表するつもりなのか?」美羽はため息を深く吐き出した。「もちろん、そんなことはしたくないです」公表すれば事態はますますややこしくなり、今井家まで巻き込みかねない。昨日の発言は、翔平というクズに対する当てつけに過ぎなかった。だが、あの男の「勝った」と言わんばかりの高飛車な態度を思い出すだけで、腹の虫が治まらないのだ。隆が続けた。「それを公にしても、向こうの評判を落とすだけで、離婚裁判で有利になるとは限らない。中山社長は長期戦も厭わないだろう。柚葉ちゃんにとっても悪影響だよ」美羽もそれは分かっている。今、彼女の心身は極限まで削られていた。隆は美羽を横目で見やり、諭した。「まずは第一審の判決を待とう。後のことはすべて郷田先生に任せるんだ。中山社長のペースに振り回されて、自分の心まで乱されないように」美羽は力なく頷いた。隆の言う通りだ。翔平に感情を揺さぶられるままの現状から、抜け出さなければならない。隆と話した後、美羽の心はいくらか軽くなった。今日の仕事を片付ける。昼過ぎ、悠斗からランチに誘う連絡が入った。美羽は断った。「まだ山のように仕事が残ってるの。週末まで待って」彼女の弾んだ声を聞き、悠斗は安心したようだった。「分かった。じゃあ、週末は一緒にバーベキューに行こう」美羽は快諾した。「ええ、いいわよ」さて、夜は北条家へ行く予定だったが、本当は断る口実を考えていた。だがその時、急に勲からの着信があった。「今夜の食事会に、翔平が柚葉ちゃんを連れてくる。美羽さんも来なさい」美羽は戸惑った。勲は笑い飛ばす。「何を怖がる必要がある?今日は誰にも、お前に無礼な態度など取らせん」美羽は苦笑いを漏らす。「北条先生が
Read more