アレクサンドは静かに手を叩き、周囲の視線を集めた。「わざわざお願いして、流行や舞台に詳しいイザベラ嬢を連れてきた甲斐があったよ。三学年の舞台によいアドバイスが貰えると思っていたけど、予想以上だね」アレクサンドのその発言に、周囲は納得したらしい。婚約者を差し置いてアレクサンドと行動を共にする生意気な女子生徒から一変。アレクサンドに信頼されて連れてこられた人物であるとイメージが変わったのだ。(来る時に、アレクサンド殿下から頼まれたりなんてしていませんのに……)代表者と話しているアレクサンドから、イザベラは目が離せなくなる。青い髪を照明の光に反射させながら、まっすぐ前を向いて話す彼の顔は端正で美しかった。(ああ、本当……)彼の配慮は、言葉にされない分、心に深く突き刺さる。(ズルいわ……)イザベラは、アレクサンドが自分に向けた信頼と優しさが、胸の奥で熱い塊となって広がるのを感じていた。その感情を悟られぬよう、彼女は手に持った書類を強く握りしめ、静かに俯いた。 *** 一通りのチェックが終わり、後は最終確認をするのみになった。再びみんなで会議室に集まる。会議室の長机の上は、先ほどの混沌が嘘のようにきれいに片付けられていた。残っているのは、数枚の最終書類と、全員分の飲みかけの紅茶だけだ。皆、張り詰めていた気が緩んだのか、疲労の色を見せている。ロミーナは深く息を吐き、アレクサンドは額を押さえていた。「……これで、最後ですね。全てのチェック終わりました」 ヤコブの声と共に、緊張感が一気に薄れる。各々がそれぞれ、自由気ままに大きく体を動かした。「うん、これで明日の本番を待つのみだ。ありがとう、お疲れ様」
Last Updated : 2026-03-19 Read more