翔平はダイニングテーブルにケーキの箱を置いて広げ、スプーンを子供たちの方へと差し出した。「ありがとう、パパ」と柚葉が言った。「ありがとう」と詩音が続いた。「どういたしまして」翔平はソファに無言のまま座っている美羽へと視線を向けると、伝えた。「どんなのがいいか分からなかったから、適当に買ってきたよ」紗良は翔平を見つめた。言葉こそ穏やかだが、子供たちと向き合っていた時とは打って変わり、美羽を見つめるその眼差しは、冷え切っているように見えた。翔平が美羽を憎んでいるのではないか。そう思えるほどだったが、自分の気のせいかもしれない。傍から見れば、本当に家庭を大事にする良き夫そのものだ。紗良は唇の端を軽く持ち上げ、作り笑いを浮かべて礼を言った。翔平は軽く頷くと、紗良に声をかけた。「詩音ちゃんが夕食に何が食べたいか、使用人に伝えておいてください」「分かりました」と紗良が答える。翔平はそれだけ言うと、足早に上の階へと去っていった。その日の夜、紗良と詩音は夕食を済ませ、翠は翔平の書斎へと夜食を届けていた。夜中から、激しい雨が降り始めた。美羽は雨音で目を覚まし、洗面所へ向かった。その時、車のライトが窓をかすめ、スポーツカーの排気音が響き渡った。美羽は窓際まで歩み寄り、カーテンを少しだけめくって外を見た。すると、邸宅から走り去る車を目にしたが、無関心な様子で視線を戻すと、またカーテンを閉め、柚葉の待つ寝室へ戻って眠りについた。翌朝。翔平の姿はもうなかった。柚葉が尋ねる。「清水さん、パパはどこ?」翠は答えた。「お仕事がお忙しいようです。柚葉様、朝食を先にどうぞ」「うん」朝食が終わった後のこと。中山家の本邸から柚葉を迎えに運転手がやってきた。ちょうど美羽も今日、病院へ行く予定だった。「柚葉は先にひいおばあちゃんの家へ行ってて。私は、病院に友達のお見舞いに行くの」使用人が柚葉に付き添って去ったあと。美羽は自分で車を運転し、出発した。この前、病院に置いてきた車を、人に頼んで持ってきてもらった。病院に到着すると、美羽は直美から電話を受け取った。直美も隆を見舞いに来るというが、着くのは11時過ぎらしい。「分かりました。病院で待ってますね」美羽は片手に花束、片手に果物カゴを持ち、
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