「何でもないさ。晋助、さっきなんて?」と、竜之介が聞いた。晋助はもう一度同じことを聞き返した。「さあね、よく分からないよ」と竜之介は答えた。翔平は、もっと前からイヴリンのことを知っていたのではないか?二人の間には、深い確執があるようだった。一曲が終わり、周囲から拍手が起こる。美羽が手を放そうとしたが、翔平は彼女の指をしっかりと掴んで放そうとはしなかった。柚葉が嬉しそうに駆け寄ってきた。「私もイヴリンさんと踊りたい!」すると、翔平はようやく美羽の手を放し、柚葉の小さな頭を撫でた。「じゃあ、柚葉が踊りなさい」軽快な音楽が流れていた。柚葉の楽しそうな笑い声を聞き、美羽の心も少しずつ和らいでいく。翔平はダンスフロアの外へ出て席についた。晋助と竜之介が近づいてきて、笑いながら聞いた。「どういう状況?」翔平は店員が運んできたワインを受け取り、一口飲んだ。言い返そうとした時、スマホが振動した。彼は上着の裏ポケットからスマホを取り出すと、席を立って電話に出た。晋助は画面をチラリと見た。表示されていた名前は「瑠衣」だった。通話を終えた翔平は、席に戻る途中で竜之介と目が合った。「何の用だ?」竜之介は躊躇しながら、さっきの晋助と同じ問いをぶつけた。「翔平とイヴリンさん、一体どういう関係なんだ?」翔平は静かに尋ねた。「あいつが誰だと思う?」竜之介はハッとした。柚葉があれほど懐いていること、翔平が柚葉を宝物のように溺愛していることを思えば、どこの馬の骨とも知れない赤の他人を近づけるはずがない。一人の人物が、頭をよぎった。だが、その可能性について深く考える勇気はなかった。いや、そんなはずはない……翔平は竜之介の呆然とした様子を見て取り、肩を叩いて何も言わずに歩き去った。竜之介は呆然と立ち尽くしたまま、しばらくの間言葉も出なかった。辺りが完全に闇に包まれると、20分に及ぶ花火ショーが始まった。暁と玲が、真奈美と幸せそうにケーキを切り分けている。絵に描いたような幸福な家族だった。暁は、そのケーキを持って翔平と美羽のもとへ歩み寄った。美羽が柚葉を抱き寄せ、花火を眺めている姿は、誰から見ても本物の家族のように見えた。柚葉は興奮気味に顔を輝かせている。ケーキを差し出された翔平は、一つを
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