All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 91 - Chapter 100

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第91話

シヴァについてあれこれ難しく考えるのは、やめにした。考えたって分からないものに悩んで、成績を落としたら大変だ。「おっ……わった~」十日間の試験期間を終えて、私はぐっと背伸びをした。体中の凝りが軋むような感覚が何とも気持ちいい。「お疲れ様です」真後ろのヤコブがねぎらいの言葉をかけてくれる。一番後ろの席のレオナルドを見ると、机に突っ伏してぐったりしていた。彼らしい光景に思わず笑ってしまう。イザベラを見ると、疲れた様子は見られなかった。周囲の令嬢といつも通り会話をしている姿を見ると、さすがだなぁと感心してしまう。「今日は午後は休講ですが、この後はどうしますか? 昼食とか」「そうよね。どうしようかしら……」「姉上、食堂行きましょうよ!」急に声を掛けられ驚いてしまう。見るとレオナルドがにこにこ笑っていた。いつの間にか復活したようだ。「兄上が労いのデザートを用意してるって言ってましたよ」「そう言われると、行きたくなるわね」少し考え、行くことに私は決めた。席を立つと、せっかくだからとイザベラにも声を掛ける。さすがに懲りたのか、周囲の女子生徒はもう私達の会話に割って入ることは無い。私が近付くと蜘蛛の子を散らすようにささっといなくなってしまった。「労いにってデザートが用意されているそうなの。食堂に行かない?」「あら、良いわね」イザベラも立ち上がり、四人で教室を出る。私と接することが多くなったことで、イザベラへの明確な悪口はすっかりなりを潜めていた。心なしか明るい彼女の様子に安心してしまう。 シヴァやイザベラの侍女とも合流し、食堂に着くとすでにアレクサンドたちが到着していた。「試験お疲れ様」「アレクサンド様こそ、お疲れ様です」
last updateLast Updated : 2026-03-18
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第92話

話を止めて皆がアレクサンドを見る。「この後、二週間の長期休暇があるよね。休暇明けに、学園祭があるのは分かるかな?」そうだ。すっかり忘れていたが、ゲーム本編でもあったエピソードだ。この学園祭を誰と一緒に回るかで、誰のルートに進んだかが分かる。ここまでの成績や好感度が、ある程度のレベルに達していないと攻略対象にフラれてしまい、攻略難易度がさらに上がってしまうのだ。アレクサンドのように、その時期に一番学園内で身分の高い者が運営代表者に選出されて、学園から声が掛かる。アレクサンドは去年同様、声を掛けられたのだろう。この話をしたくて、わざわざレオナルドが声を掛けたのだろうか?そう思い彼をちらりと見ると、気まずそうに口笛を吹いていた。絶対わざとだ。「昨年もありましたネ。お手伝いさせて頂きましタ」「昨年はありがとう。頼りだった先輩方は卒業してしまったし、今の三学年には特に人材もいないし……できればこのメンバーで運営していきたいと思っているんだ」アレクサンドはティーカップを静かにテーブルに置くと、皆に視線を投げかける。その真剣な眼差しに、一同の間に緊張感が走った。「そういうことならぜひお手伝いさせて下さい。仕事内容は何がありますか?」メガネをくいっと上げながらヤコブが尋ねた。レオナルドも明るい表情でアレクサンドを見ている。「もちろん、兄上の手伝いはしますよ。ね、姉上」「え、ええ」私は不意に話を振られ、少し慌てて頷いた。私の隣で、イザベラは期待を込めた眼差しをアレクサンドに向けている。「私も参加させて頂いてよろしいのですか?」「もちろん、頼りにしているよ」アレクサンドの言葉に、イザベラは微かに頬を赤らめながら微笑む。彼女に耐性ができたので、今までのようにあからさまな好意を向けている様子は見られず、ポーカーフェイスを貫いている。その控えめな様子
last updateLast Updated : 2026-03-18
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第93話

