ドミニカの邸宅には、ヤコブも来ていた。彼はドミニカの私室でコーヒーを飲んでいる。「……やっぱり、苦い」「まだまだ改良が必要ね」渋い顔をしているヤコブを見て、ドミニカは眉を顰めながら何かをメモしていた。そんな彼女をチラッと見ると、ヤコブは再び目を逸らす。ドミニカは役目を終え、もうすぐ帰国する予定だ。学園も、もうとっくに留学を終える通知を出している。二人が会えるのは、後数日しかない。……まあ、ヘルトル家の了承を得たら、結局ヤコブがドミニカの所へ行くことになるのだが。「パーティまではいるんだっけ?」「そうよ。ロミーナのことも見届けて、お父様に報告しないとね」「……申し訳ないな。我が家はレスピナス家よりも家格は下だし、経済力もない。せっかくのパーティなのに、何もあげられないや」少し落ち込んだように呟くヤコブは、ぐいっと残りのコーヒーを飲みほした。空になったカップを机に置くと、いつの間にかドミニカが目の前にいた。「何言ってるのよ。私が貴方に与えるのよ。大人しくプレゼントを待つような、そんな女々しい人間じゃないのは知ってるでしょ?」いつの間にか、ドミニカは手袋を外していた。素肌で、そっとヤコブの頭を抱える。「今度は百年一緒に生きましょう」「人間の寿命はせいぜい120年。この世界の医療技術から考えても、せいぜい70歳がいいところ……」「もう! 情緒がない! それでも乙女ゲーム制作者なの⁉ 寿命なら私が研究して伸ばしてやるわ!」「痛い痛い痛い……」抱きしめたヤコブの頭部をドミニカがきつく締めあげる。頭蓋骨の悲鳴を聞きながら、ヤコブはパタパタと降参するように腕を動かした。 ***
Last Updated : 2026-04-20 Read more