Todos los capítulos de 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?: Capítulo 21 - Capítulo 30

33 Capítulos

21.めぐみに相談

「…そう、不意を突かれてキスをされて、背中のカマが見える人間が増えてしまったと…」「あぁ。こういう場合どうしたらいい?」「そうねぇ…こんな場面に直面した死神、初めて見るから…困ったわ」「お前、俺の指導係だろ、何とかしろ」めぐみのオフィスに押しかけ、事態を説明する蓮。腕組みをして立ちながら、つま先をイライラと鳴らす足を、めぐみがピンヒールの踵でギュッと止めた。「…いってっ…!」「こんな出来の悪い死神は初めてでね?すぐに対処法が思いつかないわよ」慌てて靴を脱いでつま先を確認する蓮。…まだ謝罪の言葉を言わない彼に、めぐみは白けた顔で言う。「とりあえずキスしなさいよ。忘却のキス」「男に…?冗談だろ?」「だったらそうねぇ…凛花さんにさせてみたら?」「…は?」背中にカマが見える、と言い出した鮫島を、とっさに連れ去った凛花。とりあえず酒を飲ませてうやむやにすると、連絡をもらったばかりだ。「あの…ごめんなさい」「やっとわかった?少しは学習しなさいよ?」人にものを聞く態度がなっていないと、めぐみがブチ切れてそう言ったのだと気づく蓮。「まぁ…知られたけれどキスができないなら、仲間に引き入れるしかないわよね」「仲間?」「そうねぇ…見えたことについて、第三者に言おうとした瞬間、命が消える…とか何とか言って」「それは、本当にそうなる可能性があるってことか?」めぐみは少し考え…思いついたように言う。「確か、聞いたことがあるわ。あなたみたいに、キスの連鎖で正体がバレた死神が、3人目以降はカマを振り下ろしたって」「それは、鮫島が秘密を口外したら…俺が、カマを振るということか?」「そうなるわね」これまで…人間界で知り合った者を冥界に送ったことはなかった。どの死神が、誰に命を断ち切るカマを振るのかは…直前までわからない。…呼ばれるまま赴き、死に際にいる者にカマを下ろす。死神の仕事とは、そういうものだった。「もし鮫島が秘密を誰かに喋ったら、その瞬間、あいつの寿命が急変する…」死に際…俺が見える人間には、頭を下げられたことが何度もある。今はまだ死ねない…子供が大きくなるまでは、先に親を見送るまでは…夢を叶えるまでは…人間は、さまざまなことを言って命の期限を延ばそうと足掻いた。「そのくせ、時間を無駄に使うくせに…」「人間も、それを歯がゆいと思
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22.死神の嫉妬

『もしもし!?…何をしたんですかっ?』ガチャン…と携帯を取り落としたような音の後、凛花の慌てた声が聞こえる。「大したことはない。ちょっと火を噴いてやっただけだ」『…火って…っ!』「ムカつくから。俺の凛花にキスしやがって…」素直な言葉に、凛花の頬は赤く染まった。『別に、火傷のようなことにはなってないみたいですけど…どうするんですか?…延びちゃってますよ?』「今行くから」…次の瞬間、居酒屋の扉を開けた蓮。「…はやっ…」凛花はまだ携帯を耳にしたままだ。「外にタクシーを待たせてある。サッサとこいつを乗せよう」鮫島よりずっと背が高く、体格もいい蓮には、彼をタクシーまで運ぶなど楽勝のようだ。「…いいんですか?1人にして…秘密を漏らしたりしませんかね?」「…そうだった」結局3人でタクシーに乗り、蓮のマンションに帰り着く。ぐったりした鮫島を引きずって部屋に運んだので、彼の革靴には穴が開いた。「ど…どこに寝かせますか?」「リビングでいいだろう。ソファにでも横にして…」「待ってください!」凛花はソファの前のテーブルを片付け、そこに布団を敷く。「ソファじゃ、寝返りを打って落ちるといけないので…」自分の部屋から、大きな豚が万歳しているビッグサイズのバスタオルを持ってきて、横たわる鮫島に掛けてやる凛花。蓮は眉間にシワを寄せ…唇を噛んだ。「これ、凛花の匂いがするぞ?」「私の…?」不審げに、バスタオルの端を自分の鼻にくっつける凛花。「…別に、臭くはないと思いますけど」「バカめ。…お前の匂いとは、臭いではない。フェロモンだ。甘ったるくて、酔いそうな…」「どっちにしても、不快にさせません?」「させません。させませんけど、させてください…」凛花の手を取り、彼女の部屋に連れて行く。ワタワタと慌てる凛花の唇を、蓮は素早く奪った。灯る炎は、いつでも蓮から先につく。「ちょっと…待って…鮫島くんがいるのに!」「大丈夫。明日の朝まで起きることはない」起きたなら、見せつけてやりたい…俺の手で、色づく凛花の肌を。「バスタオルを掛けてもらったからって、特別だと思うなよ…」だらしない顔で眠っている鮫島の寝顔を思い出し、憎らしくその頬をギュッとつまむ妄想をしてから、蹴落とすように記憶を消す蓮。目の前の凛花を見て頬を緩め、ブラウスの裾から手を忍ばせ
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23.キスの約束と梅干し