休暇までの残り三日。その間に廊下には、各学年の上位成績者が貼り出されていた。多くの生徒たちが押し寄せ、廊下は興奮した人混みに包まれている。私もイザベラと肩を並べ、人々の間を縫って掲示板の前にたどり着いた。各試験内容と、総合評価の上位者十名までが書かれている表を見る。頑張ったつもりではあるが、成績はどうだっただろうか。それに、皆の成績も見てみたい。「見て! 魔法の実技はリリアンナが一位よ」「イザベラこそ、筆記試験二位じゃない。淑女クラスも二位よ」私は筆記試験は欄外だったらしく、載っていなかった。しかし、さすが魔力は多いし通常よりも早い時期から魔法訓練をしていたのだ。魔法で負けることは無い。続いて選択クラスを見ると、淑女クラスでは私が一位だった。王妃教育まで受けているのに、他に負けてしまっては面目が立たない。ロミーナにライ語を学んでいた成果も発揮されているのだろう。後でお礼を言わなくちゃ。「リリアンナは淑女クラス一位じゃない。さすがに王妃教育を受けているだけあるわ」明るくイザベラは褒めてくれるが、そんな私と僅差であるイザベラが凄いのだ。文官クラスではヤコブが圧倒の一位だった。レオナルドはと言うと、無難にどの科目も五位をキープしている。全て五位とか、逆に凄いかもしれない。最後に総合成績を見てみる。一位はヤコブ・ヘルトル。魔法実技以外はほぼ満点だったようだ。さすがだなと思いながら周囲を見ていると、人混みの中、ほっと胸を撫で下ろしている彼が見えた。成績上位者でなければ、あの王族専用食堂を使ったり、アレクサンドの側近候補でいることはできない。この成績は彼にとって死活問題でもあるのだ。二位はイザベラ・ナンニーニ。一位こそ取らないものの、安定して三位以内には入っていた結果だろう。三位が私、リリアンナ・モンリーズ。
last updateLast Updated : 2026-03-18
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第94話

「学園祭なんて楽しみですね」レオナルドの婚約者。マルグリータとは長期休暇と言うことで久しぶりにゆっくりお話ができた。風の動きに合わせて乳白色の長い髪が揺れる。濃い青色の瞳を瞬かせ、天使のように愛らしい微笑みを向けてくる。淡いピンクを中心に、差し色に黄緑色が混ざったドレスは、まるで花の精のようだ。ここは彼女の家であるヴァイゲル公爵邸の中庭。手入れの行き届いた円形の芝生を取り囲むように、季節の薔薇が咲き誇っている。日除けの天幕が張られた白大理石のテーブルで、私たちは優雅にお茶を楽しんでいた。明るい日差しと花の香りが、会話を弾ませる。「もう、準備が忙しくてくたくたよ」「そこそこ大きなイベントですものね」マルグリータは楽しそうにくすくすと笑う。「私も遊びに行くことは出来ますか?」「ええ。招待状を送られた貴族や商人は出入り可能なの。もちろん、警備やチェックは厳重だけどね」さすが貴族の学園祭だ。準備で何より大変だったのは、警備の方だった。さすがに不審人物を学園内に入れるわけにはいかない。そのための兵の人数や配置、交代の時間。魔法による立ち入り禁止区域への障壁を貼る王宮魔導士の手配と、魔法効果の持続時間の確認。警備1つとっても、やることは多くて大変だ。招待状にも、偽装防止のためになんらかの仕掛けがされているのだとか。それらをずっとアレクサンド一人で回し続けるわけにもいかない。休憩時間や、友人と遊ぶ時間も確保するために、私やイザベラ、レオナルド達が交代で見回りやアレクサンドの代わりを務めるためのスケジュール管理も必要だった。「そういえば、お姉様は昨年は学園祭に行きましたか? アレクサンド殿下の婚約者ということは、お呼ばれしたのでしょう?」期待したような目を向けてくるが、私は苦笑いした。残念ながら、昨年のあの時期は旧ソプレス王国関係でルネとシヴァと一緒にアマトリアン辺境
last updateLast Updated : 2026-03-18
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第95話

