診断書を一通印刷し、ウォーターフロント・コートの自宅に戻った柚葉は、一人満足げな笑みを浮かべた。これで解決ね。自分と智也の間にあった問題はこのことでなんとかなるだろう。子どもは母親だけでなく、父親を縛ることもできる。男が非情でない限りは……だが、智也はそんな男ではない。もし彼が非情な人間であれば、自分と凛の間でずっと揺れていたはずがないのだから。男に一途さなんて期待できない。ただ最後は、どちらの存在のほうが重いかを秤にかけるだけ。自分は今、このお腹に智也の子どもを宿している。これでもなお、谷口家は自分から金を取り戻そうと考えるだろうか?いいや、これからは谷口家が金も労力も惜しまず、自分と子どもを支えることになる。結局、凛は自分に及ばない。生まれも育ちも良く、智也が先に愛したのも自分だ。それに、智也との子どもだって、凛より先に宿した。このことは隠し通すのではなく、誰かに知っておいてもらってこそ力を持つ。それも、口が堅い人物に。柚葉の頭に真っ先に浮かんだ人物は、智也の長年の友人である正人だった。【正人さん、智也のことを分かってるあなたに、ちょっと聞きたいことがあるの。もしもの話なんだけど……もし私が妊娠したら、凛さんがいる智也は、私に子どもを堕ろせって言うと思う?】そして、自分の両親にもこのことは伝えよう。両親だからこそできることもある。例えば、智也に結婚を迫ること。智也からは家で大人しく待っているようにと言われていた柚葉だったが、彼の言うことなんて聞かず、帽子とサングラスとマスクを身につけると実家に向かった。柚葉の両親は、英樹や柚葉の一件で休暇を取り、まだ家に残っていたのだ。だが、実家を松田家よりも見劣りする場所だと思い滅多に戻らない柚葉が、急に現れたので両親は少し驚いた。さらに、芸能人のように顔を隠した姿を見て、両親はさらに怪訝な視線を柚葉に向ける。「どうしたの?」と百合は柚葉に駆け寄り、帽子とマスクを取った。一目見ただけでは特に問題がなさそうだったが、よく見ると耳の後ろや首、さらには手の甲や手首まで、あざだらけになっていた。「転んだのか?」隆平が尋ねる。「違う」柚葉はソファに座り、両親に向かって喉が渇いたと言った。百合が水を持ってきてくれたが、その柚葉のわがまま
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