All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 351 - Chapter 354

354 Chapters

第261話

ドミニカの邸宅には、ヤコブも来ていた。彼はドミニカの私室でコーヒーを飲んでいる。「……やっぱり、苦い」「まだまだ改良が必要ね」渋い顔をしているヤコブを見て、ドミニカは眉を顰めながら何かをメモしていた。そんな彼女をチラッと見ると、ヤコブは再び目を逸らす。ドミニカは役目を終え、もうすぐ帰国する予定だ。学園も、もうとっくに留学を終える通知を出している。二人が会えるのは、後数日しかない。……まあ、ヘルトル家の了承を得たら、結局ヤコブがドミニカの所へ行くことになるのだが。「パーティまではいるんだっけ?」「そうよ。ロミーナのことも見届けて、お父様に報告しないとね」「……申し訳ないな。我が家はレスピナス家よりも家格は下だし、経済力もない。せっかくのパーティなのに、何もあげられないや」少し落ち込んだように呟くヤコブは、ぐいっと残りのコーヒーを飲みほした。空になったカップを机に置くと、いつの間にかドミニカが目の前にいた。「何言ってるのよ。私が貴方に与えるのよ。大人しくプレゼントを待つような、そんな女々しい人間じゃないのは知ってるでしょ?」いつの間にか、ドミニカは手袋を外していた。素肌で、そっとヤコブの頭を抱える。「今度は百年一緒に生きましょう」「人間の寿命はせいぜい120年。この世界の医療技術から考えても、せいぜい70歳がいいところ……」「もう! 情緒がない! それでも乙女ゲーム制作者なの⁉ 寿命なら私が研究して伸ばしてやるわ!」「痛い痛い痛い……」抱きしめたヤコブの頭部をドミニカがきつく締めあげる。頭蓋骨の悲鳴を聞きながら、ヤコブはパタパタと降参するように腕を動かした。  *** 
last updateLast Updated : 2026-04-20
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第262話

この前送られてきたプレゼントがこれだった。美しい白いシルクに白銀の刺繍が入れられたドレス。露出は控えめでシンプルながら、ドレープの美しさと淡い紫色のグラデーションが映えている。胸元や腰にあしらえられたリボンや宝石は、シヴァの瞳と同じ空色だ。このドレスに合わせて、髪は項が見えるようにまとめてもらった。編み込まれた空色のリボンと、長く垂れた白いシフォンが花嫁のベールのように靡いている。互いの色を纏ったお揃いの衣装だ。誰がどう見ても、ここがペアと言うのは分かるだろう。実際、私が入場してから視線を向けていた男性達が、シヴァの登場と同時に一斉に目を逸らしたのだ。シヴァの所に居た女性も同様。まあ、公爵令嬢とアレクサンドに認められた元王子という組み合わせには、誰も入り込もうと思わないだろう。ずっと、こうなりたかった。公の場で、私にはシヴァしかいないし、シヴァは私のものなのだと胸を張って主張したかったのだ。「ご機嫌だな」「だって、ずっとこうしたいって思ってたんだもの」小声で囁き合う私達を、傍にいたお父様が微笑ましそうに眺めている。そんなお父様に笑顔を向けると、邪魔にならないようにか他の貴族との社交に行ってしまった。これで完全に二人だ。「王宮では何をしていたの?」「この後の爵位授与式の打ち合わせやら、アレクサンド殿下の側近になるのにどこ配属になるとか」「なかなか忙しそうね」「まあな」そう呟くと、シヴァはまじまじと私のドレスを眺めた。「……合間にデザイナーを呼んでオーダーメイドしたんだ」私も一歩離れ、くるりと1回転して彼にお披露目する。そんな忙しい合間に、こんな素敵なドレスを準備してくれていたのだ。彼には感謝しか無い。「リリーによく似合ってる」「ありがとう! シヴァも凄く素敵よ」お互いに褒め合うと
last updateLast Updated : 2026-04-20
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第263話