「イザベラと回る予定なの。マルグリータも一緒に回って良い? 一人だと不安でしょう?」「そうですね! ありがとうございます、姉上」レオナルドは心底ほっとした顔で言った。「リタ一人だったら、どんな男が寄ってくるか……」「いくら護衛がいると言っても、ねえ……」私も真面目な顔で頷く。「そんなまさか、幼児ではないのですから」困ったように言うマルグリータの様子に、私は噴き出して笑ってしまう。レオナルドもマルグリータも、つられて笑う。本当に気持ちの良い午後のひとときだった。  ***  学園祭の事前準備に関しては一通り終わり、私達は一息ついていた。現在、私達は王城にあるアレクサンドの執務室にいる。磨き上げられた机や高い天井が王族の権威を感じさせるが、気心の知れた皆で集まっているためそこまで緊張感はない。「イザベラ、二日目の一緒に回る時間だけど」「どうかしたの?」こくりと首を傾げ、隣に座っていたイザベラが私の方を見る。今日着ているのは白と黒の格子柄をアクセントにした紺色のドレスだ。変わった模様だが、最近他国から来た流行りものの柄らしい。同じく格子柄のカチューシャを付け、髪は下ろしている。「実は、マルグリータが一人になってしまう時間帯らしいの。一緒に回っても良いかしら?」私の提案を聞き、イザベラはすぐに優しい表情を浮かべた。「もちろん。お一人では心配だものね」「よろしくお願いします!」対面に座るレオナルドが、まるで臣下のように腰を折る。そんな彼に、驚いたようにイザベラは目を見開いた。王族であるレオナルドが頭を下げている姿など見たことが無いので、驚くのもしょうがない。「レオナルド、マルグリータを溺愛
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第96話

学園には女装で来ているシヴァは、男性の姿をすれば問題はない。一番の問題は、私がどう変装するかだ。モンリーズ家の公爵令嬢。第一王子の婚約者が、いつも一緒にいるアレクサンドやレオナルド、ヤコブとは別の男性と二人だけで見て回っていれば不自然だろう。「そういえば、ちょっと質問なんですが……」そう言いながら、私はそっと手を上げて発言した。「見て回る時に、人に絡まれたりするのが心配で……静かに回りたいんですけど、皆さんは何か変装とかするんですか?」そう言われて、皆は不思議そうに私を見ていた。もう何も思いつかなくて聞いてみたが、失敗だった⁉ と心配になる。「うーん、警護の兼ね合いもあるし、私はしないかな。専属の警護はいるものの、警備隊や憲兵全員に変装後の姿を覚えてもらうのも難しいからね」早速答えてくれたのはアレクサンドだった。確かに、学園祭と言う人混みの中で変装して警護の手間を増やすのも良くないか。「しつこく絡んでくる人がいれば、迷惑だと言えばいいのよ」気が強いイザベラらしい感想だ。そうもいかないんだよなーと困ってしまう。私が苦笑いしていると、見かねてヤコブが口を開いた。「えっと、リリアンナ嬢はあまりそういったことが得意ではありませんので。他の貴族もいらっしゃりますし、純粋に楽しめないのが心配なのでは?」そうして横から補足を入れてくれる。さすが現代日本人仲間!人混みやらパーティやらが苦手な気持ちがよく分かっている。「えっト、そういうことでしたラ」そう言ってロミーナも手を上げてくれた。「魔法はどうですカ? 変装魔法、一学年はまだ習っていませんでしたっケ?」「変装魔法?」そう言われて、私は気付く。ここは魔法もあるファンタジーな世界。変装のための魔法があったって、おかしくないじゃないか!いまさらそのこ
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第97話