「…ダメだ。そんなこと許されると思ってるのか?」 「でもあれもこれもダメじゃ、僕…いつか爆発して、課長の秘密を暴露してしまいそうです…」 肩を落とし、うつむく鮫島に、蓮は意外な事を言った。 「わかった。…君の要求を飲む。ただし、俺の前で、1週間に1度だけだ」 「本当ですか?…やったぁ〜!」 「え…?!ちょっと、どうしてそうなるの?」 鮫島の要求とはこうだ。 …たまに凛花とキスをする。 至ってシンプルながら、凛花の意向を聞かずにOKした蓮に不満が募る。 「…どういうことですか?週に1度のキスって、そんなことさせて、蓮さんは平気なんですか?」 スキップしながら鮫島が帰り、凛花は蓮をつかまえて、その真意を問い正した。 「…あいつが本当に俺の正体をバラしたり、誰かれ構わずキスしまくったら困るだろう?」 「でも、命を奪うって…」 「それはある意味脅しでしかない」 脅しだったとは…さすがに凛花も言葉が詰まる。 「人間の寿命を操作するなど、やってはならないんだ。…俺はすでに何度も、命の期限を延ばしてやるという違反行為を繰り返した。だからここにいるのだからな」 つらそうな表情になった蓮を見て、凛花は少し、寂しい気持ちになった。 …死神らしく振る舞わなかったから人間界に降りてきて、だからこそ私ども出会えた。 それは…嬉しいことではないのかな。 けれど私だって…言うことを聞かない人間を躊躇なく闇に葬る事ができる蓮を、愛しただろうか。 死にたくない、という人間の希望を無視できず、カマを降り下ろせなかった彼の方が好きなはず。 死を司る神なのに…どこまでも人間らしくて、微笑ましい。 「…クセが強くておかしな言動を繰り返す蓮さんが好きです」 「…いきなりどうした?」 「私の…人間の常識をすっ飛ばすし、ちょっとナルシストで裸を見せたがるけど…やっぱり好きです」 「…クセが強いとかナルシストとか。まさか俺が…?」 表情が、少しずつ明るくなる。 私に好きだと言われて嬉しいなら、私はもっと嬉しい。 「悪口を言われているのか愛の告白なのかわからないが…」 「大好きです」 「愚かだな…そんな可愛いことを言って、ただで済むと思うなよ?」 手を引いて膝に座らせ、凛花の唇をふさぐ蓮。
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25.鮫島が同居?!