「リリアンナ嬢! こんばんは!」振り返れば、メロディが立っていた。今日の式で正式に魔導士団への入団が認められるのだ。彼女もまだデビュタント前だが呼ばれていたようだ。華やかな桜色のドレスが、ストロベリーブロンドによく似合っている。赤い花模様や黒い手袋はステファンの色だろうか。ステファンから贈られたのだろうと想像すると顔がにやけてしまう。「イザベラ嬢がいないんですけど、どこに? せっかくだからご挨拶したくって」「アレクサンド様の婚約者として一緒の入場なんでしょうね。彼女はもうデビュタントも終わっているし」私の言葉にメロディは納得したように頷いた。「ステファン様は?」「今日は側近としてアレクサンド様の護衛に……お仕事なのでしょうがないですね」少し気にしていたのか、寂しそうに笑う。そんな彼女を励まそうと、私は耳元に口を寄せた。「仕事をするようになれば、ずっと一緒にいられるわね」「はい!」私の言葉にメロディが笑顔を取り戻す。その様子を見て、パートナーのいない彼女と一緒に過ごすことに決めた。メロディは私達のことを、キラキラとした目で見ている。彼女には話したし、昔馴染みであり秘密の関係だった私達が並んで立っているのが興味深いのだろう。三人で一緒に談笑していると、シヴァから腕をつつかれる。何事かと思い顔を上げると、彼の視線の先。壁際の隅の所に二人で立つ、セドリックとロミーナが見えた。明らかに人目を避けている。まあ、裁判でドミニカの家の養子になると伝えられたとはいえ、犯罪者の娘という周囲の目は変わらない。ロミーナとしては気まずいだろう。メロディにも合図をして、私達は彼女達の所へ向かった。このまま俯いて過ごすなんて、そんなのダメだ。見過ごせない。 近づいてみると、二人は何
last updateLast Updated : 2026-04-20
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第264話

ロミーナの表情は晴れやかで、セドリックも嬉しそうに笑みを返す。「そこにいたのネ。二人共」声をかけられて振り返ると、ヤコブとドミニカが立っていた。ライハラ連合国の伝統衣装を二人とも着ている。ドミニカはヤコブを国に連れ帰る気まんまんらしい。しかし、ヤコブはそれで納得しているようで、少し嬉しそうに彼女と腕を組んでいた。「探しちゃったワ。私がいないト、周りがうるさいかもしれないかラ」そう言いながら、ドミニカはぐいぐいとヤコブの腕を引っ張ってロミーナの隣に並ぶ。ヤコブはそのまま大人しくついて行く。前世でも、かかあ天下だったのが目に浮かぶようだ。実際、私達やドミニカの登場でロミーナへの嫌味な視線や陰口は鳴りを潜めていた。そりゃ、友好国となったライハラ連合国の令嬢と、養女になった成績優秀者。文句なんて言おうものなら外交問題だ。そんな様子を見て、私はほっと胸を撫で下ろした。「良かったな」「ええ」シヴァも二人を見て口元が緩んでいる。身分差のことなどを考えると、彼も結構ロミーナに同情と共感を覚えていたのかもしれない。そんな彼女が、なんとかああやって幸せそうにしているのだ。安心したことだろう。 それからメロディと共に談笑しながらケーキや軽食を摘まんでいると、一斉に楽器が鳴らされた。王族入場の合図だ。私達は手を止めて、ホールの上座を見つめた。壇上のカーテンが開けられ、王族達が顔を出す。そこにはアレクサンドと腕を組んだイザベラもいた。お揃いの黄金色のドレスが目に眩しい。きっちりと髪をアップに結い上げたイザベラの蜂蜜色の髪に、よく似合っている。陛下と王妃様が玉座に座り、奥の左右の席にアレクサンドとイザベラ、レオナルドがそれぞれ座った。「……行ってくる」「私も、失礼しますね」
last updateLast Updated : 2026-04-20
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