「これでどうだ?」ちらりと見ると、肌の色が少し日に焼けている。髪の色は日本人だった時を思い出させる漆黒だ。慌てて私は鏡へ向かった。そこには、真っ黒な髪にピンク色の目の美少女が立っていた。服装まで魔法で変えられており、シンプルなワンピースを着ている。どう見ても商人の娘にしか見えない。すぐにシヴァを振り返ると、心なしかドヤ顔していた。満足のいく出来だったのか、その仕草は可愛い。「シヴァ! 凄い! ありがとう!」飛び上がって私は彼に抱き着いた。だって、こんな繊細で大変な魔法をあっさりやってしまえるのだ。本当にシヴァは凄い。「いつの間にこんな魔法覚えたの⁉」「昨年くらいの訓練の時に……ルネさんも、正体をごまかすのにちょうどいいからって」そういえば、シヴァは誰かから逃げているんだっけ。確かに、見つからないようにするにはこんなうってつけの魔法はない。「まさかこんなことに使うとはな……」「そういえば、なんでこの見た目なの?」特に指定しなかったが、黒髪にピンクの目だなんて……シヴァってこんな女の子が好みなの?そう想像してしまい、モヤモヤした感情が溢れてくる。シヴァは私の頭から手を離し、質問に答えた。「こういう色にしたいのかと思って。さっき、黒と赤だっただろ?」「ああ、そっか」少しがっかりしたような、安堵したような複雑な気持ちになる。「じゃ、シヴァはどんな女の子が好み? 黒髪? 茶髪? 髪は長い方が良い?」「淡い髪の色に、薔薇色の目がいい」「え?」まっすぐ私の方を見て言うシヴァの言葉は、どう考えても私のことだった。嬉しいと同時に照れてしまい、一気に顔が熱くなる。「別に、いつも通りのリリーでいいよ」「そ、そう&
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第98話

さすがに二時間以上もぶっ通しで書類とにらめっこしていれば疲れる。私は机に突っ伏して目を閉じた。机の冷たさが、熱した頭を冷ましてくれて気持ちが良い。「お疲れ様。少し休憩を入れようか?」アレクサンドの言葉に、皆は一斉に手を止めた。私達が使わせてもらっているのは、職員室横の会議室だ。大きな長机が二つ並べられ、上には山積みになった書類が混沌を生み出している。書類の山に顔を埋めていたいつものメンバーは、皆疲労の色を隠せないでいた。「三学年が二クラスも劇を希望だってさ」「最近、流行っている劇がありますかラ。令嬢が多いクラスハ、そうなってしまうんでしょうネ」体を伸ばしながら呟くレオナルドに対し、ロミーナはため息をつくようにそう答えた。「役者はご自分たちで? それとも、誰かを雇うのでしょうか?」「役者を雇ったら、予算がなくなって舞台すら作れなさそうですが……」イザベラの疑問にヤコブが答える。女性陣の熱気で舞台をするにしても、完璧な役者を揃えれば済むわけではない。どうするのかは本当に疑問だが、見てみたくはある。各クラスの教室と場所は決まっている。その中をいかに改装するのかが大切だ。もともと机やいすはあるので、カフェにしてしまうのが一般的だが、それでは面白みに欠けるし、差別化する工夫が必要。かといって、ちょっと変えて舞台にしてしまうと予算が大幅にかかる。なんとも難しい選択だ。「レオナルドのクラスは何をするんだい?」「無難にカフェですね。魔法が得意な者が多かったので、魔法での演出を取り入れてみようかと」「デザートや軽食のために、プロの料理人を雇うんです。宙に浮くテーブルや椅子なども企画にあり、安全配慮のため王宮魔導士を一人呼ぶつもりです。予算はそこで尽きてしまうので、従業員は自分たちでするしかありませんね」レオナルドの説明にヤコブが補足を入れてくれる。宙に浮くテ
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第99話