「…火事?」「うん。…焼け出されちゃったんだよ」なんだか既視感がありすぎる…同じ思いをしたので、やって来た鮫島を追い返す事も出来ない。そこで、彼を部屋に上げる事にした。「それにしても…もう少し、なんか持てなかったの…??」焦って出てきたのがわかる鮫島の格好…両手に抱えてきたのは、枕とパソコン…そして服らしき布切れ。「…頑張ったんだけどさ…!とりあえずその辺に散らばってる服をつかんで…気づいたら逃げてた」その中にスーツがひと揃いあったことは奇跡だと、鮫島は笑った。「ところで、課長は?」「あ、今…ちょっと出かけて…」「そっか…家主がいないときに上がり込んで、悪かったかな」ふと…鮫島から焦げ臭い匂いが漂うのを感じた。焼け出されて逃げる時、煙に巻かれたのかもしれない。「…そんなのいいよ。私とは同期で、部長とは上司と部下なんだから…」「そう…かな」「それより、お風呂に入ったら?鮫島くん、焦げ臭いよ?」そう言われて遠慮するわけにもいかず、鮫島は案内されるままバスルームに消えた。「はらい〜せよ〜かんなら〜ばったぁ〜ほいっ!」しばらくして聞こえてきた歌は、外国語なのだろうか…意味はわからないが、鮫島の陽気な歌声は、とても焼け出された人とは思えなかった…『…本日18時過ぎ、М区S町のマンションから火が出て、3時間後に消し止められました』テレビをつけると、ニュース番組の映像に、煙と炎に包まれた知らないマンションが映る。「あ、これこれ!ここがうちのマンション!」いつの間にか風呂から出た鮫島が、バスタオルを腰に巻きつけ、背後に立っていた。「ボヤとかじゃなかったんだね。…本格的に燃えちゃって…これは戻れそうもないけど…」「うん。だから俺…いっそここに住もうかなって!」バスタオルを巻いた腰に両手を当て、なぜか清々しい決意表明をされた。…いや、私も居候だからいいともダメとも言えないけど。「…課長が戻ったら聞いてみて…って!近いっ!」振り返って立ち上がった瞬間、行く手をふさぐ鮫島。…そうだった。こいつはこういう不意打ちが得意だったっけ。「何をしている?」鮫島の背後、リビングの入口に、厳しい表情の蓮。そう…彼もまた、音をさせずに帰ってくる天才だった。「あの…鮫島くんが火事で焼け出されて…」「凛花には聞いていない」一歩近づいて説明する凛
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25.鮫島が同居?!

「…火事?」「うん。…焼け出されちゃったんだよ」なんだか既視感がありすぎる…同じ思いをしたので、やって来た鮫島を追い返す事も出来ない。そこで、彼を部屋に上げる事にした。「それにしても…もう少し、なんか持てなかったの…??」焦って出てきたのがわかる鮫島の格好…両手に抱えてきたのは、枕とパソコン…そして服らしき布切れ。「…頑張ったんだけどさ…!とりあえずその辺に散らばってる服をつかんで…気づいたら逃げてた」その中にスーツがひと揃いあったことは奇跡だと、鮫島は笑った。「ところで、課長は?」「あ、今…ちょっと出かけて…」「そっか…家主がいないときに上がり込んで、悪かったかな」ふと…鮫島から焦げ臭い匂いが漂うのを感じた。焼け出されて逃げる時、煙に巻かれたのかもしれない。「…そんなのいいよ。私とは同期で、部長とは上司と部下なんだから…」「そう…かな」「それより、お風呂に入ったら?鮫島くん、焦げ臭いよ?」そう言われて遠慮するわけにもいかず、鮫島は案内されるままバスルームに消えた。「はらい〜せよ〜かんなら〜ばったぁ〜ほいっ!」しばらくして聞こえてきた歌は、外国語なのだろうか…意味はわからないが、鮫島の陽気な歌声は、とても焼け出された人とは思えなかった…『…本日18時過ぎ、М区S町のマンションから火が出て、3時間後に消し止められました』テレビをつけると、ニュース番組の映像に、煙と炎に包まれた知らないマンションが映る。「あ、これこれ!ここがうちのマンション!」いつの間にか風呂から出た鮫島が、バスタオルを腰に巻きつけ、背後に立っていた。「ボヤとかじゃなかったんだね。…本格的に燃えちゃって…これは戻れそうもないけど…」「うん。だから俺…いっそここに住もうかなって!」バスタオルを巻いた腰に両手を当て、なぜか清々しい決意表明をされた。…いや、私も居候だからいいともダメとも言えないけど。「…課長が戻ったら聞いてみて…って!近いっ!」振り返って立ち上がった瞬間、行く手をふさぐ鮫島。…そうだった。こいつはこういう不意打ちが得意だったっけ。「何をしている?」鮫島の背後、リビングの入口に、厳しい表情の蓮。そう…彼もまた、音をさせずに帰ってくる天才だった。「あの…鮫島くんが火事で焼け出されて…」「凛花には聞いていない」一歩近づいて説明する凛
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26.蓮の食欲期

