「凛花……っ」病院に到着するとすぐに康太が飛び出してきた。「絵里奈は……」「手術室……昨日帰って話をしてる最中、急にお腹を押さえて苦しみだして……」話を聞きながら、あちこちに視線を彷徨わせた。もし来ていたらどうしよう……。命の期限を伝える、死神が。「まずは帝王切開で赤ちゃんを産ませるみたいだ。……なぁ、絵里奈になんかあったら俺、どうしよう……赤ん坊が生まれても、俺1人だったら……」「しっかりしな!康太っ」うろたえる康太の肩を叩き、用意された控え室で待っていられるはずもなく、手術室の前に移動した。両手を組み、絵里奈と赤ちゃんの無事を必死に祈った。こんな時は、蓮に会いたくない。会ってはいけない……黒マントの蓮には特に。そう思うそばから……ふと、何かが動いた気がして視線を向けた。黒いものが映った気がする……ハッとして、あらゆる方向を確認すると、手術室の反対側の壁に、黒いマントの裾が波打ったのが見えた。「……どうした?凛花」よほど怖い顔をしていたのだろう。康太が不安そうに声をかけてくる。そうだ……康太には見えないんだ。やがて、はじめからそこにいたかのように現れた。風もないのに揺れるマント……フードを目深にかぶって、わずかに覗く、尖った高い鼻先と、その下の立体的な唇。蓮だ……まさか絵里奈を?……絵里奈の赤ちゃんを、冥界に送ろうというのか。「……やめて」あらぬ方向に向かってよろめきながら歩いていく凛花を、不思議そうに見つめる康太。「どちらも、私にとって大事な命なの。だからお願い……2人だけはやめて。見逃して……お願いだから……」凛花にしか見えない「死神の蓮」は、表情ひとつ変えず、その時を待っているように見える。「……待ってっ……っ!」叫んだのは、そろりと動いた手に、大きなカマが握られたから。康太には、壁に向かって祈りを捧げているようにしか見えない。まるで誰かの足元にひざまずくようにして、必死に頭を下げている凛花。康太に止められても、凛花は何度でも頭を下げた。こちらの声など聞こえないかのような死神の蓮に、絶望しながら。やがて……赤ん坊の泣き声が聞こえた。涙でぐちゃぐちゃの顔を突き合わせ、手術室の前に走る。「生まれた……」……確かに聞こえる、赤ちゃんの泣き声。喜びに浸りながら、まだ不安は消えない。蓮がいるということは、冥
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