何だかんだ忙しく立ち回り、とうとう学園祭前日となった。私達は二人一組で各クラスの準備状況と当日のリハーサルを見て回ることになった。メンバーは七人なので、一人は何か連絡があった時のために会議室で留守番だ。「じゃ、一学年目は私とレオナルドで行きますね」私がそう言うと、皆が不思議そうな目で見てきた。まあ、確かに婚約者であるアレクサンドがいながら、他の人と一緒とかは不自然だよね。でも、ちゃんと言い訳は考えてあるのだ。「私のクラスは、私の意見が大きく反映されているから、絶対に見に行きたいんです。アレクサンド様は立場的にも三学年を回った方が良いでしょうし、そうなると必然的に別行動になるかと」そこまで説明すると、少し納得したかのような雰囲気が流れる。もう一息だ。「確かに、身分で言うと王族が見回った方が、学園祭がはじめての一学年目は活気づくでしょうね。三学年目は先輩ですし礼儀を考えてアレクサンド殿下で、二学年目はステファン様、ロミーナ様が回るとして……」補足を入れてくれたヤコブの視線がイザベラを向く。周囲の面々も視線を寄せこし、イザベラは急なことに驚いていた。「事務が得意な私は控えていた方が良いでしょうし、イザベラ嬢。三学年の担当、お願いできますか?」「は、はあ⁉」声を掛けられ、驚きながらも彼女は恐る恐る視線をアレクサンドへ向ける。対するアレクサンドはニッコリと微笑んでいた。「確かに、その割り振りの方が良さそうだね。一緒に回ろうか、イザベラ嬢?」「は、はい……」彼の笑顔を前にして、それ以上言葉が続かないのだろう。顔を手で覆いつつ、イザベラはアレクサンドとペアで回ることに快諾した。「文官クラスは私とイザベラ嬢、騎士クラスはステファン達、淑女クラスはレオナルド達にお願いしようか。二時間ほどで見て回って、ここに集合で」アレクサンドの指示で、皆が一斉に動き出す。準備を
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第100話

三学年目の校舎の廊下は、一学年棟のような騒々しさはないものの、落ち着いた熱気に包まれていた。「高位クラスから回ろうか。遠回りにはなるけれど、メンツは大事だから」「はい、殿下」イザベラの言葉にすぐに返事を返し、アレクサンドは歩みを進める。彼らはまず、バザーの準備で活気立つ低位クラスの教室の前を通り過ぎた。そこからは商品の仕分けや値札付けの楽しそうな声が微かに漏れていたが、二人は立ち止まらない。その後ろを、イザベラは必死について行く。身長差もあるせいか、歩行スピードが全く違う。校舎は広いため少し息切れしてしまうが、前を歩く彼を追うため、イザベラは一生懸命足を動かす。角を曲がろうとしたところで、少しだけアレクサンドが足を止めた。「?」不思議に思いながら追いつくと、アレクサンドはまた歩き始める。今度はイザベラに合わせるように、その歩みは僅かに遅い。(そういう優しさが、ズルいんですわ……)頬の赤みを持っていた書類で隠しながら、イザベラは俯きながら歩く。着いた場所は三学年の成績が一番高いクラスだ。舞台を希望していることもあり、窓ガラスには濃い色の天幕が貼られ、中は見えなくなっていた。「失礼します。確認に来ました」臆することもなく、アレクサンドはドアをノックし中に入る。教室の中は華やかな別世界になっていた。前方には金色の縁取りが施されたお手製の舞台が設えられ、中央では数人の役者らしき人物が演技指導を受けている。彼らは地味な衣装で立っていたが、その立ち姿にはプロの貫禄が感じられた。「ああ、私の愛しき光。どうしてあなたは私の手から遠ざかってしまうのですか?」「それは運命だ。私たちは交わってはならない、二つの星……」恋愛劇らしい切ない台詞が響く中、生徒達はその指導や確認を行っていた。その中でも中心にいた一人の人物が、こちらに気付き近
last updateLast Updated : 2026-03-19
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