「……おはようございます。朝食、出来てますよ!」おにぎりTシャツのまま、キッチンから顔をのぞかせる鮫島。バターの甘い香りはフレンチトースト、コンソメの香りは野菜スープのようだ。「……すごい!これ全部鮫島くんが?」「いや、俺1人で作ったんじゃない。……なんて言ったら怖いよね?…ねぇ?!」「あはは!どうでもいい冗談!」朝から明るい2人を横目に、隙のないスーツ姿で部屋から出てきた蓮。「俺は先に行く」「え……梅干し、食べないんですか?」「今日はそんなにしょっぱい気分じゃないんだ」大股で玄関に向かう蓮を小走りに追う凛花に、蓮は苦しげに言った。「…あ、もしかして……食欲期?」「そうだ」クルッと凛花の正面を向いた蓮は、恨めしげに彼女を見下ろす。「今朝、鮫島の高らかないびきに起こされてな。ふと空腹を感じて冷蔵庫の非常食を食べようとした」「あ………それ、」「あぁ。見事に食べ尽くしてくれたようだな。愛しい凛花」腹いせのつもりで食べてしまったバタークッキー、そしてアイスクリーム……ごめんなさい……と素直に謝りながら、慌ててキッチンを指さした。「だったら、鮫島くんが作ってくれたフレンチトースト食べていけばいいじゃないですか!甘い香りがしてましたよ?」「いや。男の手料理は口に合わん」言いながら、凛花の腰を素早く引き寄せる蓮。「非常食がないのなら、凛花を食べることにしよう」「は…っ…むぅ、うぁ…ん」まさに食べられそうな勢いで、唇をふさがれる凛花。同時に腰に回った手が下に伸びていく。やだ……冗談でしょ?私を食べるって、アダルトな意味?!鮫島くんがいるのに、こんなところであられもない姿になるわけにいかない!必死に大きな手から逃れようとするのに、蓮は容易く凛花の動きを封じる。キスは次第にはじめの勢いを失い、代わりにねっとりと、エロスを感じさせてくる。中指がお尻の間をなぞり、もう片方の手が胸元を探った。この死神……本気だ。鮫島が自分たちの雰囲気を感じないはずはない。必死に蓮の胸を押して、やっと離れた。ゼイゼイと息の上がる自分とは違い、今すぐ玄関を出ていっても平気なくらい、冷静な蓮。あ……ダメだ。それなりに反応しているのがわかる。「あの、鮫島くんが同居してることを忘れないでください」「忘れてないが」「だったらわかるでしょ?人がいてこ
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27.死神は冷たい……

「めぐみだって……!聞いた?」どよめく女子社員のヒソヒソ話を聞きながら、凛花は引っ張って行かれる蓮を見送る。「そういえばずっと前から、怪しいって噂されてたじゃん…」「本当なのかなぁ、だとしたらショックすぎるので、早退してもいいですか?」まだ朝だろ……と、どつかれ笑い合う女子社員と違い、凛花の顔色は色を失っていく。深海さんと……本当に何かあるのだろうか。うつむく凛花を、鮫島が心配そうに見ていた。「皆の前で公表したらいいのに。……付き合ってるって」「……死神と?」「そこは言わなきゃわかんないことでしょ」ランチに行く気になれない凛花を、鮫島が上手に誘い出し、色をなくした表情の理由を予想して、解決案を示してくれた。「皆には内緒にするって約束してる」「……それなのに深海さんとは、あんなに遠慮のない感じなの?そんなの見せられたら、凛花がどう思うかくらい、わかんないのかな?」「あ、多分わからない」「え?……そうなの?」先ほど、鮫島により注文されたラーメンをすすりながら、ため息をつく凛花。「今回は、私が悪いんだよ」普段食べない蓮に、食欲期というものが存在すると説明した。「そういうときは甘いものを食べたいって知ってたのに、深海さんのことでちょっと険悪になって、腹立ち紛れに全部食べちゃったから」「はぁ……それで皆から、チョコやらプリンやらを食べさせられてたのか」それっていつ終わるのかと問われ、凛花は考え込む。そういえばいつ終わるんだろう……まだまだ死神の生態を掴みきれていないことに気付かされた。ランチから戻ってみると、すでに自分のデスクに着席している蓮の姿に気づいた。「……も、戻りました」「あぁ、」そっけない返事が、蓮の気持ちと関係しているわけではないとわかっている。例えば鮫島と2人でランチに行っていた事に対する嫉妬とか。そう思えば、ウジウジしている自分はもしかしたらとても滑稽なのかもしれないと気づいた。……そうだ。めぐみとの関係を聞いてみればいいんだ。もしかしたら、ショックを受けるかもしれない。例えば元カノ、例えば……体の関係、セフレだったとか。どちらにしても聞いてみよう!強い決意を胸に、パッと後ろを振り返って蓮のデスクに目をやって、突然ふらつきを感じて驚いた。瞬間、視線が動いた蓮と目がバッチリ合い……ドキっとしたのも束の
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28.Side鮫島 凛花のいない夜

