翔平は、浩平の家で、少しの間彼に付き添っていた。そろそろ帰ろうか、という時だった。翔平は念入りに使用人に言い聞かせた。浩平に酒を飲ませないよう、しっかりと監視してくれ、と。「承知いたしました」と、使用人が答える。翔平は浩平と言葉を交わすと、そのまま邸宅を後にした。車を走らせ、中山家の本邸へと向かう。繁華街の通りには、秋の飾り付けがされていた。信号待ちで車を停めたときのことだ。横断歩道を渡る人混みの中に、見覚えのある二人の姿を見つけた。美羽はカーキのカジュアルなトレンチコートに白いロングスカートを合わせていた。秋風になびく長い髪の間から覗く、美しい横顔。手にはミルクティーを持って、隣の男と何か話しているが、その表情までは読み取れない。隣を歩く男は軽く頷きながら、眼鏡の奥から穏やかな眼差しを美羽に向け、静かに話を聞いていた。二人が横を通り過ぎるたびに、周囲の歩行者たちは皆、思わず振り返っていた。隠しきれないほどの美しさに、誰もが見とれていたのだ。信号が青に変わり、翔平はアクセルを踏み、その場を離れた。美羽と隆は劇場の方へと向かっていた。もともとオーケストラの約束をしていたため、二人とも予定が空いており、ちょうどこのオーケストラの東都公演の千秋楽と重なった。最近は仕事詰めでゆっくり休めていなかったから、美羽も少し気晴らししたかったのだろう。劇場に到着すると、指定の席へ座った。今日は満員で、空席はほとんどなかった。オーケストラの時間は90分間。開始から30分が過ぎた頃、美羽のスマホに柚葉から着信があった。彼女は急いで席を立ち、外へ出る。「イヴリンさん、いつ迎えに来てくれるの?」昨日、夕飯を美羽の家で食べる約束をしていたのだ。美羽の家族たちとの食事会だ。美羽は答えた。「5時を過ぎたら、迎えに行くからね」オーケストラの終わるちょうどいい時間だ。「じゃあ今、イヴリンさんのところへ向かってもいい?」美羽は考えた。今、柚葉は中山家の本邸にいるはずだ。本音を言えばあの場所には立ち寄りたくなかったが、断る理由もなく了承した。柚葉が到着するころには、オーケストラも終わっているだろう。美羽が席へ戻った。「今の電話、柚葉ちゃんから?」と隆が尋ねる。「うん。今日の夕飯を一緒
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