3日前。智也は取締役会から呼び出しを受けた。ホシゾラ・テクノロジーのビルを出るため、一階ロビーを通り抜けるその間、社員たちの視線が何度も彼へ向けられ、すれ違いざまにひそひそと話す声も聞こえる。ホシゾラ・テクノロジーの社員たちがどこまで知っているかは不明だが、スノウ・セミコンダクターのソーレンとの協力関係が解消されかけていることだけは周知の事実だった。ホシゾラ・テクノロジーにとってこれが唯一のプロジェクトではないが、今年から来年にかけての最重要案件であり、常に智也自身が指揮を執ってきたものだ。入札の失敗に始まり、翼の特許プロジェクトはかすりもせず、そして今度はスノウ・セミコンダクターの協力関係終了の危機と、全てが智也に関連している。今年の智也は運気が悪いという声もあれば、身の回りにトラブルを持ち込む人間がいるせいだという噂もあった。だが上層部には徐々に実態が伝わり始めていた。智也は結婚していたが、すでに離婚した、と。結婚や離婚自体は珍しいことではない。しかし智也は婚姻期間中に浮気をし、愛人にかなりの金を渡していたことが問題なのだ。真相まで知っている人間は少なかったが、それでも一度広がった噂は、瞬く間に社内の空気を変えた。たまたまその話を耳にしたことがある浩は、何度か厳しく制止もしていた。しかし、浩が智也の運気を巡る噂話は聞き流し、不倫の件だけを否定していたため、それが逆に、社員たちの中で噂の信憑性を高めてしまった。やがて、智也と浩が険しい表情のまま会社を出ていく姿を見て、社員たちはそれぞれ考える。谷口社長は、どんな処分を受けるのだろうか?解雇されるのでは……そんな噂も聞こえてきた。社員たちは複雑な気持ちを抱えながらも、最後にはため息をつき、それぞれの持ち場へ戻っていく。車内での智也は目を閉じて、仮眠をとっているようだった。あれほど取り乱していた浩も、そんな智也を見てすっかり諦め、心を決めるしかなかった。きっと社長は、もう自分の結末が分かっている。今日本社へ向かうのは、ただ形式的に呼ばれ、叱責を受け、そして判決を聞くためだけなのだ。景山グループ最上階会議室。取締役会の人々と共に、景山姉弟も出席していた。役員たちは憤りを隠すこともせず、智也の身勝手な行いが原因でホシゾラ・テクノロジーは2つの案件を失い
Read more