「鮫島くん、それってキスをして風邪を移していいよ、ってこと?」……うまく話をそらせばいいものを。赤い顔をした想い人は、高熱のせいでトロンとした目を僕に向け、ド直球で尋ねてくる。「そうだね。だって課長が冷酷すぎて可哀想なんだもん。僕にはけん制してくるくせに。こんな大事な場面で放っておくとか、信じられないよ」「うん。……本当にね」目を伏せた鈴原さんの表情が憂いを帯びすぎていて、僕が泣きそうになる。自分が恋をした相手は死神なんだから仕方がないと、必死に自分に言い聞かせているように見えた。だから、僕なりのアドバイスをしてあげたんだ。「少しずつ教えていきなよ。人間の感情や思考をさ?それでもこっちと同じ感覚を持てないとしたら、願い下げっ!って、突き放してやりな?」「ごめんね、私が自分からでもキスをしたいのは、課長だけなんだ」「……いきなり本題に戻すね。軽く傷ついたよ」アハハ…っと、明るく笑って突き放す表情が、まだ少し弱々しくて。早く元気を取り戻すようにと願いを込めて、僕は医務室をあとにした。「……どこへ行っていた?」「は……っ?!」課長のマンションに帰り、リビングのドアを開けて……度肝を抜かれた。真っ黒のマントを羽織ってフードを目深にかぶり、手にはあの、大きなカマ。その姿はThe・死神。正面から覗く高い鼻と引き締まった唇は、課長だと思いたいけど違ったらどうしよう……怖いな。必死に下からフードの中を覗き込むように確認し、それでも本当に課長なのか怪しいと思う僕は用心深い男だ。「お務め……ご苦労さまです」とりあえず、敬礼しておけば間違いない。それなのに、地を這うような低い声が落ちてくる。「お前まさか……凛花のところに行ってないよな」「え……いえ、あの」行きました。だって課長が冷たいから……と言おうとした瞬間、課長がカマの柄をドンッと床に突き立て、その振動で3センチくらい浮いた僕。……なんの真似だ?儀式か……それとも八つ当たりか?もしかしたら死神家業をやりたくなくて、苛立っているのかもしれない。「俺がいない間に凛花に会いに行ったら、次はそれなりの罰を与えるから覚悟しとけ」「なんですかそれっ……僕と鈴原さんは同期ですよ?」「同期だから、なんだ?」「そ、それは……具合いが悪くなれば心配して当然の仲だってことです!」目元はフードに
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29.親友夫婦の秘密

