柚葉は目に涙を浮かべる。「でも、凛さんとはもう離婚……」智也がかっと目を見開いた。「お前に言われなくても分かってる!」そう言って、智也は病室を出て行こうとした。柚葉は焦って智也を引き止める。「智也、明日の朝は妊婦健診があるの。私ひとりじゃ不安だから……」立ち止まった智也が低い声で言った。「タバコ吸ってくる」夜が明けるまで、智也が喫煙所から戻ってくることはなかった。翌朝、タバコの匂いを纏っていた智也は、看護師から喫煙は胎児の成長に影響すると注意を受けた。智也は素直に頷き、そのまま柚葉を連れて検査へ向かった。柚葉が先にトイレへ行って検体を提出し、その後、採血が始まる。血液検査に一本。肝機能と腎機能の検査に一本。感染症の検査に一本。甲状腺機能の検査に一本。合計4本で量は20ミリリットルにも満たない採取だったが、終わった後は立ちくらみがすることもあるため、病院側からは事前に軽食や飲み物を用意するよう言われていた。智也はそれらを購入済みだった。採血を終えた柚葉は、「痛い。気分が悪い」と何度も智也に甘え、止血のガーゼを押さえながら、智也に食べさせてほしいとねだる。他人から見れば、仲睦まじい二人に見えるだろう。すべての検査が終わる頃には、すでにお昼になっていた。超音波や心電図はすぐに結果が出て、胎児のNT値にも異常はない。柚葉は喜んで言った。「智也、私たちの子に異常はないって。すごく健康なんだね」血液検査の結果には少し時間がかかるため、肝機能と腎機能、甲状腺機能の結果が出たのは夕方だった。残りの検査結果は翌日になる。今のところ深刻な異常はなく、柚葉に入院の必要はなかった。しかし柚葉は、明日また来るのが面倒だからと言い、なんとしてでも入院して智也に付き添ってもらおうとした。子どもを理由にして智也の罪悪感を刺激しようとした矢先、一本の電話が柚葉の行動を妨げた。それは、松田家からの電話だった。使用人の声が聞こえる。「お嬢様、裁判所からの書類が届きましたよ」続いて、瞳の激怒した声が響いた。「柚葉!あなたには家がないわけ?なんでこんな変なものが、家に送られてくるのよ!お義父様がショックで倒れちゃうじゃない!書類は運転手に家まで届けさせたから」そのまま電話は切られた。真っ青になった
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