「そっか……心が揺れたのか」「うん。あんまりにも人の心を理解してなくて、冷たすぎるからさ」体調もすっかりもとに戻り、親友、絵里奈の家に遊びに来て、口を尖らせる凛花。話はあの、体調を崩した日にさかのぼる……あの日、会社の医務室に1泊するという前代未聞の宿泊経験をした私を、翌朝恐ろしく早く出社した蓮が迎えに来た。「なんか、食べたのか?」何ごともなかったかのようにオフィスに連れ戻しながら、蓮はいつもの視線をこちらに落とす。 「食べましたよ」鮫島が差し入れしてくれたゼリー飲料のことだ。「……」なにを言いたいのだろう。こんな早朝にオフィスに連れてこられ、これじゃただの早朝出勤の人だ。そんな私が、昨夜はこの人に医務室に1泊させられたと同僚たちに話しても、誰も信じないだろう。「だとしても、あれだな。だからあの、これ……」「は?なにをアレだのコレだの言ってるんですか?」「いや……まぁ、」上着の内ポケットに手を差し入れた蓮が取り出したのは……「お、にぎり?」「あぁ、鮫島が、作り方を教えてくれた」耳元でボソっと呟いた吐息の熱が、ほわん…と鼓膜を揺らす。梅とおかか、大葉のザク切りが混ぜ込んであるひとくちサイズの丸いおにぎりは、ストライプ柄のビニール袋に入って、蓮の手のひらに乗せられていた。「……やだぁーっ!いい話じゃんっ!ちょっと惚気?ねぇっ、惚気なの?」ビシバシと人の腕を叩きながら、絵里奈は右に左に身悶えた。「ちょっと…!そんな変な捻りを加えたら、赤ちゃん生まれちゃうよ?」「大丈夫よ!まだ臨月に入ったばっかりだもん!」絵里奈は手土産に渡したバタークッキーをひとつ口に入れ、それにしても……と話を戻す。「その鮫島くんって同期……あんたのこと好きって言いながら、秘密は守るわ優しいわ、人間離れした彼氏さんとの間も取り持ってくれるなんて、なかなかの優良物件なんじゃないの?」「うー……ん」確かにそう。医務室にお見舞いに来てくれた夜、風邪を移していいよ、なんて……ときめいたのは確か。「でもやっぱり、翌朝ちっちゃなおにぎりをコロコロ出した課長の方が、ずっとずっとときめいた!」「そのときめきを生み出す協力をしてくれたのは鮫島くんなのにね。……でもそういう人、いるよね」悪者になり切れない人。……結局自分が損をしてしまう人。「うん。だからこそ
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30.死神の気配

「何度か絵里奈に言われたんだ。……子供を、あきらめたいって」「嘘……」「嘘じゃねぇって。結局話し合って、結婚して子供を迎えて、家族になろうってことになったけど、絵里奈はそれからずっと……浮かない顔をしてる」付き合っている頃より笑顔が確実に減った、という康太の顔は、真剣に落ち込んでいるとわかる。初めて聞く話に、凛花も強いショックを受けていた。「俺、どうしたらいいかわかんなくてさ。……会社の人に相談に乗ってもらった。出産経験のある年上のパート勤務の人で、その人にはすでに中学生の子供がいて、絵里奈の気持ちを教えてくれると思ったんだよ」「それを……絵里奈は浮気だと誤解してるってこと?」「そうだと思う……けど」「けど、なによ?」話は予想できた。もしその通りなら、なかなかの修羅場が待ってる気がする……「最近そのパートの人が、特に用事もないのにメッセージを送ってくるようになった。……内容は大したことない。その日の夕飯の写真とか、旦那さんが遅いって愚痴とか。俺も、絵里奈と会話がないから寂しくて、その人とメッセージのやり取りするようになってさ、気付いたらずっと繋がってる」おはようからお休みまで……付き合いたてのカップルの話として、聞いたことはある。「それは裏切りでしょ、立派な……」「でも話しかけてもかけても、ろくに返事もないんだぜ?理由を聞いてもハッキリしないし……さすがに俺だって不安になるよ」幸せな親友たちのリアルな現実に胸が痛む。康太はともかく、絵里奈はそんな自分のことを打ち明けてくれなかった。康太にそんな態度を取ってしまう心の内を、教えてくれなかった。凛花には、それがショックだった。「……それでもさ、帰ったら話しなよ。なんか、心配ごとはないかって。体調に変化はない?って聞いてもいいかも」飲み残しの康太のハイボールを奪って、シッシッと手で追い払う。「……凛花、なんか知ってるのか?」「いいから。とにかくすぐに帰って絵里奈に話しかけて。答えなくてもずっとしゃべりかけるんだよ?あんたの不安な気持ちを打ち明けて、ごめんって言って!」……その時だ。ふわりと冷たい風が、自分たちの周りを取り囲んだ気がした。とっさに出入り口に目をやるが、お客の出入りはない。「……そ、それで、会社のパートさんとメッセージなんかやり取りしちゃダメだからね?」……そも
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